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武器

「そう、あなたダガーを使えたのね」


 ――いえ、使えません。包丁くらいしか刃物は持ったことがありません。


「だから、軽装なのね。よく見ると動きやすそうだし、肌の露出も少ない。変わった服を着ていると思っていたけれど、考えているのね」


 ――量販店で買った安物です。


「でも、私がダガーを選ぶ判断基準は切れ味が良いかどうかだから、助言はできそうにないわ」


 ――実際、俺も切れ味が良ければいいと思ってます。


 適当に選んでしまって、とても申し訳なく感じた。


「店主に相談してみましょう。ここは武器も作っているから、助言をもらえるはずだわ」


「そ、そうだな。そうしよう」


 そんな俺の心情がわかるはずもないアルミラは、とても真剣に考えてくれる。


 俺の良心が……。


 言ってしまったものは取り消せない。なら、使えるようになればいいんだ。


 俺は前向きに考え、カウンターの方に向かおうとしたのだが。


「一緒に来てくれるのか?」


「当然でしょ。先輩冒険者として、協力するって言ったんだから」


 ここで見捨てることはせず、最後まで協力してくれるみたいだ。


 いい子だな。俺より、年下のはずなのに……。そういや、しっかりしてるけど年下なんだよな。そんな子が復讐に生きるっていうのも、悲しいよな……。




 俺たちは、カウンターの方に向かったのだが。


「……いらっしゃい」


 こちらには視線を向けたが、興味なさそうにすぐに本を読み始めた。


 そこには、赤茶色のショートの髪に茶色の瞳をしている無愛想な女の店員がいた。肌は褐色で、ある部分が服の上からでもわかる大きさだ。


 ……一瞬、凝視してしまった。眼福だ。


 その直後、アルミラから不穏な空気を感じ取ったため、誤魔化すように店員さんに話しかけた。


「あの、ダガーを買いたいんですが、おすすめってありますか?」


 当たり障りのない言葉で質問してみた。


「全部」


 淡泊な返答だった。


「この人、冒険者になったばかりなんです。できれば、助言をしてほしいんですけど」


「……めんどくせーな」


 この人は、接客をする気があるのだろうか。

 

 読んでる本に栞を挟み、机に置くとやっとこっちを見た。


「んで? ダガーを選んで欲しいって? うちの店に置いてあるのは、全部あたしが丹精こめて作ったものだ。妥協してないから、店主であるあたしが品質は保証してやる」


 え? 作ったのあんただったのか。しかも、店主かい。


 異世界ものの鍛冶師って、筋肉ガチガチの長身の男を想像していた。


 これは良い意味で裏切られたな。


「あんたが使うのかい? ちょっと、手を見せてみな」


「はい」


 右手を差し出すと、一瞬見た後。


「……持ってみて、重さを苦に感じないものをすすめる。以上」


 すぐに興味を失ったかのように、また本を手に取り読みだした。


「はあ……」


「ちょ、ちょっと、もう少しマシな助言をして……」


「素人相手にこれ以上の助言はないよ」


 きっぱりと、答えられてしまった。


「素人……?」


 アルミラの目がこちらを向いた。


「あなた、ダガーを使えるんじゃ?」


「野菜を切るくらいなら……」


「……はあ、なら最初からそう言ってよ」


 ごめんなさい。


「……夫婦漫才なら、外でやってくれー」


 気怠い店主の声が聞こえた。




 さきほど店主が言った通り、手に持って重さに苦がないダガーを選んでいたのだが。


「……全部重さが同じように感じる」


 色々なダガーを持ってみるも、どれも同じように感じた。


「そんなわけないでしょ。これとか、全然重さが違うわよ?」


 そう言われて持ってみても結果は同じだ。


 ……ダガーではないものなら、どうなんだろう。


 俺は大剣が置かれている場所に向かうなり、片手で持ってみる。


 2mくらいの剣だが、重さを感じないで持てた。


「え?」


 アルミラは驚いたようにこちらを凝視していた。


 とても軽い。発砲スチロールで出来たものを持っているみたいだ。


「重たくないの? 本当に? ちょっと、私にも持たせて」


 落とすと危ないので元にあった場所に戻してから、アルミラは挑戦するが。


「重くて持てないわ……ソウイチ、あなたどんな筋力してるのよ」


 それ、昨日も言われたな。


 自分の筋力がどのくらいなのか、試してみたくなった。


「……今度は何だよ?」


 店主はめんどくさそうにしながらも、一応聞いてくれる。


「この店で一番重い武器って何ですか?」


「……あっちにある、黒い大剣」


 指さす方を見てみると、そこには3mはあるのではないかと思うほどの黒い大剣が無造作に床に置かれていた。


 近づいてみるとその大きさは、歴然だ。


「ちょ、ちょっと、ソウイチ。さすがにそれは無理だと思うわ」


 俺は躊躇無く片手で持ってみるが、結果はさっきと同じでとても軽かった。


「え、ええええええええええー!!」


 アルミラの驚きの声が響き渡った。


「うっせーな。今度は何……は?」


 アルミラの声に店主が俺の方を見た瞬間、口をぽかんと開け固まってしまった。


 人の方を見て、固まるとか失礼な気がする。

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