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Aランクの魔物

「とりあえず、俺のことは置いておいて冒険者ギルドに報告しとくか」


「そ、そうね。後で実験するとして、この状況は報告しといた方が良いわね」


 俺の身体能力のことは気になるが、報告は先に済ませておいた方がいいだろう。


 あと、人払いの魔道具も回収しておこう。


「人払いの魔道具ってどこにあるんだ?」


「あ、それでしたら、4か所に配置してあります。回収してきますね」


「良ければ、手伝うぞ?」


「大丈夫です。小さいものですし、そんな距離も開いてないのですぐに行ってきますね」


 そう言うなり、アルマは森の中に消えて行ってしまった。


「それにしても、魔王の幹部にこうも遭遇するものですかね。アルマは、まあ、薬草の採取という目的があったのでわかるのですが、このウルジナスは何のためにきたんでしょうか」


「ボーン・フォニー・ドラゴンを連れてきたことを考えると、誰かと戦うためにきたのかしら」


 戦う前にこんなになるなんてな。敵だが、お気の毒に……。


「……なあ、考えたくないんだけど、アルマが魔王の幹部をやめることを察知して、裏切り者には死刑を的なものだったりするのかな」


 だいたい、悪役の思想ってのはそういうものだしな。


 ……あれ、アルマを殺すために来て、酔っていたとはいえ俺に討伐されたのなら、結果的にアルマを救ったということなのか。どこぞの主人公みたいにこれでフラグが立ったりしないだろうか。


「魔王の幹部同士のことはわからないけれど、その可能性もあるわね」


「何にせよ、もうウルジナスは死んでいるので真実は闇に葬られたということですね」


 そうなんだよな。真相がわからないままだし……くそ、酔っていても記憶を忘れなければ良かったのに、俺の馬鹿。


 その後、あまり時間もかからずアルマが何も持たず帰ってきた。


「あれ? 人払いの魔道具はどうしたんだ?」


「ああ、あれは折り畳み式なので、ローブの中に入れてますよ」


 なるほど、持ち運びやすいようにコンパクトなのか。

 

 と、じろじろとアルマのローブを眺めていたら。


「……ソウイチ」


 アルミラに睨まれてしまった。


 べ、別にいやらしい視線で眺めてたわけじゃないぞ。純粋な好奇心でどこにしまってるのか気になってただけだ。


「もしかして、アルマはこの周辺にはよく来ていたのですか?」


「そんなに頻繁には来てませんよ? 4か月毎に来ていたくらいです」


「……4か月毎に街の近くに出没する魔王の幹部。これが、普通の魔王の幹部なら大騒ぎだったんでしょうね」


 その本人のアルマは、俺の視線には気が付いてなかったようでミリカと話し合いをしていた。


「まったく、ソウイチは……。昨日は勢いで納得しちゃったけど、よく考えたらあんな行動取らなくても街の人には違う形で印象付けできたと思うのよね。やっぱり、獣なのかしら」


 獣ではなく、俺は紳士だ。 




「西の森の情報ですね」


 先ほどのことを冒険者ギルドに報告しに行ったら、受付にはほんわかさんがいた。


 西の森のある場所に大量の骨が散乱しており、その骨はボーン・フォニー・ドラゴンの残骸だと思われると報告したら。


「しょ、少々お待ちください」


 焦ったように奥に引っ込んでいってしまった。


「ボーン・フォニー・ドラゴンって、そんなに危険なのか?」


「普通に発生する場合でもAランクの魔物ですよ? ましてや、今回は魔王の幹部が作ったんです。強さは本物のドラゴン以上のはず。まだ、魔王の幹部のことは説明してませんが……。それでも、普通だったらあの慌てようは正常ですよ」


 ミリカにそう説明されたのだが、いまいち基準がわからない。


「そのAランクの魔物はどのくらい危険なんだ?」


「……はぁ。良いですか? Aランクの魔物なんてそうそういませんが、小さい街程度でしたら簡単に破壊尽くせるほどの魔物です」


「なら、あの魔物がこの街を襲ったらやばかったのか?」


 もうミリカがこちらを馬鹿にしてくる態度は気にしない。


「この街にいる冒険者は現在、Aランクが最高です。普通のボーン・フォニー・ドラゴンが襲ってきた場合、討伐はできると思いますが被害も少なくないと思います。ですが、今回は普通ではありませんでしたからね。……どうなったかはわかりません」


 ミリカはアルマをちらりと見て、そう答えた。


 確かに、アルマも魔王の幹部だもんな。お互いに戦った場合、どうなったんだろうな。


「そうよね、普通なら一大事だったのよね。落ち着いているのが不思議だわ。討伐された後だからかしら」


「私がいるから安心できているんじゃないですか? この天才魔術師のミリカ様が!」


「いや、そこは俺たち……仲間がいるからにしてくれ」


「仲間がいるのといないのとでは、全然感じるものが違いますよね」


 ミリカが1人で騒いでいたので、訂正させてもらった。


 そして、アルマの言葉にはとても説得力を感じた。


 魔王の幹部といっても、色々あったんだろうな。


 と、俺たちが話あっているといつの間にかほんわかさんが戻ってきていたようだ。


「みなさんには、詳しくお話を伺いたいとギルドマスターが言ってましたので、2階への移動をお願い致します。案内は私が務めますので、付いてきてください」


 ギルドマスター直々にお話を聞きたいとは。


 そんなに大事だったんだなと今更ながらに実感した。

2017/7/21 文を修正しました。

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