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アルマとポーション

 いつも通りミリカを教会まで送る途中、アルマーティさんがある提案をしてきた。


「私の名前長くて呼びづらいと思うんです。ですので、アルマと呼び捨てで呼んでください。昔、里ではそう呼ばれてましたので……昔といっても、私が幼少期のときですが」


 意を決したかのように言う顔は若干赤く、声が上擦ってしまっている。


 確かに、ずっとさん付けは他人行儀みたいだなと思った俺たちは顔を見合わせ。


「それもそうよね。一緒にパーティを組むんだもの」


「そうですね。魔王の幹部だったとはいえ、同じ女性同士仲良くしていきましょう」


「さん付けは他人行儀でしたね」


「「「よろしく、アルマ!」」」


 3人同時にアルマの名前を呼んだ。


 愛称で呼び合うことでパーティーの結束が深まったような気がした。

 

「ありがとうございます。仲間に愛称で呼んでもらうのが夢だったんです!」


 え? 夢?


「里で呼ばれていたんじゃ?」


「里では親に呼ばれていただけなんです。友達と呼べる人はいませんでしたし……」


 重い。友達がいないなんて……。


 アルマの笑顔はとても嬉しそうだった。


「何か事情がありそうね。今夜一緒にお話ししない? 色々と聞きたいこともあるし」


「良いですね。女子会しましょう! パーティーの親交を深め合いましょう!」


 アルミラとミリカはアルマを誘い、今夜女子会を開くそう……。


「俺、男なんだけど……」


「え、何? もしかして、ソウイチも一緒に参加しようとしてるの?」


 参加しちゃダメなの? 俺も同じパーティーメンバーなんだけど……。


「夜に女子同士の交流の場に参加するとか、考えられないですよ?」


 あれ、パーティーの結束はどこへ? 俺の気のせいだったの?


「あ、あの、ソウイチさん。今度一緒にお茶しましょう。あと、私に敬語は必要ないですよ。自然体でお願いします」


 アルマの心遣いが優しい。


「……なら、俺のこともソウイチって呼び捨てで敬語も必要ないから」


「わかりました、ソウイチ。ただ、言葉使いはこのままでお願いします。この方が落ち着くので」


 そんな話をしているうちに教会までたどり着いてしまった。


 ここで3人と別れるのかと思ったが、アルミラとミリカは女子会の場所を先に確保すると言っていた。まだ夜まで時間があるので、女子会に参加しない俺はそれまで街を案内することになった。


 これって、デートなのでは……。


 きっと、パーティーメンバーなのに女子会に参加できない俺のことを配慮してくれたのだろう。


 ミリカはアルミラにおんぶされながら、2人とも教会の中に入っていってしまった。夕方になったら、教会に来てくれと言い残して。


「えーっと、どこか行きたいところあるか?」


「でしたら、魔道具店に行ってみたいです」




 リフェルの魔道具店はちょうど冒険者たちが帰ってきたからなのか、大変混雑していた。


「すごい人気なんですね。どんなものが陳列してるんでしょう。とても興味がわいてきますね」


 興奮してるアルマには申し訳ないが、すごい人気なのは豊胸ポーションだと思う。


 ほとんどが女性……ある部分が残念な女性ばかりだ。この街の大半の女性が集まってるのではないかと錯覚してしまうほどにお店から溢れてる人もいる。


 繁盛してるな。リフェルの言ってたことは間違ってなかったのか。


 やっと、店内に入ることができた。ダークエルフが珍しいからなのか、他の冒険者の人達がこちらをちらちらと見てくる。……いや、それもあるが幻影で盛った胸を見てる気がするな。


「豊胸ポーション! 何ですか! この画期的なポーションは!」


 アルマもそのポーションに興奮して……あれ?


「アルマもそのポーション作れるんじゃなかったか?」


 なぜ、自分でも作れるポーションに興奮しているんだ?


 疑問に思った俺に対して。


「え? こんな画期的なポーションは作れませんよ?」


 アルマはそう否定してきた。


「でも、森の中で聞いたときは作成して服用してるって……」


「何のことですか? 私が服用してるのはお通じが良くなるポーションですよ? ……そのお顔から察するに、あの推理でお見通しなのかと思ってましたが違ったみたいですね」


 ……やばい、アルミラにこのことがばれたらまずそうだな。


「なあ、アルマ。今日の女子会でアルミラから、豊胸ポーションを作ってくれって言われるかもしれない」


「ええ?! このポーションの作り方なんて私知りませんよ?!」


「だよな。いや、アルマを勧誘するときにアルミラに作れそうなことを匂わせちまったんだよ。だから、お通じの良くなるポーションを代わりに作ってあげてくれ」


「そんな騙すようなこと……」


 確かに騙すようで心苦しいが、どうせ服用してても個人差があるポーションだとリフェルも言ってた。なら、アルミラの体質には合わなかったということにしてしまえば、万事解決するんじゃないか? だが、そんなことを言ってもアルマは納得しないだろう。


「もしかしたら、アルマの作ってるポーションは豊胸ポーションかもしれない」


「ど、どういうことですか?」


 こうなったら、今日はなぜか絶好調の俺の舌に全てを任せてしまおう。


「お通じが良くなると体の血行が良くなると聞いたことがある。つまり、血の流れがよくなることで胸に栄養が行き、豊胸につながるんだ」


 おお、自分で言っておいてあれだが、しっくりきたぞ。


「そ、そうだったんですか!」


「頼む。アルミラにこのことは言わず、ポーションを作ってやってくれ。こういった理論を聞いてしまうと気にしすぎるかもしれないからな」


「わかりました!」


 ……俺、商売人でもやっていけそうな気がする。

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