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幻影の魔法

「アイスランス!」


 アルミラがいつの間にかアルマーティの側面に移動していた。そして、先ほどと同様の魔法を唱え、今度は5本の氷の槍が飛んでいったが。


「甘いです!」


 ゴーレムに全て叩き落とされていた。


 動きも凄かったが、氷の槍を粉砕するほどの強力な腕力。先ほどのゴーレムよりも小柄なはずなのに、大きいと錯覚してしまうほどだ。


「くっ。なら、ウォーター……」


「遅いです」


 次の魔法を放とうとした瞬間、ゴーレムがアルミラ目掛け突進していった。


 魔法の発動が間に合わないと判断したアルミラは回避しようと横に跳んだが。


「きゃっ!!」


 ゴーレムも追従するかのように軌道を変え、体当たりが直撃した。


「アルミラ!」


 吹っ飛び、転がっていくアルミラ。気絶したのか起き上がる気配が無い。


 まずい。ミリカも先ほど魔法を使い、気絶している。動けるのは俺しかいない。


「さて、あとはあなただけですね。ソウイチさん。なぜ、呪いが効かなかったのかはわかりませんが、些細なことはもういいです。あなたも気絶させて、記憶を消去して終わりです」


 俺たちを殺しはしないのか。


「殺さないのかと疑問に思っているみたいですね。信じられないかもしれませんが、私は自分から誰かを殺したりはしていないんですよ。今まで魔王城に引きこもってましたし、外に出る際には人除けの魔道具で細心の注意を払っていました」


 人除けの魔道具? さっき感じた雰囲気の変化はそれが原因か。あと、さらりとひきこもりをカミングアウトしたな。


「魔王城にいる人たちなら、顔を知っていても不思議ではないんですが……なぜ、ソウイチさんが私を幹部だと知っていたのかは不思議なんですよね。後で頭の中を覗けば済むことですが」


 さっき、正直に言ったんだけどな。


「では、これで終わりです。起きたときには何も覚えてないでしょうから、安心してください」


 アルマーティが話し終わった瞬間、ゴーレムが突っ込んできた。


 後ろには木にもたれかかって気絶してるミリカがいる。避ける訳にはいかない。


 こうなったら、タイミングを合わせて蹴りを食らわせてやる。効かなかったとしても、ただでやられるよりはましだ。


 俺はゴーレムが近づいたのを視認し、やぶれかぶれで胴体に蹴りを放つと。


 ――ゴーレムが砕け散った。


「「え?」」


「はぐっ!」


 砕け散ったゴーレムの破片が勢いよくアルマーティの頭部に直撃し、短い悲鳴を残し後ろに倒れてしまった。どうやら、気絶してしまったようで起き上がる気配が無い。


 ……どうすんだ、これ。


 とりあえず、アルミラが無事か確認しておこう。




 しばらくするとミリカとアルミラが目覚め、この状況に驚いていた。そして、開口一番。


「胸が小さくなってる!」


 2人してそう叫んでいた。


 ミリカ曰く、


「どうやら、幻影の魔法で胸を盛っていたようですね」


 とのことで、会った瞬間に胸をガン見していた理由が判明した。そこまでして胸を大きく見せたいのか、このダークエルフは。……あれ? 俺には幻影の魔法が効いていなかったのか? 初めから変化してないように思えるんだが。


「それにしても、あのゴーレムはどうしたの? アルマーティも気絶してるみたいだけど」


「ゴーレムは蹴ったら砕けた。アルマーティはその砕けた破片が頭に当たって気絶した」


「もっとマシな冗談言ってよ。あのゴーレムは魔法耐性はもちろんだけど、物理耐性だって相当なはずよ。ただ蹴っただけで……あんた、本当にどうなってるの?」


 最初は信じられないといった風に否定してきたが、残骸を見るなりすごい引かれた。失礼な。


「私がゴーレム達を一掃した後にもまた召喚されたんですか?」


 ミリカは新しく召喚されたゴーレムを見ていないんだったな。


 気絶していた時のことを言い終えると、落ち込んだようだ。


「てっきり、あの5体のゴーレムが最大戦力とばかり思ってました。迂闊でした」


 そんなことは無いと思うけどな。一掃してくれなければ状況は悪化してたと思うし。


「ソウイチはすごいですね。蹴っただけでゴーレムを砕くなんて。まるで、野蛮人みたいです」


「喧嘩売ってんのか」


 褒めてるのか、貶してるのかどっちなんだ。


 せっかく、慰めてやろうと考えていた言葉が今の一言で吹き飛んだぞ。


「でも、不思議よね。本当に蹴りだけで砕ける硬度だったのかしら」


「もしかしたら、偶然脆いところに当たって砕けたのかもしれませんね。ゴーレムについては詳しくないので一概には言えないんですけど」


 もしかすると俺って強いのではと思っていたのだが、偶然脆いところに当たったというのも考えられるのか。


「この人どうするの? 西の魔王の幹部らしいけど、手配書とかは無かったはずよ」


「そうですね。ダークエルフの手配書……しかも、アルマーティなんて名前聞いたことありませんでしたし」


 この人の手配書は出回ってなかったのか。そういえば、人を自分から殺してはいないって言ってたもんな。

 

 そのことも含め先ほどの会話を2人に報告する。


「とりあえず、動けないようにしておくわよ。バインド!」


 未だに気絶している魔王の幹部には、起きてから話を聞くことになった。

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