年齢
休憩していたら、すぐにアルマーティさんは帰ってきた。
「お待たせしました」
大きいバッグを背負って。
先ほどの3m級のゴーレムくらいないか? このバッグ……。
「大きいですね……アルマーティさん、その中身は何が入ってるんですか?」
「色々な魔道具やポーション類が入ってますよ。あとは、雑貨ですね」
さすがは魔王の幹部。これだけの大きさのものを背負って顔色一つ変えてない。
「街に行きますか」
俺たち4人は自己紹介も含め、街へ行く道中でお互いのことを話し合った。
どんな魔法でも使えるが魔法を使うと魔力欠乏症になるミリカ。そして、ミリカをおんぶする俺に対して硬化魔法を行使し続けるアルミラ。虫系の魔物から嫌われている俺。
「個性豊かなメンバーなんですね」
アルマーティさんは俺たちのパーティーをそう評した。
一番個性あるの、あなただと思いますよ。
「証明書を見せてもらえますか?」
しまった。すっかり忘れてたがこの街に入るのに通行証または身分証明書が必要だったな。当然、魔王の幹部だったアルマーティさんが持ってるはずもなく、証明書の発行をする流れになったのだが。
あれ、アルマーティさん魔王の幹部だったよな? 犯罪経歴大丈夫なのか?
と、心配したが杞憂だったようだ。普通に証明書が発行され、街に入ることができた。
疑問に思って聞いてみると。
「あの程度の魔道具でしたら、誤魔化しようはいくらでもあります」
この街、ザル警備だなあ。
「ようこそ、エルストの街へ!」
「はい、よろしくお願いします!」
これ、街の中に魔王の幹部がいるとかないよなあ。
衛兵の人に律儀にお辞儀を返してるアルマーティさんを見ながら、俺はそんなことを思った。
「ここが冒険者ギルド! 初めて見ました。街に入ったのも初めてだったんですけどね」
俺たちは冒険者ギルドに来ていた。クエストの達成報告と納品、何よりアルマーティさんの冒険者登録をするためだ。
俺も初めて冒険者ギルドを見たときは、こんな風だったのかと懐かしんでいるとあの時のことを思い出した。
「そういや、初めて冒険者ギルドに来た時はゴンドさんが扉から吹っ飛んできたっけ」
「ええっ!! 人が吹っ飛んできたんですか?!」
アルミラの方を向くと顔を逸らされた。
「冒険者ギルドって、予想以上にすごいところだったんですね」
緊張したようにそんなことをいうアルマーティさん。
魔王城に住んでた人からそんなこと言われると、まるで冒険者ギルドが魔窟に思える。
「まあ、そんなしょっちゅう人が吹っ飛ぶわけではないと思いますけどね……」
俺は苦笑しながら、その時は特別だったと説明する。
そして、冒険者ギルドには当たり前だが何事も無く入れた。ちなみに、背負っていたバッグは宿に置いてある。
背負ったままだったら、絶対ここで笑いが取れたな。
「おお、珍しいな。ダークエルフか……」
「ここらでは見ないわよね」
と、そこかしこの冒険者たちがひそひそと話していた。
「何か注目されてますね……」
「ダークエルフはここら辺では見かけないらしいですからね。それと、アルマーティさんは美人ですから」
「美人だなんて……」
おっと、口が滑った。本当のことだから仕方ないな。……首に手を回すのはやめてください、ミリカさん。アルミラさんも、じとーっとした目で見ないでください。
「それに何と言ってもあの素晴らしいもの……」
「ああ、圧巻だな」
ダークエルフのことが珍しいと言ってる人たちの中から、そんな声も聞こえてくる。
幻影の魔法また使ってたんですね……。
俺たちが採取クエストの達成報告をしている間に冒険者登録も終わったようだ。
「これが冒険者の証。これで私も今日から冒険者ですね!」
瞳を輝かせたアルマーティさんは感激したようにそう言っていた。その姿は魔王の幹部よりも、欲しいものをもらった子供のように思えた。
そういえば、年齢はいくつなんだろう? ダークエルフとかは長命なのが特徴だったと思うが。
「そういえば、アルマーティさんは何歳なんですか?」
「私ですか? ……21歳ですよ」
あれ、普通だ。長命だと思っていたが、そんなことはないのか。
「ソウイチ、女性に年齢を聞くのは失礼よ?」
アルミラに窘められた。それもそうか。
「すいません。ダークエルフは長命だと思ってましたから、軽く100歳くらい超えてるものと思ってました」
「私は21歳ですよ」
やはり、女性に年齢を聞くのは失礼だったか。
と、反省している俺に。
「エルフやダークエルフが長命なのは合ってますよ。ただ、やっぱり女性に年齢を聞くのは失礼ですね」
この世界でもエルフやダークエルフは長命で合ってたのか。
「私は21歳ですよ」
女性に年齢を聞くのはやめよう。なんか、アルマーティさん怖いし。




