ダガー
アルミラが冒険者ギルドを去った後、俺は疑問に思っていることを口にした。
「魔王って、1人ではないんですか?」
「あ、ああ、魔王は4人いる。それぞれ東西南北の方面に分かれて居城を構えてる」
この世界には、魔王が4人もいるのか……。まあ、西の魔王なんて名前で呼ばれていたから、なんとなくそんな気はしていたが。
まさか、俺がこの世界に転移した目的はテンプレ通り、魔王の討伐か? だとすると、4人は多いよな。
「どこに行くんだ。ミリカ」
「決まってます。アルミラとパーティーを組んできます」
ミリカは立ち上がり、アルミラの後を追おうとする。
「おいおい、さっきの話聞いてなかったのか? 今のアルミラに何言っても無駄だと思うぜ。もう少し時間を置いてからでも……」
「あんな話を聞いて放っておくことなんかできません! このまま、放っておいたら取返しがつかなくなります!」
確かに危うい感じはしていた。あのままだと、魔王の幹部と戦う前に参ってしまいそうな気がする。
「はあ、そんなもん俺だってわかってる。ただ、今のあいつは聞く耳持たないぞ」
「そんなもの実力行使するまで!」
「実力行使って、おまえ……」
「つまり、私たちが強ければ問題ないということです!」
何という極論。でも、納得だな。
「アルミラの敵は魔王の幹部だぞ? 生半可な実力じゃ、あいつに認められるなんて無理だ。それでも、やるか?」
「私を誰だと思ってるんですか? 魔王を屠りし伝説の魔術師として歴史に名を刻む者ですよ? 魔王の幹部程度雑魚です!」
そういうミリカは堂々としており、とてもかっこ良く見えた。
「……本気のようだな。お前はどうするんだ? ソウイチ?」
はっきり言って、魔王の幹部とか超怖い。体力はあるにしても武術とかはからっきしだからな。相手の力も未知数だし。
「……聞いておきたいことがあります」
「何だ?」
「そのアスト=ウィーザの種族はわかりますか?」
話を聞く限り、正面から戦うのは無謀だ。ここは日本の知識を活かして、何か弱点または苦手なものでもわかれば……。
「すまん、種族はわからねえ。見た目は人間って聞いてるが……」
駄目か。魔王の幹部って役職なんだから、わかりやすい種族でいいだろう。
あれ? これ、難易度高すぎない? 弱点とか情報がほとんどない、魔王の幹部と戦闘とか。
……ま、いっか。まずはアルミラとパーティーを組んで、それから考えよう。すぐに戦闘になるわけじゃないし。少しずつ力を付けていけばいい。
「俺も、パーティーを組みたいと思います」
異世界に来て、冒険者になったならパーティーは組みたいよな。構成は偏っているが……。見た目は美少女だ。
俺たちはアルミラの後を追い、冒険者ギルドを出たが姿は見えなかった。
「手分けして探すか」
と、ゴンドさんの言葉で分かれて探していたのだが。
「俺が一番に見つけるんかい」
アルミラを探すついでに、自分の武器や防具を買おうと店に入った時に見つけてしまった。
どうやって声をかけるべきか……。
「あら? 先ほどぶりね」
と思っていたら、向こうから話しかけてきた。
「そだな。新しく杖でも新調するのか?」
「いえ、魔物を解体するときのダガーを新調しようと思ったの」
魔法が得意だというから、てっきり杖を買うものだと思ってた。
そうか、クエストの内容によっては魔物の部位が必要なんだっけ? ダガーを買うお金は考えてなかったな。
「古いダガーは、どうするんだ?」
「切れ味も悪くなってきたし、廃棄するわ」
「それ、貰うことできるか?」
お、これはタダで入手できそうだぞ。
「ええ、良いわよ? でも、結構使ってるから相当ガタが来てるわよ」
「それでも良いよ。貰えるだけ、ありがたい」
こうして、ダガーを無料で手に入れた。
じゃなくって……。
「なあ、アルミラ」
「何?」
「一緒に俺たちとパーティー組まないか?」
「さっきも言ったけど、そのつもりはないわ」
というか、ミリカが言ってた実力行使ってどういうことするんだ?
……よし。
「じゃ、俺の武器選びに協力してくれ」
「は? 何で、私が……」
「同じ冒険者仲間として、先輩からの意見が欲しいんだよ」
「……はあ、仕方ないわね」
冒険者仲間としてを強調していうと、アルミラは仕方なさそうに頷いた。
「で? あなたは何が使えるの?」
この店には剣、槍、弓など色々な武器が置かれている。
「……何も使えません」
「はあ? それで武器探しって……」
やばい。このままでは……。咄嗟に、近くにある武器を取って。
「いや、冗談だ。俺はこれが使える」
「……」
俺はダガーを持っていた。
そりゃ、彼女はダガーが並んでるところにいたんだから、俺が手に取れるものも決まってるよね。




