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「さて、話を聞かせてもらいたいんだけど? アルマたちは一体何と敵対しているの?」


「魔法が効かない相手なんて初めて会いました。王都の時にも思いましたが、一体天使って何なんですか? おとぎ話に出てくるような存在とはまた別なんですか?」


「……私も聞きたい。私たちのパーティは冒険者の中でも最高位。魔王の幹部が相手だとしても互角に渡り合える自信があった。だけど、男共は簡単に洗脳されて私は毒を盛られた。なぜか心を許してしまっていたし、今考えてみると不自然な点が多々ある。そして、この有り様。実際、矛を直接交えていなくても、あのディアナとロセルの力は異常。あの人たちの正体が知りたい」


「……あのー」


 あの後、街に戻った俺たちは今回の件でゆっくり話をするためにアルマの宿に来ていた。


 Sランク冒険者たちは衛兵に頼んで病院まで搬送されている。ディアナ(という名のロセル)を通した時の衛兵に何があったのかと問われたが、そこはクラリッサさんが誤魔化した。ちなみにその時の会話が、


「な、なにがあったんすか?!」


「なにもなかったけれど、この人たちを病院に運んで寝かせておいてほしい」


「え、でも」


「なにもなかった」


「……わ、わかりました」


 ごり押しにもほどがある。なにもなかったわけないのは、一目瞭然なのに。


 ちなみに、街まで意識を失った男連中を運んだのは俺である。さすがに三人は無理がある、と言ったのだが。


「すいません、もう魔力がないためゴーレムを作れないんです。それにもうほとんど余力がなく……」


「ごめんなさい、私は力がうまく入らなくて……」


「私も力がないので!」


「……引きずって構わない。この男連中は頑丈だから」


 アルマ、アルミラ、ミリカ、クラリッサさんの順にそんなことを言われたら、もはや何も言い返せない。いや、若干一名の言に首を傾げたい気持ちに襲われたが、この中で一番力が強いのは俺だし、あーだこーだ言っても仕方無い。……俺も蹴られた腹が痛いんだけど。


 というわけで、ダレンさんとブライアンさんを肩に担ぎ、モーリスは引きずった。足を持って引きずったから顔中砂まみれになってしまったが、放置されるよりはマシと考えてもらおう。


 そして、俺の疑問。


「なんで、クラリッサさんまでいるんですか?」


 てっきり衛兵にダレンさんたちをお願いしたとき一緒について行っているものとばかり思っていたのだが、俺たちについてきていたようだ。


「私には話を聞く義務がある。あんなことになった以上、あの天使とかいう存在は危険。冒険者として注意する必要がある」


「えーっと」


「アルマーティさんは魔王の幹部。監視という意味でも私が必要。それに見極める必要がある」


 話次第では、冒険者ギルドに報告するという意味も含まれているわけか。普通の人からしたら、天使も魔王の幹部も同じように脅威として認識されるし、仕方ないといえば仕方ないのかもしれないな。


 淡々と語るクラリッサさんは、すでに椅子に座って聞く態度だ。アルマも椅子に座って、アルミラとミリカはベッドに腰かけ――。


「あれ、俺の座るところがないんだけど?」


 また床に座らされるのは勘弁してほしい。


「え、椅子はもう一つあったはず――」


「まったくあなたたち遅すぎるわ。私がどのくらい待ったと思ってるの?」


 アルマの困惑した声に被せるように、どこかで聞いたようなイライラした声が部屋の隅から発せられた。そこはちょうど出入口の扉を開けたときの死角になっている場所で。


「あ、お前は!?」


 そこにいたのは、アルマと同じ魔王の幹部で様々な毒を使う俺にとっての天敵(心のトラウマ的に)であるタロマだった。俺が座るはずの椅子に座って足を組んでいる。


「うるさいわね。いきなり大声出さないでくれる?」


 転移魔法で俺を拉致しようとしたときと同じ姿で、やっぱりメイド服を着ている。ということは、もしやこれが本体?


 というか、俺たちが来る前からずっとそこにいたのか? まったく気づかなかったんだが。


「タロマさん、何の用ですか?」


 俺とアルマ以外は知らないはずなので、こいつが何者なのかを説明しようした矢先、アルマが今までに聞いたことがないほどのぶっきらぼうな声で問いかけた。


 そういえば、病院にいたときに嫌な感じがどうとか言っていたような気がする。この二人仲が悪いんだな。


「何の用とはご挨拶ね。ご主人様からの招待よ。ここにいる人たちに説明が必要でしょ。ご主人様が直々にご説明なさるそうだから、案内役といったところかしらね」


 タロマがそういった瞬間、床に魔法陣が浮かんだ。


「いきなり何なの?! それにタロマってたしか――」


「これは転移の魔法陣!!」


 アルミラとミリカが困惑の声を上げた瞬間、眩い閃光が室内を包んだ。


 閃光が止んだ時、俺を除くここにいた全員が忽然と姿を消していた。おそらく魔王さんのいるところに転移したのだろうが、


「俺はどうすればいいの?」


 一人だけ取り残されてしまった俺は途方に暮れるしかない。前にもあったな、こういうの。あの時は転移の魔法を起動するのに時間がかかっていたから、今回のはきっと準備していたのだろう。


 ずっとこの部屋で俺たちが来るのを一人で待っていて、転移の魔法陣を準備していた姿を想像すると、ちょっと可愛く思える。

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