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主語

 この状況は、かなりまずいんじゃないだろうか。


 ディアナの言葉から推測すると、その正体は魔王さんたちと敵対している組織の構成員だろう。手段は不明だがSランク冒険者である男三人を操っているのだから、相当の実力を持っているのは間違いない。


 対してこちらはアルマ抜きに加え、戦力として頼りになるはずのクラリッサさんが一服盛られたのか体調不良という状態だ。実質俺たち三人で戦わなければいけない。


 数的にも、戦力的にも不利すぎる。


 さらに付け加えるなら、ディアナと密着している俺の精神がやばい。なんかもう、色々と意識が接している部分に集中してしまっていて、息が荒くなっていないか心配になってくる。


 ……男って本当に単純な生き物だよな。


「そうそう、この男に何をしたのかをきちんと答えてなかったわね。とは言っても、簡単なこと。フェロモンを使っているだけよ」


「フェロモン……? でも、それは獣人特有の能力のはず。あなたの耳は人間と変わりない。尻尾も付いているようには見えない。それに、もし本当のことだとしても易々と情報を言うわけがない。嘘の情報を言っている」


「ひどいわね、これでも一応獣人よ? それに今まで一緒に行動してきた仲間の言葉を信じてくれないの? 何も知らずに死ぬのは可哀想だから、せっかく教えてあげたのに」


 あ、思い出した! そうだよ、この不快な匂いは王都でエリーサがしなだれかかってきたときに嗅いだあの匂いにそっくりなんだ。それにフェロモンは異性にしか効果を発揮しないから、この状況とも辻褄が合う。


 あの時は作用していなかったみたいだが、今は操られているかもしれない状態というわけだ。……操られている、のか?


「どの口が仲間なんて……。そもそもあなたが入ってきたときの記憶が曖昧。……なんで曖昧になっているの? おかしい。そもそもあなたの情報を全く知らない。素性の知れない人物が、Sランク冒険者になんてなれるわけがないし、パーティーを組む時だって多少の情報は交換するのに……。それに今まで不自然とさえ、思っていなかった」

 

「それこそが私たちを纏めている御方の力。普通の人間では、対処するどころか気づくことさえ不可能なことなのだから、そんなに落ち込む必要は無いわ。仕方のないことだもの」


 青い顔で愕然としているクラリッサさんを慰めるようにディアナが言った。

 

 あの御方というワードが聞こえてきたが、その人物こそがディアナの属している組織のリーダーで、魔王さんたちの敵ということだろうか。話を聞いていると、相当やばい力をお持ちのようだ。


 魔王さんの能力もそうだけど、どんどんインフレが激しくなってきている気がする。


「さてと、話すことはもうないわね。そろそろ準備も終わる頃でしょうし。目撃者は始末しておかないと」


 ディアナの組んでいた腕が俺から離れ、軽快なステップで一歩後ろに下がると、


「まずは、あなたたち二人から殺すわ。クラリッサはその後に私が直々に相手をしてあげる。魔法の使えない魔法職なんて、怖くないからね。さあ、やりなさい!」


 そう命令を下した。


 向こう岸でアルミラとミリカの二人が身構え、いつでも魔法を放てる姿勢を取る。クラリッサさんも体調が芳しくないはずだが、いつでも動けるように身を屈め警戒していた。


 こちらにいるSランク冒険者のダレンたちも各々武器を構えた。


 俺は本当に操られているのかを確かめるため、様子見がてら周囲を窺う。


 もし、ダレン達が橋を渡るようなら、後ろから追従し挟撃の形で無力化する。操られていようと関係ない。根性論で無理矢理行動してみせる!


 そして、……誰も動かなかった。


「……? さあ、やりなさい!」


 もう一度ディアナが言葉を発するが、誰も動かない。


「どういうことなの?」


「おそらく、彼はディアナのフェロモンに対抗している」


 アルミラの疑問にクラリッサさんが信じられないといった表情で答えていた。


「ちっ、そんな明るい展開は期待していないのよ。もっとドロッとした暗い展開の方が好みだわ。さっさとやりなさい!!」


 ディアナの声が先ほどよりも大きく響き渡った。しかし、誰も動く気配がない。


「フェロモンは、普通だったら人を操るほどの強力な効果はない。けれど、ディアナのように特殊な体質の持ち主なら話は別。個人差はあるけどその効果は強力で、かかってしまったら当人が破ることはできない。にもかかわらず、対抗できるのはすごいこと。本当に信じられない」


 向こう岸で解説役よろしく、クラリッサさんがご丁寧にフェロモンについて説明していた。


「頑張ってください! こちらからは何もできませんが、声を届けることくらいはし続けますから!」


「そんなやつの言うことを聞く必要は無いわ! 正常に戻って!」


「あんな女どもの言うことなんて聞くんじゃないよ! さっさと殺しな!!」


 もしかしなくても、みんな俺に声をかけてる? ……うん、俺だね。


 ディアナは後ろにいるから姿を見ることはできないけど、俺の方を向いている気がする。向こうの三人は言わずもがな。


 主語をはっきりとさせて欲しい!


 話の流れ的に、俺がアルミラとミリカの二人を殺すように命令されているというのは推測できる。でもさ、個人名を言ってくれないと間違って行動した場合、操られていないというのがディアナにばれて、場所的に袋叩きにされるじゃん。


 まあ、おかげで俺にフェロモンは効いていないのがわかったから良いんだけど……。


 さて、困った。この後、どうしよう。


「見てください! さっきまで無表情だったソウイチの顔が苦痛に歪んでいる気がします!」


「洗脳から自力で脱出しようとしている。すごい」


「ソウイチ……、信じてるから!」


 やめてくれ。マジ、やめてくれ。ただ、この後のことを考えて悩んでいるだけだから。そんな純粋な目でこちらを見ないでくれ。罪悪感が凄まじいことになってるから。


 そもそも操られているかどうかは、見てわかるとか教会で言ってただろう?! 

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