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魔王の幹部

「……」


 俺は西の森にあるという祠の前に立っている。


 ここまで、何も起こることなくたどり着いてしまった。


 そう、魔物にも高ランク冒険者にも会うことはなかった。


「いや、帰りに何かあるかもしれない」


 行きはよいよい、帰りは怖いなんて歌もあるしな。


 祠にある魔法陣が書かれた紙を取った瞬間、背後から声をかけられた。


「そこの冒険者の少年君、ちょっといいかな?」


 俺は背後から声をかけられたことに驚いた。

 

 ……異世界の人ってなんで、背後を取りたがるんだ?


 振り向くとそこには、金髪に灰色の瞳をし、赤黒い剣を左手に持った男が立っていた。赤黒い剣は、脈打っているかのように一定の間隔で明滅を繰り返していた。


「ど、どなたですか?」


 あれ? この男……クソイケメンだな!! こいつが冒険者ギルドの誘惑役か? 女相手なら、通じたかもしれないが、俺には通用しないぞ!! けっ!!


「僕の名前かい? 僕はアストっていうんだ。短い間だけど、よろしくね」

 

 俺は、よろしくしたくない!! ……ん? アスト? どこかで聞いた気が……。


「何の用ですか?」


「いや、用というほどのことでもないんだけど……君を殺そうかと思ってね」


「は?」


 は?


「いやー、見てたけど君、アルミラとパーティーを組むんでしょ? 僕としては、彼女にパーティーを組んで欲しくないんだ。彼女は1人だけの力で強くなっていってもらいたいんだよ」


 なんだ? こいつ? もしかして、アルミラのファンとか、親衛隊の人か?


「彼女の潜在能力はすごいと思うんだ。いずれ、僕を超えるかもしれない。そして、そんな彼女と戦ってみたい! 強い彼女と戦いたい!!」


 なんか、勝手に語り出したぞ。しかも、こいつ戦闘狂か!


 アスト……まさか、こいつはアスト=ウィーザ! 西の魔王の幹部か! 


 何で、Eランクの昇級試験でこんな大物が出てくるんだ!


「だから、君は邪魔なんだ。大丈夫、一瞬で終わるよ。痛みなんて与えないで楽に殺してあげる!」


 そういうなり、赤黒い剣で斬りかかってきた!


 斬りかかってきた速度はとても速……くはなく、普通に視認できた。


 咄嗟に俺は両手を構え、真剣白刃取りをしようとし。


 ――バキィン!


 ……え? 


 勢い余って、剣を真っ二つに折ってしまった。


「な!!」


 アスト=ウィーザから、驚愕の声が聞こえた。


「そ、そんな馬鹿な!! 君は一体!!」


 手に持っていた剣は脈打っていたように明滅を繰り返していたが、次第に明るさが無くなってきた。


「この僕が、こんなところで……こん……な……」


 男はそのまま倒れ伏し、次第に体も剣も服までも灰となり、風に飛ばされ消えてしまった。


「……」


 いきなりの超展開についていけず、茫然としてしまった俺が復活するまで多少の時間を要した。




 冷静になって考えてみたが、こんなところに魔王の幹部は現れるのだろうか?


 しかも、あんなに弱いのだろうか?


 今、この場には俺しかいない。戦闘の跡もない。


 白昼夢でも見たのだろうか?


 ……そもそも、剣が本体とかベタすぎじゃないか?


 疑問は尽きないが、昇級試験をしていたことを思い出した。


「帰るか……」


 俺は、釈然としないまま冒険者ギルドに帰ったのだった。


 ちなみに、途中でサラたちの冒険者パーティーに会い、一緒に狩りにいかないかと誘われたが昇級試験中なのでと丁重に断った。


 今回の昇級試験の誘惑役は彼女達だったようだ。

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