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主人公

 俺が操られていないという情報をディアナには知られず、向こうにいる三人に伝える方法は無いものだろうか。


「なんてことなの……。今までに私のフェロモンで操れなかったことなんて、一度も無かったのに」


 後ろからディアナの悔しがる声が聞こえてきた。


 アルミラにハンカチでも噛んでろと言っていたが、自分が歯噛みする羽目になるとは思わなかっただろうな。


 ……ディアナが後ろにいる? そうだ、良いこと思いついた!


「……? どうしたんでしょう。ソウイチの目、瞬きが多くなっている気がします。ゴミでも入ったのでしょうか? パチパチしている姿はちょっと気持ち悪いです」


「……きっと、フェロモンに抵抗しているからだと思われる。抵抗している人間を見たことも聞いたことも無いから、推測に過ぎないけど。多分、そう」


 ディアナが悔しがっている間に操られていないことを知らせようと、ウインクしているんだよ! あと、気持ち悪くてすいませんでした!!


「今度は魚みたいに口をパクパクさせてるわね。遠いせいで声が聞こえないから、何を言っているのかわからないわ。それとも抵抗しているせいで息苦しくなっているのかしら? あまり言いたくはないんだけど、ちょっと不気味ね」


「…………抵抗しているから、だと思う」


 口パクで伝えられないか、試しているだけだよ! それと、言いたくないんだったら言わずにおいてもらえたら良かったな!!


 位置的に目や口を使えば、ディアナに悟られることはないと思い、行動に移したのだが向こうにいる三人の誰一人として俺の意図を察してくれなかった。それどころか、ひどい言葉を浴びせられる始末。


 声を出せないというだけで、ここまで意思疎通ができないとは……。とても歯痒い。


「もう、面倒くさい! 私の優しさを無下にするこの男には後でおしおきするとして、他の三人に命令するわ。橋の向こうにいる女たちを殺しなさい!」


 焦れたディアナが、とうとうダレン達に「殺せ」と命令を発した。


 その言葉と同時に駆け出す三人のSランク冒険者たち。


 無骨なデザインだが実用性は十分だと一目でわかるハンマーを携えた象の獣人――名前はブライアンというらしい――が先頭を走り、続いて双剣を構えたダレン、最後に弓を使うエルフの男――こいつの名前はモーリスだそうだ――が橋を渡り始めた。


 え、後衛である弓使いまで橋を渡るの?


 って、疑問に思っている場合じゃない! これはチャンスだ! ここで俺がさも洗脳から自力で脱出した風を装って、ダレン達を奇襲すれば主人公っぽいんじゃないか? 己の強い意志で困難を乗り越える。


 素晴らしい展開じゃないか!


 倒せなかったとしても仲間からの評価は上がるはずだ。よし、早速行動に……え?


「二人は下がっていて。あの三人の相手は私がする!」


「無茶ですよ! 体調が芳しくなく、さらには魔法まで使えないというのにあの人達の相手をするのは! ここは私たちがなんとかしますから、後ろに下がって休んでいてください」


「そうよ。私たちだって、色々と修羅場を潜り抜けてきたんだからこのくらい。……え?」


 橋の向こう側、アルミラたちがいるその後ろに突如三体のゴーレムが魔法陣とともに出現した。


 まさか、新手の出現かと思ったが、よくよく見てみるとそのゴーレムたちには見覚えがある。限りなく人間に近い風貌を持つ、されどその力は常人以上の力を秘めた俺たちの仲間が造ったものに。


「なっ! ゴーレムですって?! しかもあんな精密な造形のものを三体も!!」


 驚愕の声が背中越しに伝わってきた。


 出現したゴーレムたちは、ダレン達の行く手を阻むようにアルミラ達の前まで移動し、


「皆さん、ご無事ですか?」


 同時に転移魔法で、いつも着ているようなローブ姿ではなく、見事な装飾がされている立派な装備で完全武装したアルマが颯爽と登場した。


 登場の仕方が完全に主人公だ。


 そして、襲い掛かってきたブライアンの両手持ちハンマーをゴーレムが片手で軽々と受け止めた。甲高い音が響き渡ったが腕部分は破壊されておらず、罅すら入っているようには見えない。


「その程度の力では、私のゴーレムを破壊することはできませんよ」


 橋を渡り切る前にブライアンを止めたため、後ろに続いたダレン達は足踏みするかと思われたが、


「と、跳び上がりました! で、ですが、空中は良い的です。私の魔法で撃ち落としてくれます!」


「いえ、ミリカ。ここは私に任せてください。出番は後に残ってますので」


 ブライアンの肩を台にして、曲芸師のように空中にダレンが跳び上がった。容易にブライアンたちを飛び越えたのには驚いたが、アルマは直地点を完全に見切っていたようで。


「これであとは弓使いだけですね」


 着地したダレンの元にゴーレムが素早く移動し、その勢いのまま拳による一撃を繰り出した。避ける行為もできず、もろに食らったダレンは吹き飛ばされ、ピクリとも動かなくなった。


「くっ、一度戻りな――」


「逃がしませんよ」


 今度はアルマのゴーレムがダレン同様の動きをしてみせ、矢を数発受けても意に介さずモーリスを無力化した。簡単に説明すると背後に着地し、そのままチョークスリーパー。普通に気絶した。


「これで三人はもう使い物になりませんよ?」


「まだ、ブライアンが……。駄目なようね」


 モーリスの方に気を取られていたら、いつの間にかブライアンがゴーレムに腹パンを食らい、倒れ伏す状態になっていた。


 一瞬のうちに操られていたとはいえ、Sランク冒険者三人が無力化されてしまった。


 え、アルマのゴーレム強すぎない? というか、登場の仕方といい格好良すぎだろ。


 ……さて、俺はいつこの操られている状態から抜け出せばいいのかな?

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