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緊急クエスト

「えーっと……なんで俺はこんなところにいるんだろう?」


 気が付いたら、目の前には木、木、木……。いつの間にか、森の中で寝てしまっていたようだ。


 多分、西の森なのだろうがなぜここにいるのかが思い出せない。


 昨日、ゴンドさんと男子会をしたところまでは覚えている。酒を飲みつつ、色々な話をして別れたところまでは覚えてるんだが、その後がわからない。


 辺りを見回すと……。


「うお、骨が散乱してる……」


 ホラーである。俺が寝ていた周りには、大量の骨が散乱していた。


 よく見てみると形状は様々で小さいものから大きいものまであり、大きいものに至っては2mを超えるほどだ。そのため、何の骨なのか分からず絶賛困惑中である。


 そもそも、なんで骨がこんなところにあるんだ。


 と、疑問に思っていたら傷がついた木を発見した。近寄って眺めてみると、昨日俺がつけた傷跡のようだ。


 ここは西の森であり、採取クエストの際に赴いた場所近くであることがわかった。


 もしかして、酒に酔って街を出てしまったのか? しかも、こんな遠くまで……? ありえないだろ。


 自分の酒癖は悪い方だとは思っていたが、こんなだとは思っていなかった。


「とりあえず、帰ろう」


 街に戻ろうと歩を進めたところであるものを発見した。


 それは、骨が散乱していた場所から少し離れたところにあった魔術師が着ているようなローブ。


 誰かの落とし物かと地面から持ち上げた瞬間、ローブからぱらぱらと白い固形物と粉状のものが舞い落ちた。


 よく見てみると、骨のように見え……。


「ひえっ!!」


 つい、手を放してしまった。


 頭蓋骨が無かったので、特定はできないがおそらく人間の骨だろうと推測できた。


 昨日はこんなもの無かったのに、一晩で一体何があったのだろうか。


 ん? 何だこれ?


 手を放したと同時に落ちたローブの中から、腕輪が出てきたことに気がついた。


 手に取って眺めていると、裏の部分に何かが彫られていた。


 ウルジナス? まさか、このローブを着ていたであろう魔術師の名前か?


 金色をベースに色とりどりの宝石が散りばめられている高価そうな腕輪だが、それに相反するかのような不気味な雰囲気を漂わせている。こんな腕輪をしていたなら、この人は名のある魔術師だったに違いない。


 俺は無関係だし、放置しても罰は当たらないだろう。


 変な事件に巻き込まれてはたまらないと腕輪を地面に置き、足早に街を目指した。


 未練は残さず、きちんと成仏してくれと祈りながら……。




 街に着いたのだが、どうも様子がおかしい。


 門にいた衛兵さんもどこか緊張した面持ちで、俺のことを無事だったのかと心配してきたほどだ。


 一体、何があったんだ?


 情報を収集するために冒険者ギルドに向かっていた俺だが、街のあちこちから話し合っている声が聞こえてきた。


「昨日の夜、西の森からすごい音が聞こえたよな」


「ああ、しかも夜なのに奥の方が光ってたっていう話だ」


 昨日の夜に西の森で何かがあったらしい。まさか、あの骨と関係あることなのか?


 冒険者ギルドに到着した俺だが、あまりの光景に驚いていた。この街の冒険者全員が集まったのではと思うほど、大勢の人でごった返していた。


「あれ? ソウイチじゃん」


 と声をかけてきたのはサラだった。

 

 ちょうど良いのでこの騒ぎが何なのか聞いてみることにした。


「なあ、この騒ぎはどうしたんだ?」


「ソウイチは知らないの? 昨日の夜、西の森が凄かったんだから」


 お酒に酔っていて知りませんでしたとは言いづらいな。


「寝が深くて起きなかったみたいだ」


「ソウイチは寝が強いんだねえ。まあ、ギルドの方も何が起きたのかは把握してないっぽいから、私たちが召集されたみたいだし。現状は不明ってとこだね」


 一体何があったんだ、本当に。


「ギルドは今日から西の森の探索を緊急クエストとして発行したみたいだよ。それで、詳細を聞こうと集まったんだけど……」


 なるほど、この人数では受付に聞きに行けない状態だったと。


 それにしても緊急クエストとは、初めてだな。


「聞きたいことがあるんだが、緊急クエストって報酬は出るんだよな?」


「そっか、ソウイチはギルドに登録したばかりだもんね。といっても、今回のことは特別だから私たちも分からないんだ」


 報酬が出るんだったら、ぜひ受けたいな。俺の体質なら、魔物に邪魔されず探索できそうだし。


 すると、ギルドの受付があるカウンターの上に男の人が立ってるのが見えた。


「おまえら、ちったあ静かにしろや! ギルドマスターの俺からのありがたいお言葉を聞かせてやる!」


 ギルド内はざわついていたにも関わらず、外までよく通る声だった。


「風の魔法だね。詳しくはわからないけど、声を遠くまで届かせることができるんだって」


 とサラが解説してくれた。


「昨日の夜にあった西の森での件だが、何か情報を掴めたやつにはギルドから報酬を出す。緊急クエストだ! 分かったら、こんなところにたむろしてねえで、とっとと出て行け! 有象無象ども!」


 こ、言葉遣いが悪いな。ここのギルドマスター。

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