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はったり

 さて、この状況どうするか。


「ねえ、急に黙り込まないでくれる? すっごい不安になってきたんだけど……」


 黙ってないと、やばいんです。


「ちょ、ちょっと、本当にここでするつもり? いい大人じゃない。もっと、我慢しなさいよ」


「……あ」


「転移!」


 俺が声を発すると同時にメイドさんはどこかへ消えてしまった。


 いい大人になって、そんなことするわけないだろ。


 はったりが通用したのは良かったが、なんか負けた気分だ。


 ……当然、間に合いました。




 翌日になってもまだ体の調子が戻らなかったので、明日まで入院が確定した。


 そして、昨夜のことを今日もお見舞いに来てくれた仲間に相談してみた。俺の醜態についてはさすがに伏せて説明したが。


「ソウイチ……あんた、また何かやらかしたの?」


「またってなんだ。確かに毒は盛られたが、そのメイドさんは魔王の幹部に体を操られていたんだぞ。メイドさん本人が俺に恨みを持ってるわけじゃないんだからな」


 何かあらぬ誤解をする言い方をしてしまったようだ。


 と、アルマは何かに気づいたようで。


「体を操る……多分ですが、その人はタロマさんですね。魔王の幹部の中では力はさほど強くないんですが、毒や精神操作などが得意な方でした」


 相手の情報が筒抜けだな。


「ふーむ。ウルジナスが倒されたところを確認していたからこそ、搦手で勝負してきたということですか。わからなくはないですが……」


 ミリカ……お見舞いで持ってきた果物を食いながら、分析しないでくれ。


 というか、ドラゴンフルーツ食った俺にお見舞いで果物持ってくるとかセンス良いな、こいつら。


「厄介よね。正面から来てくれた方がわかりやすくて、相手しやすいんだけど」


 その発言は脳筋みたいですよ、アルミラさん。


「ですが、体を操るのはそう簡単にはできなかったと思います。それに、長い時間操れないとも言っていたのでメイドさんは正気に戻っている可能性があります。タロマさん本人が出てくるということは無いとは思いますが、警戒はしておいた方がいいですね」


「そうだな。警戒しておくに越したことはないよな」


 昨日の今日で襲撃してくるとは思えないけど。


 さすがに、あんなことされたら女性は嫌悪するはず。……ああ、今にして思うと急に恥ずかしくなってきた。


「今更ですが、ソウイチの体は一体どうなってるんでしょうね? 身体能力もおかしいですが、毒にも耐性があるなんて。参考までに聞いておきたいんですが、その魔王の幹部が作る毒は強力ですよね?」


「そのはずですよ。タロマさんの毒は色々な種類がありましたし、強力なのだとワイバーン程度でしたら即死させられる毒だったと記憶してます」


「ワイバーン以上の耐性を持ってるなんて、ますます人間離れしてますね」


 心配してくれてるのか、貶してるのかどっちなんだ?


「まあ、でも結果的に助かったわけだし良かったわよ。武器探しだってまだ終わってないんだから、先に死なれちゃその約束守れないし」


 まだ、その約束守ろうとしてるのか。

 

 責任感が強いというか、律儀というか。


「失礼しますわ」


 その時、ドアの外側からそんな声がし。


「!!」


 俺は息を飲んだ。


 ドアを開けて医療室に入ってきたのは、貴族であるヴィオラさんと昨夜も会ったメイドさんだった。


 さっき、アルマは正気に戻ってると言っていたが、今はどっちだ?


 突然の登場にみんなも俺と同じ気持ちだったのか、一瞬硬直したがすぐに貴族に対する礼をした。


 俺もみんなのを見様見真似でしようとすると。


「ソウイチ様ですね。先日は申し訳ありませんでした。私の料理を食べた瞬間に倒れてしまったようで……。あと、この街には貴族としてではなく、シェフとして来たので貴族に対する礼は不要ですよ」


 遮るようにヴィオラさんに謝罪された。


「いや、ヴィオラ様のせいでは無いですよ。これは……自分の体質のせいですので」


 メイドさんをちらりと見るが特に反応はしていない様だ。


 みんなも俺が何をしたいのか気付いたようで、特に何も言わなかった。


「それでもです。シェフを名乗っていたのにこれでは私の誇りが許しません。聞けば借金をしているとか。おせっかいかと思いましたが、こちらで払わせていただきました」


「いえいえ、決しておせっかいなど……ありがたき幸せです」


 まあ、あのままいけば俺の優勝は決まっていたも同然だからな。

 

「あ、すいません。トイレ行ってきても良いですか?」


「すいません、我慢されていたとは知らず。私たちもこれで失礼しますね。貴族がいては休めないでしょうし。ソウイチ様、今度料理を召し上がる際は注意しますね」


 今度があるなら、普通に食べられる料理が良いです。




 ヴィオラさんがメイドさんを伴って退出したのを見届け、俺は感じていたことを仲間に話した。


「どう思う? 俺は、今のメイドさんだが操られていないと感じたけど……」


「ソウイチ。トイレ行かなくて良いの?」


「あれは鎌をかけてみただけで、実際に行かなくても問題ない」


 俺の言葉にみんなが首を傾げていた。


「トイレの件については触れないでくれ。……メイドの件、どう思う?」


「ソウイチの話ですが、そうですね。あのタロマさんの嫌な感じはしませんでしたし……正気に戻っているとみて良いと思いますよ」


 アルマのお墨付きを貰えたことだし、今日の夜はゆっくり寝られそうだ。

2017/8/3 最後のアルマの会話文:ソウイチ”さん”→ソウイチに修正しました。

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