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VS フォレスト・アント

「最上級魔法!?」


 アルミラの驚きの声が聞こえたが、俺はそれどころではなかった。


 ミリカが魔法を唱えた瞬間、フォレスト・アント5匹を囲むような半球体の膜状のものが形成された。


 どうなるのかと見ていると、突然1匹のフォレスト・アントの頭が胴体と切り離された。


 ……は?


 次々と細切れになっていくフォレスト・アントたち。


 よく見ると、薄い緑色の刃が半球体の中を縦横無尽に暴れまわっている。その刃は、膜状のものから生成されているようで、数がとても多い。


「さすが、最上級魔法ね。なんて威力……」


 強力すぎませんかね!? たかが、蟻に使う魔法でもない気がするんだが!?


 というか、あの森にいたおっさんは俺にこんな魔法を使う気だったのか!!


 不発に終わったから良かったものの。こんなの食らったら、ただじゃ済まないぞ。


 半球体の膜状のようなものが消えた後には、バラバラになったフォレスト・アントの死骸と撒き散らされた体液だけが残っていた。


 ……グロい。この中から討伐部位を拾わないといけないのか。


 そして、前のめりに倒れるミリカを支えて横に寝かせてやった。


 本当に気絶しやがった。


「本当に気絶したのね。でも、最上級魔法まで使えるなんて予想外だったわ」


「そういえば、さっきも言ってたな。最上級魔法って、魔法の中で最高の威力を持っているやつか?」


「そっか。ソウイチは魔法に関しては知らないのね」


 魔法に関してどころか、この世界のことは大体知らないけどな。


「正確には、最上級魔法よりも上の魔法もあるわ。ただ、あまりに危険すぎたり、倫理に反する魔法だったりするから、国が禁止してるの。だから、実質最上級魔法が最高の威力ね」


 出ました、禁止魔法。こう心をくすぐられるな。


 異世界といったら、魔法を使ってみたいよな。


 などと考えていたら、もう2匹のフォレスト・アントが出てきた。


「ソウイチ、ミリカをお願い。こいつらは私がやるわ」


 アルミラはそのまま、魔法を唱えた。


「アイスランス!」


 前方に氷の槍が即座に生成され、フォレスト・アント目掛けて飛んでいった。避けられることもなく、2匹とも串刺しになった。


 2人ともすごいな。ミリカは気絶したけれども、アルミラはさすがCランクのことはある。伊達にソロで活動してたわけじゃないってことか。


 と、アルミラの後ろからもう1匹のフォレスト・アントが!


 俺は考えるよりも先に体が動き、フォレスト・アントの頭を蹴り飛ばした。


 脳震盪を起こして倒れてくれれば御の字だと思っていたのだが……。


「え?」


 頭は胴体と別れ、彼方に吹っ飛んでいった。


「え、ソウイチ? いつの間に移動したの? ……え?」


 アルミラは気付いていなかったのか、こちらを見て驚いていた。


「フォレスト・アントって、もしかして雑魚?」


 ただ、蹴っただけで頭と胴体がお別れした死骸を見て不思議に思ったので聞いてみたが。


「……今、何したの?」


「普通に近づいて、頭を蹴ったんだけど」


 どうやら、俺の方は見てなかったらしい。


「え? 頭を蹴った?」


 生物だから頭が弱点だと思っていたんだが、違うのか?


「頭を蹴ったくらいで倒せるほど、魔物は弱くないはずなんだけど……頭はどこにいったの?」


「どっか、飛んでった」


「……あんたの筋力って、本当どうなってるの?」


 俺の言葉にアルミラは引いたようだった。




 合計で8匹のフォレスト・アントを仕留め、討伐部位を採取したがミリカが目覚めないので休憩することにした。

 

 俺にかかっていたハイドの魔法は、攻撃したことによって解除されたとのことで魔物に襲われる危険もなく、ゆっくりすることができそうだ。


「アルミラ、魔法ってどうやれば使えるようになるんだ?」


 せっかくなので、魔法について聞いてみることにした。あわよくば、使えるようになりたいという願いも込めて。


「どうって……感覚?」


 いきなりハードルが高い。


「感覚ってどんな感じなんだ?」


「難しいわね。魔法を使うには、魔力を使うんだけど。こう、体の中にある力を解き放つ感じ?」


 そんなもの感じたことないんだが。


 よし、物は試しに。


「アイスランス!」


 手のひらを前に突き出して、さきほどのアルミラの魔法を唱えてみる。


「……」


「何も起こらないわね。というか、魔力を使った感じがしないわ」


 何も起こらなかった。


 とても恥ずかしい。


「魔力に関して、何かアドバイスを……」


「こう、しゅわわってなって、ぐるぐるして、どーんよ!」


 わかるか!




 ミリカの目が覚めるまで終始、魔法の練習をしたが使えるようにはならなかった。

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