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アーティファクト

「アルマ、早く作ってください!! 早く作ってくれるなら、私なんでもしますよ!!」


「お、落ち着いてください、ミリカ。今は道具も無いので作れませんが、宿屋に戻ればすぐに作成しますから」


 そうだぞ。こんなところで騒いだら周りの人の迷惑に……ならないか。店内には、グレースさんと俺たちしかいないしな。


 ミリカは余程その魔道具が欲しかったのか、興奮ぎみに詰め寄りアルマを困らせていた。


 子供みたいにはしゃぐ姿は純粋に可愛いと感じた。


 いつも毒舌ばかりだからかギャップがすごい。


「では、すぐに宿に帰りましょう!! そういうことなので、私たちはこれで失礼しますね!!」


「ああー、手を引っ張らないでくださいー。お先に失礼しますー」


 アルマは手を引かれながら、ミリカに連れられて行ってしまった。


 そんなに欲しいのか、魔法制御を補助する魔道具。


「そういえば、魔法の制御といえばアルミラはすごいんだよな? ミリカに教えたりはしなかったのか?」


「教えたわよ。教えたけれど、あまり理解されなかったの」


 あ、思い出した。アルミラたちの説明は擬音が多すぎて何を言いたいのか全く分からなかったんだった。同じ感性を持つ者同士で通じ合うかもしれないと思っていたが、そうでもない様だな。


「ミリカは確かに全属性の魔法を詠唱破棄で使えるけど、その分の欠点なんでしょうね。その欠点を補うのが女子会でも話してたんだけど、アルマの作る魔道具だったの。理論上なら、その魔道具を付ければ、ミリカは1日に3回まで魔法が使えるようになると言ってたわ」


 何それ、すごい。


 回数制限はあるが、1日に1回しか魔法を使えないよりは全然良いな。


 あれ、でも確か魔力使い果たしたらミリカは気絶するんだよな。どちらにしろ、おんぶ係は続投か?


 疑問に思ったので、聞いてみることにした。


「確かにすごいが、1日に3回使えても魔力は空になるんだよな? 3発目の魔法を使ったらどちらにしろ気絶するんだろ?」


「そのことに関してはアルマがなんとかするって言ってたから、大丈夫でしょ。明日の昇級試験で結果がわかると思うし、楽しみに待ってましょ」


 それもそうか。


 さて、この後どうするか。


「ねえ、ソウイチ。この後、暇?」


「暇だが?」


「なら、ちょっと付き合って欲しいんだけど……」


「俺で良いなら喜んで」


 これは、デートの誘いなのか?




「まあ、こうなるかなとは思ってた」


 今、俺たちはリフェルの魔道具店の前にいた。


「魔道具店に何か用事があったのか?」


「まあ、ちょっとね」


 あれ、アルマに豊胸ポーション作ってもらってたんじゃ?


「ソウイチ、一応言っておくわね。アルマはここに売ってるあるポーションを作れないそうよ」


 正直に白状しちゃったのか。


「いらっしゃいー。誰かと思ったら、早食い対決で倒れたソウイチじゃん。もう回復したの?」


「ご覧の通り、回復してるよ」


 扉を開けるとカウンター席でくつろいでいるリフェルがのほほんとした雰囲気で話しかけてきた。


 アルミラはいつものポーションを買いにカウンターへ。


「ねえ、アルミラ。私から言うのもなんだけど、1人で買いに来ても変じゃないからね? アルマちゃんとも来てたし」


 俺がなぜ来たのか察したのか、リフェルが言ってくれた。というか、アルマとも来てたのか。


「べ、別に、今日はこれだけが目的ってわけじゃなかったのよ。これはついでなの」


 慌てるように否定すると怪しいぞ。


「ふーん、んでお目当てのものは何?」


「本当にこれはついでなんだって、もう。……今日の目的は魔道具よ」


「魔道具? 豊胸用の魔道具なんて作ってないよー」


「違うわよ!! 戦闘用のやつよ!!」


 からかわれてるな、アルミラ。


「冗談だって、それで何の魔道具をご所望?」


「……魔法の威力を上げるやつよ。あるでしょ、1つだけ」


 拗ねたように言うアルミラの姿は普段と違って、妙に愛らしい。


 今日はギャップ萌えの日なのか。


「え、あれ欲しいの? 情報が早いなあ。あの指輪は確かに威力は増すけど、その分魔力の制御が不十分だとすぐ魔力が枯渇するよ? 一歩間違うと魔力欠乏症になるかもしれないし、それよりももっとひどいことになるかもしれないんだよ?」


「知ってるわ。承知の上で買いたいの」


 なぜ、そんなすごいものがこんな店で売られているんだ?


「ソウイチが疑問の顔をするのも頷けるよー。そんなすごい魔道具が何でこんな田舎のちっこい店にあるのかってことでしょ」


 顔に出ていたか。だが、田舎のちっこい店とまでは思ってなかったけどな。


「まあ、この魔道具は早食い対決を行う際にヴィオラ様から頂いたものなんだよ。なんやかんや、ポーション類や胃腸薬は使ったからね。その報酬としてだってさ。豪華だよね」


 貴族からの頂き物を商品にするのはどうなんだ?


「本当に買うの? 私はあまりおすすめしないけど」


「私に必要だから買うの。このままだと足手まといになっちゃうし。手っ取り早く強くなるのに、ちょうど良かったわ」


 そんなことを思っていたのか。


 最近、魔王の幹部が立て続けに現れてるから焦っているのかな。ミリカもアルマの魔道具で強くなるみたいだし。


「わかった。けど、高いよ? 払える?」


「うっ……おいくら?」


「うーん、いつも豊胸ポーション買ってくれるし、150万ルドでどう?」


「……本当に高いわね」


「その分効果はすごいよー。自分で試したからね。気絶したけど……」


 その指輪はミリカ製造機か。


「ツケじゃ駄目?」


「うーん、ツケは嫌いだけどまあいっか。はっきり言ってこの街で需要は無いから、売れないかなと思ってたし」


 その指輪がどうやって作られてるのか知らないが、アルマに作ってもらうのは駄目なのか?

 

 そう思い小さい声で聞いてみると。


「アルマには聞いてみたけど、この店の指輪の方が効果が高いって話なの。あれはアーティファクトらしいのよ」


 アーティファクト!!


 なんか響きがかっこいいな!!

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