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パーティー結成

 俺は無事にEランクになることができた。


「おめでとうございます、ソウイチ。私のアドバイスのおかげですね」


 普通はあんな誘惑に引っかからないと思うが……。


「ま、お前さんなら、楽勝だと思っていたぜ」


 多少いざこざはあったが、行って帰ってきただけだからな。


「おめでとう。これで、パーティー組んでお金を稼げるわね」


 ……どうしよう、一応アルミラにさっきのこと話した方が良いのか? 


「どうしたの? 私に何か用?」


 じーっと見つめていたら、不思議に思ったようだ。

 

「……なあ、俺の武器探しが終わったら、本当にパーティー抜けるのか?」


「ええ、私の意思は変わらないわ。前にも言ったけど、私の目的はアスト=ウィーザを殺すこと。その戦いに他の人を巻き込みたくないの」


「……そのアスト=ウィーザは自分の手で殺したいと思ってるんだよな?」


「当たり前でしょ。私の目の前で大事な仲間を奪っていったんだから」


「……もしも、もしもの話なんだが、アスト=ウィーザが死んでいた場合はどうするんだ?」


「ありえないわよ。あいつは強いのよ? それこそ、国が賞金を懸けているほどに。しかも、Sランク冒険者でも厳しい、魔王にも比肩しうる実力とまで言われるほどよ? それに、攻撃をして傷をつけてもすぐにその傷が再生するの。そんなやつが簡単に死ぬなんて想像つかないわ」


「……なら、そいつを殺した後、アルミラはどうするんだ?」


「考えたことなかったわね。そんなこと。……故郷の村にでも帰ろうかしらね」


 これは、あかん。


 もしも、そのアスト=ウィーザは消滅しましたなんて言ったら、生きる希望を無くしかねない。


 他の目的を見つけるまで、黙ってよう。


 そもそも、信じないだろうしな。


 ……でも、賞金懸かってるのか。いくらだろう?


「アルミラ! 1つ言いたいことがあります!」


 ミリカは、いきなり立ち上がると。


「私の目的は魔王を倒し、伝説の魔術師として歴史に名を刻むこと。そのためには、魔王の幹部も当然倒さなくてはいけません。巻き込む、巻き込まない以前の問題です。どちらにしろ、戦うのですから」


 そう宣言した。


「ミリカ……」


「私を誰だと思ってるんですか? 天才魔術師のミリカですよ。ですから、パーティーを抜けるだなんて、言わないでください。一緒に魔王を倒しましょう」


 ……いつの間にか、幹部から魔王を倒すことになってるな。


「それに私は強いんですよ? そんな簡単にくたばりませんし、戦う時に絶対戦力として必要になるはずです!」


 ここまで、言いきられると清々しいな。ミリカ、おまえかっこいいよ。


 ミリカは力強く言い切り、アルミラを見つめていた。


「……ここまで、言い切られると清々しいわね。それに、アスト=ウィーザだけでなく、いつの間にか魔王も倒すことになってるし」


 そういう割にアルミラの顔は、笑顔だ。


「ソウイチはどうですか? 魔王の幹部……いえ、魔王を一緒に倒しましょう!」


 ミリカは俺にもそう言ってきた。


 話の腰を折るようで申し訳ないのだが。


「この際だから、聞いておきたい。魔王って、どんな存在なんだ?」


「……そこまで無知でしたか」


 悪かったな、知らなくて。


「魔王というのは、人類の敵です。何をしているかまではわかりませんが、邪神の召喚を企てている存在です」


 知らない単語が出てきたな。邪神? なんとなく、想像はつくが。


「無知なソウイチのことです。邪神のことも知らないのでしょう? 私が教えてあげますよ」


 上から目線なのは、もう慣れたな。


「それで、邪神てのは何なんだ?」


「邪神は、この世界を滅ぼす存在です」


 想像通りだな。あれ? でも。


「何で、邪神の復活を企ててることや邪神が召喚されたらこの世界は滅ぼされるって知ってるんだ? 魔王が教えてくれたのか?」


「そんなわけないじゃないですか。神託が下ったんです。女神様から」


 ああ、教会にあった胸の部分に違和感を感じた女神か?


「この世界の理外の存在が召喚されようとしている、それを止めてくれと神官さんは聞いたみたいですよ」


 さすが、異世界。神託便利だな。


 この世界に転移させられた目的は不明だが、俺の目的は決まった。


「邪神が召喚されて、世界が滅ぼされたらたまったものじゃない。一緒に魔王を倒そうぜ」


「決まりですね!」


「私はまだ、返事してないんだけど」


「決まりですね!」


 アルミラの言葉を無視し、ミリカは話をまとめようとする。


「……はあ、強引ね。けど、こんなに言われたら応えないわけにはいかないわよね」


 そして、俺たちはやっとパーティーを結成できたのだった。




「……若い時を思い出すぜ」


 ゴンドさんは、しみじみと呟いていた。


 あ、すっかり存在忘れてた。

2017/7/8 誤字を修正しました。

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