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 舞い上がってしまって、奇妙なことを口走ってしまったが仕方ないだろう。あんな美女から称賛されたら、気分が高揚するのは当たり前だ。


「こほん……聞きたいことは聞けたし、これで俺たちは報告に戻るとするか」


 じーっと見つめてくる2人のことは気にせずに、俺は提案した。


「あ、待って。最後に一つだけ聞きたいことがあるの」


「はい。何でしょう?」


「あなた、西の魔王の幹部って言ったわよね。なら、アスト=ウィーザのことも当然知ってるってことよね」


「アストさんですか? 何度かお城ですれ違ったりはしてましたが、話したことはないですね」


「……そう。なら、今どこにいるかもわからないわよね」


「はい、すいません……」


 アルミラはアスト=ウィーザの情報を聞き出そうとしていたようだが、アルマーティさんもよく知らないようだ。


 聞くことはもう無いようなので帰ろうとしたが、ここでふと思った。


 成り行きとはいえ、魔王の幹部まで上り詰めたアルマーティさんを放置しても良いのだろうかと。


 本人は戦闘が得意じゃないと言っていたが、それでも脅威なことに変わりはない。また、戦いになる可能性もある。それに今は思いつかなくても、また聞きたいことができるかもしれないし、魔道具やポーションを作る腕は魅力的だ。魔王に対してもそこまで恩を感じているようには思えなかったし。何より美人だし。


「なあ、アルマーティさん。俺たちと一緒にパーティーを組まないか?」


「「な?!」」


「え?」


 3人とも驚いていたようだった。


「正気なの? ソウイチ」


「よく考えてください。相手は魔王の幹部ですよ? ただの冒険者を仲間にするのとは訳が違います」


「いきなり、そんなこと言われましても……」


 まずは仲間の説得からするか。


「確かに相手は魔王の幹部だが、好き好んで人を殺したりするような人じゃないと言っていただろう。現に俺たちは誰一人死んでない。それに、今回の戦いではっきりしたが前衛がいないと俺たちは厳しい。ゴーレムを召喚できるアルマ―ティさんならうってつけだ」


 俺の言葉を聞いても2人は良い顔をしない。


 仕方ない。


「アルマーティさん、あなたが採取していた薬草は人体に影響があるものですね?」


「!! どうしてそれを……」


「しかも、長く服用すれば効果が出る類のポーション。違いますか?」


「……その通りです」


 俺はあえてポーションの効果を口にせず、遠回しに言った。女性にとって、デリケートな部分だから配慮したのだ。


 幻影の魔法で胸を盛る程だ、これで確信した。アルマーティさんが作ってるポーションが何なのかを。


「ねえ、ソウイチ。さっきから何の話をしているの?」


「アルミラ、俺たちはこの森に何を採取しに来たか忘れてないよな?」


「当たり前でしょ。リフェルの店で取り扱ってるポーションの材料を……」


 アルミラも気付いたようだ。アルマーティさんが作ってるポーションが何なのかを。


「まさか……」


「アルマーティさん、そのポーションを自分でも服用してますね」


「ど、どうして、そのことを……」


 そして、アルミラは自分とアルマーティさんの胸を交互に見て。


「……一緒にパーティーを組んでも良いんじゃない?」


 陥落した。


 リフェルの店で売っているポーションは値段が高い。だが、アルマーティさんに作ってもらえたなら……? そして、ポーションの材料になる薬草も俺がいれば襲われる心配無く採取できる。アルミラの答えは必然と言えよう。


「ちょ、ちょっと、アルミラ?」


 ミリカはそんなアルミラに対し、動揺しているようだったが。


「ミリカ……お前は天才魔術師だよな?」


「そ、そうですよ。それが何か……」


「でも、ゴーレムのことは知らないんだよな?」


「ぐっ……」


「いい機会じゃないか? ダークエルフは魔法のエキスパート……さっき、自分で言ってたじゃないか。アルマーティさんが仲間になってくれれば、その英知を授かれるんだぞ? より高みを目指せるんだぞ?」


「英知を授かる……高みを目指す」


 とりあえず、難しい言葉を並べとけばミリカなら興味を示してくれるだろう。


「し、仕方ないですね。確かに前衛は必要だと思っていたところです」


 さて、あとはアルマーティさんだが……。なぜか、引いていた。


「ソウイチさんって、職業間違えてたりしませんか?」


 どういうことだ? 俺は冒険者で間違いないはずだが。


「アルマーティさん、どうでしょう? パーティー組みませんか?」


「その、私は魔王の幹部ですし……」


「手配書も出ていないですし、顔を見られているわけではないんでしょう?」


「人見知りでして……知らない人が多くいる場所はちょっと……」


「大丈夫です。すぐに慣れますから。そもそも、魔王の城に引きこもってたのだって、自分が幹部だからですよね。幹部ではなく1人の冒険者としてなら平気なんじゃないですか? 現に今だって、知らなかった俺たちとこんなに話せてるんです。自信を持ってください」


 自分でさえも驚くようなトーク力を発揮してしまった。言ってることは滅茶苦茶で強引だが、このまま勢いに身を任せてしまおう。こういう押しの弱い人には効くはずだ。


「それに、俺たちのパーティーに入ってくださるのでしたら、新しい魔道具のアイデアを提案したり、ポーションの実験体にもなりますよ」


「そ、そこまで言ってくださるのでしたら……」


 と、アルマーティさんは承諾してくれた。なぜか、ポーションの実験体の部分で目が輝いていたような気がするが、こんな美人さんが入ってくれるのなら安いものだ。


 それに、魔王にはついていけなくなったと言っていた。魔王が望む魔道具はどれも危険なもので、作りたくなくなっていたとのこと。


「では、魔王城に戻ってすぐ荷作りしてきますね」


 そう言い残し、転移魔法で消えた。さすが、魔王の幹部。


 荷物はそれほどないらしく、すぐに戻ってくると言っていたので俺たちは休憩して待つことにした。

2017/7/17 アルマーティ”さん”追加

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