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グリーブ

「また来たのか。筋力お化け」


 筋力お化けとは俺のことなのか?


 俺たち4人は緊急クエストの翌日、前回も来たことのある武器屋を訪れていた。


「今度は3人も女連れて来やがって。ここはデート場所じゃないぞ」


「デートじゃないです。パーティーメンバーの武器選びに来たんです」


「ソウイチとはパーティーメンバーですが、デートするほどかと言われると……」


「すいません。大勢で来てしまって。仲間との武器選びに興味があったものですから」


 アルミラには普通に否定され、ミリカには曖昧に答えられ、アルマには遠回しに否定された。

 

 期待はしてなかったけど否定するなら、もっと、こうツンデレ的な返答はないものだろうか。


 べ、別にソウイチとはデートじゃなくって、ただ武器を選びに来ただけなんだからねっ!


 顔を赤らめながら言ってくれたら、ベストなんだけどな。


 みんなの顔をちらっと見てみるとアルミラとミリカは真顔、アルマは申し訳ないような顔……縁遠い話だな。


「ま、別にいいけどよ。今度は金あるんだろうな?」


「大丈夫です。予算は20万ルド程度あります」


 緊急クエストの報酬がけっこう良かったので、お金はばっちりだ。


「ほー、好きに見て行ってくれ」


 店主はそういうなり、本を読み始めてしまった。


 そういえば、前回も読んでたな。本好きなのか。


 接客してる最中に本を読んでも良いのかという疑問はさておいて、俺はその本のタイトルが気になったので確認してみると。


「……深窓の令嬢と平民の結ばれぬ恋」


 まさかの恋愛物だった。


 ……言っちゃ悪いが似合わねー。戦記物の方が似合う気がする。


「今、似合わねーって思っただろ」


「いえ、そんなことはないですよ……」


「なら、その微妙な顔はなんなんだ?」


「元々、こんな顔ですよ」


「……」


「さーって、武器選びに行ってきますね」


 じーっと見られてるのを無視し、武器が並んでる棚の方に移動した。


 




「ソウイチって、剣とか扱えなかったわよね。ナックルとかの方が良い?」


「そっちの方が扱いやすそうだな」


 逃げるようにしてきた俺が棚を眺めていたら、アルミラからそう提案された。 


 下手に刃物類を持つと、危なそうだしな。


「ソウイチはナックルよりも、脚に装備するグリーブの方がいいんじゃないですか? 手は空いていた方が雑用……色々できて便利だと思いますよ」


 今、雑用って言ったか? 


「なあ、グリーブって防具じゃなかったか?」


「ソウイチは剣とか武器を扱えないらしいですね。だったら、その凄まじい身体能力を活かした方が効率が良いですよ。脚で蹴るために防具付けとけばいいと思います」


 適当に言われてるような気がする。


「私もミリカさんの言ってることは正しいと思います。私のゴーレムを蹴りだけで粉砕してましたし、身体能力を活かすのは有りだと思います」


「この際だし、他にも防具を買おうかな。グリーブだけだと見た目が悪いし」

 

 俺は薦められるままに、脚部分を覆うグリーブと腕部分を覆う籠手を買った。


「武器買いに来たわけじゃなかったのか?」


 と店主に聞かれたので。


「これが俺の武器です」


「それは防具だろ?」


 格好つけてみたが、伝わらなかったようだ。 


「あ、店主さん。これの性能テストをしたいんですけど、どこか広いところありますか?」


「なら、裏に行きな。テスト用の的とか人形を置いてあるから適当に使っていい。……おっと悪い、お前は的にされる方だったか。防具の性能テストだもんな」


 さっきのこと、根に持ってるみたいだな。


 


 武器屋の裏は予想よりも広く、的や甲冑を着た人形が置かれていた。


「ハイグレード・サモン・ゴーレム!」


 今回はそれらは使わず、アルマのゴーレムを実験体として使うことになった。召喚されたゴーレムは、前回も召喚されたゴーレムと同じ様相をしていた。


「言ってはなんですけど、私のゴーレムの方があそこにある防具より硬度は上です」


 と、本人が胸を張って言ってきたからというのもある。


「じゃ、早速蹴ってみるか」


 俺は買ってきたグリーブを装備し、標的に狙いを定めた。


「前回は怪我を負わせないように手加減してましたから、硬度は比較にならないほどですよ。今回は全力ですので、逆に怪我を負わないように気を付けてくださいね。グリーブを装備してますが、衝撃はすごいと思いますから」


 ……やる前に注意してくれるのはありがたいが、蹴る気無くな。


「大丈夫よ、脚1本程度で死にはしないわ」


「怪我しないように頑張ってください。ソウイチ」


「今回は大丈夫だと思いますが、一応防護結界張っときますね。アブソリュート・プリヴェント!」


 アルマの魔法により、透明な膜のようなものが3人の体全体を覆った。

 

 頭部に直撃して、気絶したのがトラウマになってるんだろうか。後ろにいるんだから、そっちには飛ばないような気がするが。


 よし、やるか!


「いくぞ!」


 そして、俺は召喚されたゴーレムに突進し、本気の飛び蹴りを食らわせた結果。


 ――粉々に砕けた。


 砕けた破片が飛び散ったことで周辺への被害はすごいことになった。武器屋の窓を割り、置いてあった的を粉砕し、甲冑には破片が突き刺さった。凄惨な光景になってしまった。


 見ていた3人は口を開け、唖然としていた。


 そんな3人に向け、一番ショックなことを俺は呟いた。


「買ったグリーブ、変形してぼろぼろになったんだが……」

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