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天使化

「……これで確定。兄が時間を稼いでくれたおかげ」


 敵地のど真ん中もど真ん中で、冷静な顔をしてぶつぶつと呟いているロセルの余裕が不気味だ。


 というか、なぜアルマの操るゴーレム三体に囲まれている状態に自分からなったんだ?


「ありがとうございます、ミリカ。防護魔法を使ってくれたおかげで助かりました」


「いえ、魔法は不発に終わったみたいです。発動していたら、完全に防げたか……。デュアルマジックなんて高等技術に加えて、知らない魔法でしたからね。本当にゾっとします」


 ロセルの状態を監視していたら、後ろから不穏な会話が聞こえてきた。 


「ちょっ、待って! そんなにやばい魔法なら、なんで俺にもかけてくれなかったんだ? 効果範囲に入ってなかったとかが原因か?」


「それは私も不思議に思っているんですけど、なぜかソウイチには魔法がかからなかったんです。きちんと指定はしていたはずなんです。なんでですか?」


 ミリカが不思議そうに首を傾げて、俺に疑問を投げかけてきた。


 いや、魔法のことはさっぱりわからないから聞いたんだが、疑問で返されても困る。


「これは推測なんだけど――」


 俺とミリカが疑問に思っていると、アルミラが口を開いた。


「ソウイチは魔法に耐性があるんじゃない? ううん、どちらかというと魔力そのものかもしれない。今だって、敵のも味方のも魔法は発動していたけど、打ち消されたみたいに感じたし。これまで、相手が魔法を使ってきたときに無効化した経験があるでしょ?」


「思い当たる節は……結構あるな。つまり、俺は相手が魔術師なら優位ってことだな!」


「あまり過信しないほうが良いと思うけど。どの程度まで打ち消せるのかわからないんだから」


 確かに過信はよくないが、さっきの魔法は無効化できた。あれを放ったのはロセルで間違いないだろうし、魔法を扱うミリカが高等技術と言うのだから、そんな技術を持つ者が魔術師でないはずがない。


 今回はさして苦戦することはなさそうだな!


「あなたは誰ですか?」


 俺が慢心しているとアルマがロセルに誰何した。若干、声が震えていた気がするのは気のせいだろうか。


「私はロセル。ディアナの双子の妹。そして、あなたが想像している力を持っていると言えば通じる? 西の魔王の幹部であるアルマーティさん」


 こちらを見据え、無表情のまま自己紹介をした。


「……やはり、そういうことですか。さきほどからゴーレムへの命令を阻害しているのもあなたの仕業ですね」


「西の魔王の幹部……?」


 後ろからクラリッサさんの半信半疑の声が聞こえてきた。説明をすると長くなるので、話は後回しだ。


「確認したいんだが、今はゴーレムを動かせないんだな?」


「はい、こちらからの魔力パスが阻害されているのか命令を受け付けません。多分、相手は」


「了解。それがわかれば十分だ」


 アルマが何かを話している途中だったが、ロセルを簡単に無力化できるだろうと考えた俺は言葉を聞き終わる前に走り出した。


 一瞬でロセルの前に到着した俺は、


「やばい、女性を相手にした時、どう無力化すればいいのかわからない」


 無力化する方法がわからず頭を抱えた。


 今まで直接相手にしたのは男ばかりだったのだから、女性相手の対処が頭からすっぽり抜け落ちていても仕方のないことだと思う。男なら容赦はいらないと思うが、女性は大切に扱わないといけない。敵だったとしても!


 殴る? ――いやいや、スプラッタになってしまう。それ以上にグーではダメだろう。


 首絞め? ――いやいや、女性の首を絞めるとかどんな鬼畜だ。


 羽交い絞め? ――これだ! その際にちょっと胸を触ってしまうかもしれないが、不可抗力。そう、これは仕方のないことだ。


「敵の前で止まって、ぼーっと突っ立っているだけなんて相当な余裕ですね。自分には魔法が効かないからと慢心しているのですか? それとも、あなたの力を私たちが欲していると自惚れているのですか?」


「いや、女性相手にどう対処すればいいのかわからなかったから、悩んでいただけだ」


「……そうですか。ですが、敵なら女だとしても容赦しないほうがいいですよ? こんな風になりますから――」


「やめておいたほうがいい、俺に魔法は……ごふっ!!」


 言い終わる前に腹部に鈍い痛みが走り、橋の上まで吹き飛ばされていた。


「「「ソウイチ!!」」」


 嘘だろっ! 俺に魔法は効かないはず。拳で殴るにしても、この頑丈な体に痛みを与える攻撃ができるとは考えにくい。だけど、明らかに殴り飛ばされた感覚だった。


 何をされたのかわからないまま痛みを堪えて立ち上がると、


「天使?」


 ロセルの背中あたりから生えている透明な翼が視界に入ってきた。


 王都で騒動が起きたとき、クレアシオンのリーダーであるバーテルがなっていた姿に似ている。いや、あの時よりも翼に質感がある。そのためか、アルミラにも見えるようで呟きが聞こえてきた。


 黒いコートを纏っているせいで、どちらかというと堕天使みたいに見えるが。


「ミリカ、あれって王都の時と」


「はい、バーテルの時と同じです。ですけど、これはあの時に感じた力とは別次元の気がします。それにロセルの翼は他のみんなにも見えているみたいですよ」


「な、なに、あれ……?」


 解説役のクラリッサさんが驚きの声を上げていた。さすがに博識だとしても、天使のことまでは知らないのだろう。


「あなたに魔法が効かないのはさっき試した。だから、この姿で相手をする。私の天使化は完全な状態。あなたたちの魔法は一切受け付けない」


 バーテルの時とは違い、ロセルは正気を保っているみたいだ。


 これは厄介なことになったんじゃないか?

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