表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/179

冒険者ギルド

 翌日、俺は冒険者ギルド前に来ていた。場所は衛兵の人に聞いた。


「ここが、冒険者ギルド!!」


 よくある異世界ものには欠かせない場所。魔物(やっぱりこの世界にもいた)の狩り、薬草の採取といったクエストをこなし、生計を立てる職業である冒険者が集まるところだ。


 やはり、1人の男としては胸踊るシチュエーションだ。ここで、とてつもない活躍をして英雄になって……といった妄想が膨らむ。


 初めが肝心だ。気合入れて行くか!!


 気合を入れた瞬間、突然冒険者ギルドの扉が勢いよく開き、人が飛んできた。


「うわっ!!」


 何とか避けることに成功し、飛んできた人を見るとがっしりとした筋肉に覆われた男性みたいだ。転がってはいるが、防具から覗く見事な筋肉がその人の強さを象徴しているかのようだ。


「一体何が?」


 疑問に思い、扉の中を覗くと1人の女の子がこちらを睨みつけていた。


 その女の子は十代半ばといった感じの幼さの残る顔立ちをしていた。髪は綺麗な赤色をポニーテールにしており、青い瞳でとても可愛らしいと思う。だが、彼女の放つ怒気のせいかきつい印象を受けた。


「……ふん。これに懲りたらもう絡んでこないで」


 どうやら、彼女はこの冒険者ギルドの外まで吹き飛ばされてきた男に絡まれていたらしい。


 こちらにはもう興味はないといった感じで目をそらし、正面にあったボードに向き直り真剣に考えだした。


 他の人は音が響いた瞬間は彼女のことを注目していたみたいだったが、いつものことのように自分のやることに戻っていった。


 さすが異世界。人が吹き飛ぶのは日常茶飯事みたいだな。


 気合を入れなおして、俺は冒険者ギルドの中に入っていくのだった。




 冒険者ギルドの中は、予想よりも広かった。50人くらいなら楽に入りそうだ。さっきの彼女や他の人は大きなボードを真剣に見ている。何か張り紙みたいなものがある。きっと、あれがクエストなのだろう。


 外からでは気づけなかったが、結構ボードと扉には距離があった。

 

 あの男はこんな距離を吹っ飛ばされたのか。


 俺もおっさんを吹き飛ばしたし、やっぱり地球よりも物理法則が違うんだな。魔法もあるって、衛兵の人が言ってたし。


 俺は受付らしきもののところに行き、冒険者の登録をするべく歩みを進めた。


「すいませーん。冒険者登録をしたいんですがー……」


「はーい」


 受付らしきところには誰もいなかったので、呼んでみたら奥から綺麗な人が出てきた。


 茶色の髪を三つ編みにし、眼鏡をかけたほんわかした感じの女の子だ。


「お待たせしました、冒険者登録ですね。では、身分証明書の提示をお願いします」


 受付の女の子の言葉を聞き、昨日発行された証明書を出す。


「はい、確認しました。ソウイチ様ですね。年齢は24歳。得意な項目は何になさいますか?」


「得意な項目?」


「はい、剣術が得意とか魔法が扱えるといった漠然的なものでも良いですよ?」


 ……どうしよう。剣なんて生まれてから一度も握ったことが無いし、魔法なんてどう扱うのかさえわからない。


「……た、体力には自信があります」


 何も思い浮かばなかったので、当たり障りのないことを言ってしまった。


 嘘ではない、つい先日森の中を彷徨っていても疲れなかったのだから。


「体力に自信がある、っと。冒険者ギルドについての説明は必要ですか?」


「はい。お願いします。」


 要約すると、


・冒険者は魔物を狩ったり、薬草の採取など色々なことを行う。なお、そのときに負った怪我についてギルドは関与しない……これは基本だな。


・ランクがあり、昇級するとより高難易度の依頼が受けられる。魔物にもランク付けがされている……予想通り。


・緊急性の高い任務は強制的に招集される。ランクの高い魔物が発生し、討伐が必要なときが該当する。……これも、まあ、予想通り。


・拠点を変える際には特別な手続き及びギルドマスターの推薦が必要。遠征などで遠くへ行く時などは除く。……登録はしても、どこかへ行ってしまったらその街の利益にはならないし、信頼にもつながるから推薦は必要とのこと。


 ここまでは予想できた。ほぼ、テンプレ通りだからな。ただ……。


・毎月主催の行事には、強制参加。


 ……毎月主催の行事って、何だ?


「毎月主催の行事につきましてはギルドマスターが独断と偏見で決めてますので、どういうものをやるかはその時になってみないとわからないです」


 へー、そんなこともしているのか。


「ちなみに、過去にはどんなものがあったんですか?」


「……料理対決といったこともありました」


「それは、楽しそうですね」


 なんか、受付の人の顔が一瞬暗くなったような気がしたが、気のせいか。


「こほん……では、冒険者登録に必要な手数料をいただきます。1200ルドになります」


「2000ルドでお願いします」


「はい、800ルドのお返しになります」


 今日の朝、衛兵の人から借りていて良かった。


 1ルドは1円のようで、日本の時と同じ感覚だ。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。ソウイチ様のご活躍期待しております!」


 冒険者カードが発行され、いよいよ異世界という感じが出てきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ