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宿

「このこと、ミリカやアルマにも説明しないとな」


「そうね。仲間内で情報を共有しましょう」


 冒険者ギルドにも言っておいた方がいいのか? でも、こんな話信じてもらえないだろうな。


 ……あ、詳しい日時や場所を聞かされてない。


 ゆとりを持って欲しいと言っておきながら、大事な情報を伝えられてないぞ。


「そういえば近いうちって言ってたけど、いつなのかしらね。あと、場所も言われてなかった気がするけど……」


 アルミラも俺と同じことを思ったのか、難しい顔で疑問を口にしていた。


「焦っても仕方ないし、みんなと合流するか。今なら、まだアルマの宿にいるだろ」




 俺たちはアルマが使っている宿にきたのだが。


「どうなってるんだ、これは?!」


 爆発でも起こったのか、2階にあった部屋の1つが吹き飛んでいた。窓は割れ、その周辺は煤で黒い。


 近いうちって言ってたけど、まさかもう襲撃されたのか?!


 俺は仲間の安否が心配になり、多くいる野次馬の1人に何があったのか聞いてみた。


「何があったんですか?!」


「うおっ、いきなり大きな声出さないでくれよ。俺も今来たばかりでよくわからないんだ」


 焦った俺は野次馬達をかき分けながら、宿の中に入るべく進んだ。


「ミリカ!! アルマ!!」


 そして、宿の中に入った俺は大声で仲間の名前を呼び。


「うるさいですよ、ソウイチ。この宿を使っている人たちの迷惑になりますよ」


 ミリカに注意された。


 見ると、ミリカもアルマも無傷だ。宿の入り口にある受付で何やら初老の男性と話していたようだった。


 拍子抜けしたと同時にほっとした。


 1階は食堂になっており、この宿に宿泊している人たちが集まっているようだ。


 その人たちは大きな声を上げた俺に非難の視線を……? てっきり、大きな声を上げた俺に向けているのかと思ったが違ったようだ。なら、誰に向けているのかと視線を追うとどうにもミリカに向けているようだ。


 注意したミリカが正論のような気がするのだが。


「あのー、お客様。失礼を承知の上で申し上げますが……お前が言うな!!」


 こめかみを引くつかせていた初老の男性の声が1階の食堂に響いた。




「あの爆発はお前がやったのか、ミリカ」


 あの後、2人とこの宿のオーナーの話からミリカが宿の2階の部屋を爆発させた犯人だということがわかった。弁償するということで話は終わったようだが。


「アルマの住むところ破壊するなよ」


「ち、違うんです、これには理由があるんです」


 アルマは他の客室が満員とのことでこの宿には住めなくなった。そのため、宿は他のところを探さなくてはいけなくなったようだ。


「すいません、私が完成した魔道具を放置していたばかりに……」


「アルマは悪くないわよ」


 こんなことをやらかしたのはミリカなのだが、自分も悪いと思っているようだ。先ほどもミリカを庇うようにこの宿のオーナーと話していた。


「それでその理由てのは何なんだ?」


「そ、それは、その……アルマが私の魔法制御を補助する魔道具を作ってくれたので、つい魔法を放ちたくなってしまったんです」


 アルマがミリカの魔法制御を補助する魔道具を作った、まではわかる。つい魔法を放ちたくなった、というのがわからない。


「ええと、魔法を使える人は、ついで魔法を放ちたくなるものなのか?」


「そんなわけないでしょ」


 だろうな。


「今まで3日に1回しか魔法を使えなかったんですよ。それが1日に3発も放てるようになったら、つい放ちたくなるじゃないですか!!」


 ごめん、俺魔法使えないから共感できない。


「ならないと思うわよ、ミリカ」


「……ごめんなさい」


 魔法職の方からも共感されなかったようだ。


「く~……」


 俺たちからは理解されるとでも思っていたのか、とても悔しそうだ。


「別にここでぶっ放すことは無かったんじゃないか? ギルドの練習場なり、場所はあっただろ」


「……湧き上がる欲求を抑えられなかったのです」


 いや、そこは抑えようぜ。


「初級魔法だったので大丈夫だと思っていたのです。そしたら、こんなことに……」


 魔法というものがいかに危険なのかわかったな。


 ミリカは反省しているのかシュンとしてしまった。


「アルマはどうするの? 今日から宿無いのよね?」


「あ、それでしたら、ミリカさんのところに泊まることになりましたので」


「なら、また女子会でもしましょうか。色々と伝えたいことやお願いしたいことがあるから」


「それもそうだな」


 ゆっくり話したいと思っていたところだし、ちょうど良いな。


「ソウイチは参加できないわよ」


 ……ノリで参加できるかなと思ったが、まだ駄目なのか。 

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