パーティー
「本当、どういう筋力してんの？ あんた」
「はっきり言って、気持ち悪いな」
ひどい言われ様だ。
確かに、俺も内心で驚いてはいるが。そんなに引かれるほどのことか？
「心外そうな顔をしているが、その大剣は大人５人がかりでやっと持ち上げられる重さだぞ？ それを軽々しく、しかも片手で持ち上げられて驚かない方がおかしい」
そんな重いのか、この剣……。実用性皆無じゃないか。
「金持ちの道楽で作ったは良いが誰も使えないし、買い取ってもくれないから店の片隅に置いておいたんだが……あんた、買うかい？」
「ちなみに、お値段は？」
「希少な鉱物と魔物の部位を使ってるが、今なら１５０万ルドという破格の値段で売ってやる。とてもお買い得だぞ？」
破格の値段だろうが、俺には逆立ちしても無理な金額だ。
「そもそも、これ買ってもどうやって持ち運ぶんだ？ 邪魔にしかならない気がするんだが……」
背負うにしても刃の部分が地面に着きそうだし、建物の出入りの際にも絶対面倒くさいぞ、これ。
「……まあ、斬ったりすることはできるが、ほぼ観賞用だろうな」
だろうな。こんなの使う冒険者はいないだろう。
「違う武器を選ばせてもらうよ。ところで、この店に置かれてるダガーで一番安いのは、何ルドなんだ？」
「一番安くて８万ルドだな」
俺は持っていた大剣を慎重に床に置き、店を出ようと扉の方に向かった。
「ちょ、ちょっと、どこに行くのよ？」
アルミラが俺を止めようとするが。
「すまん、俺４万ルドしか持ってないんだ」
「……」
「……そんな金で武器は買えないぞ？」
正直、武器の値段を甘く見てた。
「防具や服もそんなに高いんですか？」
「いや、４万なら普通の服は買える。防具は、一式を揃えようとするならきついと思うぞ」
普通の服ですか。
「……ありがとうございます。もう少しクエストやってお金貯めてからきます」
「お、おう、頑張れよ……」
店を出た俺をアルミラは追ってきた。
「ちょっと待って、ソウイチ！」
「どうした？」
「どうしたじゃないわよ。武器選び協力するって言ったでしょ」
「でも、俺は武器を買うお金が無いのだが」
「冒険者になったばかりのあんたに武器の相場なんて、わからないことは予想できたことだわ。これは私の失態よ。だから、最後まで責任持つわ」
男らしい。見た目と相まって、超男らしくてかっこいい！
「今、変なこと考えなかった？」
「いや、特に考えてないぞ」
すごいな、女の勘か？
「まあ、いいわ。ソウイチ、パーティー組んで一緒にクエストをやりましょう。武器を探し終わるまで、面倒を見るわ」
マジか。本当に責任感強いんだな、この子。
「ああ、ありがとう。むしろ、こちらからお願いしたいくらいだ」
冒険者ギルドに戻るとゴンドさんとミリカも帰ってきていたらしく、席で話をしていた。
「では、こうしましょう。チンピラを雇ってアルミラにけしかけるんです。そこで颯爽と私とソウイチが登場し、そのチンピラを追い払うんです。どうです？ これなら、アルミラに強さを証明できるでしょう」
「いや、そんな程度じゃインパクトに欠けるぜ。やっぱり、ここは……」
など、２人は好き勝手に議論していた。他の冒険者は、声を大にして話をしている２人を遠巻きに見つめてひそひそ話していた。
……とても話しかけづらい。というか、他人のふりして帰りたい。
「……私が何ですって？」
「だから、アルミラに強さを証明してパーティーを……あ」
ゴンドさんとミリカは本人に話を聞かれていたのを理解すると、無言になった。
「お、おや、奇遇ですね。アルミラ。一緒にパーティーを組んでください」
「チンピラをけしかけなくて良いの？ ミリカ？」
「……はて、何のことでしょう。それよりも、パーティーを組んでください」
「……」
惚けるのも無理があると思うぞ、ミリカ。それに、実力行使はどうしたんだ。
「はあ、まあいいわ。話があるの」
そして、先ほどの話を２人に伝えたのだった。
俺が大剣を持ったところは省略されたが……。
「なるほど、ソウイチは無知だということがわかりました」
失礼な。……事実だけに反論できないのが、悔しい。
「でも、よくやりました。さすが、私の右腕ですね」
誰が右腕だ。
「これで俺も安心できた。おまえら、これから頑張れよ！」
「一応言っておくけど、ソウイチの武器選びが終わるまでだからね！」
「それでも大丈夫です！ その時までには、私たち無しでは生きられなくしてやります！」
何する気だよ。
「……短い間かもしれないけど、よろしくね！」
おお、華麗にスルーしたな。
「ええ、こちらこそ、よろしくお願いします！」
課題は色々ありそうだが、やっぱりソロよりもパーティーを組んだ方が心強いな。それに、楽しそうだ。
「２人ともよろしくな！」
こうして、俺は異世界に転移して３日目でパーティーを結成することができたのだった。
「そういえば、俺はＦランクなんだがパーティーを組んだ場合、ランクはどうなるんだ？」
「「「あ」」」
