採取クエスト
「採取クエストをやりましょう」
翌日、冒険者ギルドに集まった俺たちはクエストを探していたのだが、突然アルミラがそう提案してきた。アルミラの前の張り紙には。
『あるポーションの材料になっている薬草の採取』
と書かれていた。
採取クエストは難しいと聞いたことがあるのだが。
「忘れたの? ソウイチの体質を」
俺は魔物から嫌われていたんだったな。それなら安全か。
「そういえば、西の森には虫系以外の魔物は出ないのか?」
「そうですね。虫系以外の魔物が発見されたという情報はありませんね」
近いうちに虫系の魔物以外からも嫌われているのか調べたいところだな。
「私的には、討伐クエストで魔法を使いたいところなんですが……」
「でも、ミリカが魔法使ったら3日間は何もできなくなるでしょ。討伐クエストも受けるけれど、安全な採取クエストでまずはお金を稼ぎましょう!」
「そうですね。ソウイチがいれば安全に採取できそうですし……」
なんだ? アルミラがやけにやる気だな。
詳細な内容を確認するべく、最後まで読んでいくと最後の行に依頼した人の名前が書かれていた。……リフェル、と。
クエストに表記されていた指定の薬草は、西の森の奥の方に群生地があるとのことで進んでいるのだが、ものの見事に魔物に遭遇しない。
「歩く魔物除けみたいですね」
こういうクエストには便利だな。
そして、今まで来たことがないほどの奥に進んだところで雰囲気が変わった。
「どうしたの?」
辺りをきょろきょろと見渡す俺のことを不思議に思ったのか、アルミラが俺に聞いてくる。
「いや、何か雰囲気が変わったなと思って」
「雰囲気が変わった?」
アルミラとミリカは顔を見合わせ、俺の言ったことを理解しようとしてくれるが。
「特に変わった感じはしないわよ」
「そうですね。おかしくはないと思いますが」
俺の気のせいだったのか、2人は何も感じないらしい。
しばらく進んでみるもまた、雰囲気が変わったと感じる。何が変わったのかまではわからなかったが何かがおかしいと感じた。
「また、変わった感じがする」
「何が変わったんでしょう?」
「ごめんなさい。私にも分からないわ」
具体的にわからないのはもやもやするな。
俺はダガーを抜き、近くの木に小さく切り傷を付けた。
「何をしているの?」
「いや、一応付けておこうかなと。実験みたいなものだ」
こういう場合は、同じ場所をぐるぐる回らされている可能性がある。ある本で読んだシチュエーションに似ていたのだ。誰がこんなことをしているのかは分からないが、こうしておけば目印になるだろうと考えて実行してみた。
「はあ、実験ですか」
2人には何も説明せず、あいまいに答えた。後で真相を明かして驚かせてやろうと思ったからだ。
最近俺の評価が低い感じがするし、ここで汚名返上といこうか。
「ここが群生地みたいですね」
何もないまま、薬草の群生地に着いてしまった。
あれ? おかしいな。こういう場合は同じところをぐるぐるじゃなかったのか。……良かった、あいまいに答えておいて。
ほっとしている俺のことは無視し、2人は薬草を採取し始めた。
あ、俺、薬草の採取したことない。というか、薬草とそこらに生えてる雑草との違いがわからない。
俺が正直に話したら。
「なら、一応魔物が寄ってこないか周囲を警戒しておいて」
と戦力外通告をされてしまった。
……まあ、魔物が近寄ってこないとも限らないしな。今までがそうだったからなんて、楽観視してたらいけないもんな。うん。
魔物に襲われることもなく、採取が終わってしまった。
今回、何も役に立ってない。
俺が1人で落ち込んでいると、前方にあった木の裏から女性が出てきた。
「……え?」
その女性は、なぜか不思議そうにこちらを見ると固まってしまった。そこには、銀髪の腰まで届く綺麗な髪に金色の瞳をした褐色肌の女性がいた。しかも、その女性の耳は人間よりも長く……。
「ダークエルフ!」
つい、声に出してしまった。
アルミラとミリカの2人が俺の声に驚き、背後を振り返ったと同時に。
「「な?!」」
2人して驚きの声を上げた。




