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幼馴染

 シスが虚空にすぅーっと幽霊のように消えた後、すっかり暗くなってしまった道のりを一人でとぼとぼと歩いていると村の門らしきものが視界に入ってきた。


 別れた場所から体感時間的に五分ほど歩いた距離だ。


「まあ、当然だけど、門番はいるよなぁ……。さて、どう言って中に入れてもらうか」


 村の門の前には中年の男性が槍を持ち、あくびをしながら暇そうに立っていた。……何もやることがないのはわかるが、もうちょっと緊張感を持ったほうがいいのでは?


 そんな門番だとしても、さすがに「冒険者です。辺りが暗くなってしまったので村に滞在させてください」なんて言葉は通用しないだろう。


 それだけで入れるなら、この村の警備に疑問を抱いてしまうレベルだ。……さっき疑問を抱いてしまったが。

 

 何か理由が必要だな。


「ん? あんたは……」


「あ、どうも! 俺は――」


「ふむ、冒険者かな? 辺りが暗くなってしまったから村に滞在したい、というところかな? 歓迎するよ」


 ……この村の警備は大丈夫なのか?


 俺が何かを言おうとする前に警備の人は、すでに歓迎ムードになっていた。


「あの、確かに俺は冒険者ですが、そんな簡単に入れてしまっていいんですか?」


「ん? 問題でもあったかな? まあ、何もない村だし、ここらへんは盗賊が出たなんて聞かないから大丈夫さ!! ……ひっく」


 ……ひっく? うわっ、この人酒臭い! え、門番やってる人が飲酒してていいのか?!


「そ、そうですか。でしたら、お言葉に甘えて……」


 ここで問答をしていても意味がないと悟った俺は、さっさと村の中に入るべく歩みを進めた。


「まあ、宿なんて上品なとこはないから、集会所で雑魚寝になると思うが魔物に襲われる心配はないから、安心してくれ! ……ひっく」


 全然、安心できない。


 酔っ払い門番の声を背にさっさと村の中に入ることにした。




 舗装されていない道を歩きながら、村長らしき人物が寝泊まりしているであろう家を探していると、村の奥まったところが妙に明るいことがわかった。


「なんだ? 結婚式の準備とかやってるのか? なら、ちょうどいいな」


 さっきの門番には歓迎され、村に入れてもらえたが肝心の集会所の場所を聞き忘れていた。村長にも挨拶をしておく必要があるし、どう探そうかと考えていたがこれは渡りに船だな。


 きっと明かりの近くには村人がいるだろうし、村長の家まで案内してもらうことだってできるだろう。


 明かりに近づくと、そこには多くの大人が集合していた。


 何をしているのだろう?


 さらに近づいてみると、


「こんな時間までどこに行ってた?! まさか、村の外に出ていたんじゃないだろうな!! ゴンド!!」


 聞きなれた名前が聞こえてきた。青年だろう人の怒鳴り声付きで。


 いきなりの声に面食らっていると、さらに声が響く。


「シンシア? あなたもどこに行っていたの? 村のみんなをこんなに心配させるなんて……」


 穏やかそうな声なのに背筋に悪寒が走り抜けそうな底冷えする女性の声が。


 ……今はお取込み中のようだし、もう少し待ってから声を掛けるとするか。別にちょっと怖いから、尻込みしてしまって話掛けられないのではなく、重要な話し合いに水を差すのも無粋かな、と思っただけだ。決して、腰が引けているわけでない。


「リフェル~? お姉ちゃんに正直に話してくれるかな~? これはリフェルたちのことを思ってのことなのよ~?」


 今度は間延びした話し方で優しそうな女性の声。


「おぅ、グレース。お前なら話してくれるだろう? かくれんぼしていたわけじゃねぇんだろう? 村中探したんだからよぉ」


 さらにはドスの効いた男性の声。


 ……って、あれ? リフェルにグレース、って名前に聞き覚えがあるんだが。


 興味を持ってしまったら、止まらないのが俺の美点だと思っているので、近くにいた初老の男性に声を掛けることにした。


「あの~、どうしたんですか?」


「うん? あんたは?」


「あ、自分はソウイチって言います。夜も遅くなってしまったのでどこか寝床を借りられたらな、と思い立ち寄った冒険者です」


「おお、あんた冒険者だったのか。何もない村だが、ゆっくりしていってくれよ」


「ありがとうございます。えーっと、それでこの騒ぎは一体?」


「ああ、見苦しいものを見せちまったな。うちのやんちゃなガキどもが一時行方不明になっていたから、みんなで探していたんだよ。そしたら、ついさっきやっと見つかってな。どこに行ってたのか問いただしているところなんだ」


 なるほど、こんな夜になるまで見つからなかったら、そりゃ心配するよな。


 あ、それはもしかして、この時間まで連れまわしていた俺にも非があったりするんじゃ……。


 だらだらと汗が出てきた。


「ん? どうしたんだ?」


「ちょっと、その子供たちのところに行っても良いですか?」


「……? どうぞ?」


 疑問顔を作った初老の男性と聞き耳を立てていたのだろう、周りの人たちが俺が通れるように道を開けてくれた。お礼を言いつつ、村人たちの間を歩いていくと大人たちに囲まれた子供四人が地面に座らされているのが見えた。


 ゴンド少年とシンシア嬢、それに元居た時間軸でエルストの魔道具店をしていたリフェルと武具屋をしていたグレースの面影を感じる子供がそこにいた。


 ふむ、この四人は幼馴染だったのか。

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