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アルマの初クエスト

 非常に不安なギルドの恒例行事は1週間後に開催予定らしい。


 いくら、変なことが書いてあったとしてもギルドの催しものだ。そんな大変なことにはならないだろう。


 気持ちを切り替えた俺は、アルマのランクを上げるためクエストを受けようとしていたことを思い出した。


「そうだ、アルマのランク上げちまおうぜ。街中のクエストならすぐに終わるだろう」


 そう、まだアルマのランクは登録したてのFランク。ミリカは魔法を使えないが、Fランクのクエストはせいぜいが街中の仕事だ。危険がない分、報酬は安いがパーティー全員で協力してできる。


「そうね。時間もあるし」


「アルマにとっては、初クエストですね」


「はい! 頑張ります!」


 みんなもやる気なので早速受けようとクエストが貼られているボードに向かった。




「これなんてどう? ”木材の運搬”。ゴーレムに運ばせれば、すぐに終わるんじゃない?」


 アルミラが見つけたクエストは運搬する木材の量が多いため、力自慢の人推奨と書かれていた。


 なるほど。ゴーレムを使えば木材を持ち上げるなんてわけないよな。


「その、さっき召喚したゴーレムにかなりの魔力を使ってしまいまして、ゴーレムは召喚できますが数はそんなに多く出せないんです。良くてあと2体ほどが限界です」


 前に俺に粉々にされたのが、相当悔しかったみたいだな。それで硬度を上げるために大量の魔力をつぎ込んだというわけか。


「確かに先ほどのゴーレムからは凄まじい魔力を感じました。どのくらいの硬度まで魔力を練ったんですか?」


「以前に魔王さんのお城で実験したときは、ウルジナスさんのボーン・フォニー・ドラゴンに攻撃されても傷一つ付かないくらいの硬度はありました」


 簡単に粉砕できたから、基準がいまいちわからないな。ドラゴンの方は酔っぱらってたから、記憶もないし。


「それはすごいですね。魔王の幹部が作った魔物の攻撃を受けても傷一つ付かないなんて」


 ミリカは感心したようにアルマを称賛していた。


 話を聞く限り、相当の硬度だってのはわかった。


「ただ、硬度を優先しましたので機動性が皆無で動けないのが欠点ですね。盾として使うしか使い道がないくらいです」


 動けないゴーレムっていうのも、どうなんだ?


「ソウイチに全部運んでもらったら? きっと、すぐ終わるわよ? 筋力お化けだから」


 筋力お化けはやめれ。


「さすがに、私のランク上げのクエストですし。自分の力で全部とは言いませんができる仕事がしたいです」


 アルマは苦笑しながら、アルミラに答えていた。


 このパーティーの唯一の良心だな。心がほっこりした。


 と横で聞いていたら俺は一枚のクエストを見つけた。


「なあ、これとかどうだ? ”魔道具店の雑用(急募) 要:薬など作成経験ある方”。アルマなら経験あるだろうし、やりやすいんじゃないか?」




 やっぱり、昼間はそんなに人がいない魔道具店。おかげで、俺たちはすんなりと店の中に入れた。


「はい、いらっしゃいー。って、ソウイチじゃん。今度は3人も女連れてきた!? 真昼間からデート? 妬けるねえ」


 ……なんか、ついさっきも同じようなこと言われた気がするな。


 魔道具店の店主リフェルが肘でぐりぐりしてくる。


「あの! 今回はギルドのクエストで来ました! アルマです!」


 俺をからかってくるリフェルにアルマは気合十分といった具合に、ギルドのクエストで来たことを伝えた。


「おうふっ。元気いっぱいだねえ。……アルマちゃんか、この前来てたよね? おっぱい大きかったから覚えてるよー」


 ダークエルフだったからじゃないのか。このセクハラ店主。


 リフェルの言葉に少しばつが悪そうに顔を逸らしたアルマ。


 実はアルマの胸はそんなに大きくない、ということを俺たちは知ってるだけに恥ずかしがってるみたいだな。アルミラもミリカも生暖かい目でアルマを見てるし。


 それでも、アルミラとミリカより大きいのは確実だが……。あれ? 突然2人から刺すような視線が。


「ごめんごめん。じゃ、早速働いてもらおうかな。薬とか作ったことあるんだよね?」


「はい、これでも調合経験は豊富です」


「それは良かった。来週までに作らないといけない薬とか、多くギルドから発注があってさ。人手が足りなかったんだー」


 この店はリフェルしか働いていない。豊胸ポーションを作る前は適度にお客がいたくらいで、こんなに忙しくはなかったとぼやいていた。


 お客が入ることは良いことだと思うが……。 


 そんな矢先にギルドからの大量発注。猫の手も借りたくなるほどだそうだ。


 ギルドから大量発注された薬は、胃腸薬なんだろうな。……本当に大丈夫なんだよな? 今回のギルド行事。

 

 薬の調合などしたことがない俺たちは、その薬を入れる容器を運ぶのを手伝うことになった。


「にしても、突然だよねー。王都からこっちに来るなんてさー」


 作業をしている最中、そんなことをリフェルが話しだした。


「誰が来るんですか?」


 疑問に思っていたところにアルマが聞いてくれた。


「あれ? ギルドに行ったなら、来週の催しものも見たんだよね?」


「はい。ギルドの毎月恒例行事で早食い対決ですよね」


「そうそうそれ。その料理を作る人が来るんだよー。ちなみに、このパーティーは誰が参加するの?」


「俺ですけど……」


 返事をした俺を見て、リフェルは。


「そう。短い付き合いだったね」


 と、不穏なセリフを吐き出した。悲しそうな顔で。


 ちょ、ちょっと、待ってくれ。その料理人、何かあるのか?!


 本当に不安になってきたんですけど……。

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