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アクセサリー

 何事も無く翌日の朝を迎え、体の調子も回復し無事退院することができた俺は。


「そういえば昇級試験は受けられるんだよな? アルマはもう受けたのか?」


 早食い対決が終わり次第行うことになっていた、昇級試験について聞いてみた。


「私はソウイチと一緒に受けたかったのでまだ受けてませんね。Dランクへの昇級試験は、指定された魔物の討伐らしいですよ?」


「それなら余裕そうだな。さっさと受けに行こうぜ。あ、その前にグレースさんの武器屋に寄って行って良いか? 借金はヴィオラさんが払ってくれたらしいけど、会って話したいし」


 魔物程度なら楽勝だろ。


 魔王の幹部と何度もやりあってるし、そこら辺の魔物はもう恐れるに足らずだ。


「体の調子はどうなの? 完全に回復したみたいだけど、今日のところは昇級試験は受けずに休んだら? 病み上がりなんだし。グレースのお店に行くのは賛成だけど」


「いや、体の調子は完全に戻ったし、さっさと昇級してクエストやりたいんだ」


「そんなに焦っても良いことはありませんよ? ゆっくり確実にやった方が良いと思います」


 いつもはそんなことを言わないはずのミリカが今日は珍しいな。


 まさか。


「俺のことを心配して言ってくれ……」


「ソウイチと同じランクになるのは、先輩冒険者としてまだ許容できないので」


 ひどいことを言われた。


「なんて冗談です。私はそんなこと思ってませんよ。単純にソウイチの体の心配をしてたんです」


「なら、最初からそう言ってくれよ」


「私も今日でなくて明日でも良いと思いますよ。申請すればギルド職員の手配があるとのことですがいつでも受けられますし、ミリカの言う通りゆっくりやっていきましょう」


「うーん、なら今日は休んどくか」


 皆の言う通り、確実に一発で合格したいし今日は休もう。


「その代わり、私も次のランクの昇級試験が受けられるようになったので今日は私に付き合ってください」


 Dランクのクエストもよく受けてたっけ。そんなに苦戦することも無かったから、いまいちEもDもランクの差を感じないんだよな。




「よう、ソウイチ。体はもう治ったのか?」


 俺たちはグレースの武器屋に来たのだが、前回来た時よりもお店の様相が変わっていた。


「はい、もう完全に復活しました。……あの、グレースさん、このお店の変わりようは?」


「ん? ああ、貴族様がどうせなら改装してしまいましょうと言ってくれてな。借金は返してもらえたし、店はこの通り新しくなった。ソウイチが破壊してくれたおかげで、結果的に嬉しいことになったぜ」


 そこには、上機嫌のグレースさんと一新してとても綺麗になった武器屋があった。


 前回来たときは年季を感じる造りだったはずだが、1日でこんなに変わるものなのか。


「んで、今日は何の用事なんだ? 新しい武器でも探しに来たのか?」


「いえ、グレースさんに一言挨拶をと思って……」


「うん? 借金のことか? あれはもう貴族様に払ってもらったから良い。過ぎたことだし、気にすんな」


 前から思っていたけど男前ですね。


「それでも、壊してしまったのは事実ですからね。すいませんでした」


 俺は頭を下げて再度謝罪した。


「あいよ。なら、これで終わりな。それで、何か買っていくか?」


 謝罪だけして帰ろうと思ったのだが、ふと視界にアクセサリー置き場という棚を発見した。


 こんなもの前にあったっけ?


「気付いたか? 新しく武器や防具だけでなくアクセサリー作りにも手を出してみたんだ。並べてあるのは手作りしたやつと、仕入れしたやつだ。どうだい、あんたのお仲間さんに買ってやるってのも良いんじゃないか?」


 にやりと擬音が付きそうな顔でそんなことを薦めてくる。


 その言葉を聞いたのか、女性3人がアクセサリー置き場に向かった。


 まだ、払うなんて一言も言ってないんだが。


「へえ、結構凝った作りなのね」


「おお、この腕輪かっこいいです」


「これは、魔力伝導の良いアクセサリーですね。これを使えば、あの魔道具が……」


 見てみると量は少ないが指輪、腕輪、ネックレスと種類は多い。


 値段は……高っ!! 買えないぞ、こんな高いやつ!!


「……値段が高いわね。さすがに買ってもらうわけにはいかないわ」


「もう少しクエストをこなせば買えそうです。良い目標ができました」


「まあ、元が元だから、高額にせざるを得ないんだ。あたしも慈善事業ってわけにもいかないからな。アクセサリーも取り扱い始めたことを宣伝したかったんだ。悪かったな、ソウイチ」


 さっきの言葉は冗談だったみたいで、ほっとした。


 だが、なんか悔しい。


 そんな悔しがってる俺をよそに。


「これは買いですね。ミリカの欲しい腕輪はこれですか?」


「え? ええ、そうですが……」


 アルマはミリカに確認を取るなり、グレースさんのところにその腕輪と指輪を数個、さらにネックレスを持っていった。


「お、おおう、大丈夫かい? 並べといてなんだが、結構な値段するぞ?」


「はい。大丈夫です!」


 す、すごい量買うな。お金そんなにあったのか。


「アルマはすごいわね。あんなお金私持ってないわ」


「うらやましいです」


 みんなでアルマを羨望の眼差しで見つめていた。


 アクセサリーの精算が終わったのか、グレースさんとアルマはほくほくした顔だ。


「ミリカの昇級試験は明日にしてもらっても良いですか? 良い魔道具が作れそうなんです」


「別に構いませんが、何を作るんですか?」


「前の女子会でも話した通り、ミリカの魔法制御を補助する魔道具です」


「本当ですか!?」


 え、俺その女子会での話知らないんだけど。

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