昇級試験
「すっかり忘れてたが、ソウイチは登録したばっかりだったな」
忘れないでくださいよ、ゴンドさん。
「パーティーは組めるが、受注できるクエストのランクはソウイチが受けられるランクの1つ上、つまりEランクのクエストになるな」
一番下の人を基準にして、1つ上のランクまでか。
「さっさと昇級しちゃいましょう、ソウイチ。パーティーを組んでも街中のクエストばかりなんて夢がないです」
「そうね。低いランクのクエストをやっても、大きい収入にはならないものね」
「いや、昇級試験のこと全く知らないんだが……。登録して2日目で試験は受けられるものなのか?」
登録して2日で昇級、そんなこと可能なのか?
「そうでした。ソウイチは無知でしたね。わかりました。私が教えましょう」
なんか、いらっとくる言われ方だ。実際、知らないから何も言えないが。
「昇級試験は自分のランクに見合ったクエストを5回連続で達成することで受験資格が発生します。受かれば、次のランク。落ちた場合は、また5回クエストを受けることになります」
5回連続か。話を聞いてると楽そうだが……。達成できそうなやつだけを選んで、受ければいいわけだし。
「今、楽だと思いましたね? 下のランクなら確かにそうです。ですが、上のランクに上がるにつれて、達成するクエストの種類も受験資格に含まれてくるんです」
「クエストの種類?」
「そうです。討伐、採取、護衛などクエストには種類がありますが、この中から何種類かを含めてクエストを達成する必要があるんです」
なるほど……。
「私の場合、Cランクの昇級試験を受けるには2種類のクエストを含んで達成する必要がある、ということです。Bランクなら3種類というように増えていきます。分かっていただけましたか?」
「ありがとう。わかったよ」
その顔はむかついたが。
とりあえず、Dランクまでならクエストの種類は関係無く、達成すれば良いということだ。
俺は、2回達成してるから、あと3回か……。長いな。あれ?
「これ、パーティーを組んで達成しても良いのか?」
「もちろんです。最終的に試験を受けるのは個人ですから、寄生してランク上げはできないようになってます。それに、上のランクになると難しくなるのは当たり前ですが、落ちた場合すぐには受けられないように期間が設けられてます」
「説明、ありがとう」
ミリカは勢いよく話したせいか、若干疲れているようだ。
「……とりあえず、クエスト受けてくるよ」
「あと、何回クエスト受けないといけないの?」
「……3回」
今日はこれで解散し、2日後に冒険者ギルドに集合することになった。
そして、Fランクのクエストを無事に3回達成し、昇級試験を迎えることになった。
昇級試験は外へ行くという情報があったので、稼いだお金で服を新調した。
異世界ファンタジーものに出てくる感じに仕上がったと思う。
「では、Eランク昇級試験を行います。説明は必要ですか?」
俺の昇級試験の担当官は、ほんわかさんだった。
「はい、お願いします」
試験内容は、西の森にある祠から魔法陣の書かれた紙を取ってくるというものだった。
この魔法陣の書かれた紙は魔物除けの効果があるらしく、試験としては祠までの道中をどうするかを試すものらしい。当然、魔物も出るとのことなので、注意することと言われた。
制限時間は、正午を知らせる鐘が鳴るまで。
今はまだ午前の鐘の2回目(9時くらい)だから、随分と時間がある。
「以上となります。他に質問はありますか?」
「……いえ、大丈夫です」
試験というと、緊張するな。けど、ミリカのアドバイスもあるし、何とかなるか。
初めての昇級試験ということもあり、俺はミリカからこっそりアドバイスをもらっていた。
「低いランクの試験なので監視はありませんが、道中で高ランクの冒険者が誘惑をしてきます。私の時がそうでした。魔物を狩ったが大きすぎて運べない、街まで運んでくれたら報酬を出すという感じです」
「それ、試験の邪魔なのか? 運んだあとに祠に行けばいいんじゃないか?」
「……制限時間を超えるようにうまく誘導されるんです。試験後に、師匠に怒られながら聞かされました」
ミリカ、誘惑に引っかかったのか。というか、落ちたのか。
「というわけなので、誘惑に負けないように頑張ってください。その時々で誘惑の仕方は変わるらしいですが」
まあ、道中は魔物も出るらしいし、気を引き締めて臨もう。




