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お守り

 アーティファクトにしては値段が低い気もするが、相場がわからないので黙っておこう。


「これで買い物は終わりなのか?」


 ツケで買ったアーティファクトの指輪を眺めているアルミラに問いかけると。


「いいえ、まだ終わりじゃないわ。次はソウイチの分よ」


「俺?」


 はて、何か買っておくものとかあったっけ?


「最近、やたらと強敵と戦っているでしょ。それに対するお守りでも買っておいた方が良いかなと思って。実はそのために来たのよ」


「お守りか……」


 俺はあまりお守りというものを信じてなかったりする。


 神頼みというか神そのものになぜかあまり良い印象を抱いていない。


 なんでだろう。


「……よく考えてみたんだが、強敵というとヴィオラさんか?」


 強敵と聞いて、真っ先に浮かんだのがあの貴族様だった。あの料理は強敵というより、強烈だった気もするが。


「なんで貴族様なのよ。立て続けに遭遇しないはずの人たちと会ってるでしょ」


 アルミラの言いたいことはわかるが、魔王の幹部に強敵という印象はないんだけど。


 剣折ったら消滅したし、ゴーレムは脚蹴りで粉砕できたし、骸骨に至っては記憶すらない。あ、毒盛られたのは、危なかったかもしれないな。


「うーん……」


「何々? お守りを買いたいの?」


 俺たちが話し合ってるとリフェルが興味を持ったようだ。


「ええ、何か効果の高いお守りない?」


「それなら、良いのがあるよー。ほい」


 そして、アルミラに手渡してきたのはピンク色のものだった。


 日本のお守りと同じ形してるな。手に収まるくらいの小さな巾着みたいだ。


「これの効果は何? 毒や麻痺から守る的なやつ?」


「恋愛成就のお守り」


「……いる? ソウイチ」


「いや、いらない」


 恋愛成就なんて、それこそ神に頼みたくない。


「えー、結構人気あるんだけどな。……ならこれ」


 次に渡されたのは。


「……ちなみにこれは?」


「豊胸になるお守り」


 同じくピンク色のものだった。違いは、巾着に描いてある絵。


 ……遊びすぎだろ。


「さっき、アルミラも言ってたような効果のあるお守りは無いのか?」


「冒険者に必要なのは、神頼みじゃなくて自分の腕でしょ?」


 ごもっともなことを言われた。


「うちの店で取り扱ってるのは、もしかしたら効果のあるお守りしかないからねー。毒とかを治すならポーションとかあるし」


 そもそも魔道具店で取り扱ってることが異常な気もするな。




「……買ったのか。お守り」


「もしかしたら効果があるんでしょ」


 それは無いというんだぞ、アルミラ。


 俺たちはリフェルの店を後にし、街の大通りを歩いていた。


「今日はソウイチのお守りでも買おうかなと思ってたんだけど、無かったわね」


「なあ、なんでいきなり俺のお守りを買おうだなんて思ったんだ? 魔王の幹部には遭遇してるけど、そんなに危惧することなのか?」


 最近魔王の幹部に遭遇してるといっても、何事もなく倒せてるから危機感は皆無なんだよな。


「……勘なんだけど、近いうちもっと強い敵が現れる気がするのよ。それこそ、アスト=ウィーザが現れるかもしれない。自慢じゃないけど、私の勘は当たるのよ。村の仲間が全滅した時もこう胸がざわめいていたの」


 考えすぎな気もするが女の勘はよく当たるともいうし、心の片隅にでも留めておくか。


 アルミラと話しながら歩いているとふと脇道が気になった。


「どうしたの?」


「いや、何かこっちに行きたいと思って」


 俺が指さした方向は昼間にもかかわらず少し暗く、人2人がやっと通れるくらいの狭い脇道だった。


「そっちに行っても、何もなかったと思うんだけど……」


 脇道を歩いていくと行き止まりになっていたが、占い師のような格好をした人がいた。テーブルには水晶玉が置いてあり、椅子に座っていた。


 とても胡散臭い。


「迷える子羊よ。ようこそ、おいでくださいました」


 ローブで全身を覆っていたため、性別はわからなかったが声からして若い女性のようだ。


 というか、この声は……。


「えーと、何やってるんですか? シンシアさん」


「私はシンシアという名前ではありません。女神エルドレーネです」


 崇拝してるはずの女神を騙るというのは聖職者としてどうなんだ?


 顔は隠してるが、声でばれているのだが。


「ええと、シンシアさん。女神を騙るのはあまりよろしくないと思うわよ?」


「本当に女神なの!! 良いから、話を聞いていって!!」


 あまり、シンシアさんと話したことはないがこんなに大きな声出す人だったかな。


 アルミラも突然シンシアさんの出した大きな声に驚いているようだ。


 仕方なく話を聞くことになった。


「あ、その前にソウイチだっけ、名前。はい、これ。私特製のお守り、役に立つから身に着けておいてよ?」


「あ、ありがとうございます」


 動揺しながら、つい受け取ってしまった。


「このお守りの効果は?」


「女神パワーが詰まったお守りよ。効果は絶大だから」


「はあ」


 シンシアさんの口調が砕けたものになった。こちらが素なのかな?


 聖職者もストレスが溜まる職業なのかもしれない。

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