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お節介の報い

 きっぱりと悪びれる様子もないことから、二人が俺をどういう目で見ているのか理解した。いや、薄々は気付いていたけれども……。


 期待していた方向とは違うベクトルでの信頼のされ方だったが、これはこれでありなのかもしれない。俺らしい……俺たちらしくて良い関係だと思える。


 ただ一度操られてみて、本当に看破できるのかを試してみたい。ちょっとした好奇心からそんなことを思った。


「まとめるけど、私たちはSランク冒険者の誘いを断って王都には行かず、魔王と直接会って話を聞くってことで良いのよね。その話の内容によっては協力関係になる可能性があって、行動を共にするってことで」


「はい、私は問題ありませんよ」


「そうだな。もしかしたら活動拠点がこの街から魔王城に移るかもだけどな」


「魔王城……国の上位に位置する兵やSランク冒険者たちは遠巻きに見たとは聞いているけど、ある一定の距離からは近づけなかったって聞くわね。本当にあるのかしら。案外、城なんて大層なものはなかったりして」


うーん、鏡で見た感じだけど、内装は普通の日本にあるような家屋みたいに感じたからなあ。アルミラの言っていることもあながち間違いではないのかもしれないな。資源がどうのとか言っていたから、城なんて建てていない可能性が高い。


「さすがにあるんじゃないですか? 仮にも魔王なんて大層な肩書を名乗っているのですから、それはもう立派な城を持っているはずですよ。室内で魔法の練習をしても大丈夫なくらいの広さだと良いですね!」


「……もしかして、シンシアさんの花瓶を割ったのって魔法の練習をしていたから、とかじゃないよな?」


 ミリカの言葉から思い至ったことを口にしてみると、言われた本人はさっと顔を逸らした。


「そ、そんなことあるわけないじゃないですか! 室内で風の魔法を撃つなんて危険な行為を賢い私がするとでも?! 危うく飛んできた花瓶に当たりそうになったなんて、そんな馬鹿なことあるわけないじゃないですか!!」


「大きな声で言うのはいいんだが、きちんと俺の目を見て言ってくれ」


 風の魔法を撃ったなんて一言も発していないんだが。


 早口でまくし立てているミリカはその時のことを思い出したのか、冷や汗を浮かべていた。アルマの部屋を焦がした前科持ちなのに、まるで反省していないようだ。


「魔王の城に行くとしても絶対に室内で魔法をぶっ放す真似はしないでくれよ? 備品を壊したりしたら、どんなことされるかわからないんだからな」


「わ、わかってますよ!」


 頼むぞ、きっとそれによって機嫌が悪くなった場合の矛先は俺に向く気がするから。


「ミリカも気を付けなさいよ。でも怪我が無い様で良かったわね」


 アルミラは心配するかのようにミリカの方を向いて、そんな言葉をかけていた。……ん? 


「え、今、私”も”って言いました? アルミラも室内で魔法を撃って物を壊したことがあるんですね! 私だけじゃなくてほっとしました!」


 そこは安心しちゃいけないんじゃないのか? みんながやってるから自分もというのは、駄目な思考だ。 


「さてと、ソウイチ。アルマは今どこにいるのかしら? これからのことを聞く意味でもさっさと会いたいんだけど?」


 アルミラは自分の失言に気付いたミリカの言葉を無視し、アルマの居場所について尋ねてきた。


「悪い。俺も朝から探しているんだけど、どこにいるのかさっぱりで見つからないんだ」


「どこに行くとか、聞いてないのよね? ……アルマが泊まっている宿屋に行ってみようかしら」


「一応、朝早くに出かけたことは従業員から聞いたけど」


「でしたら、もう一度行ってみましょう。もしかしたら戻っているかもしれないですし。アルマには聞かなければいけないことがたくさんありますからね」


 満場一致でアルマの宿屋を訪ねることが決まった。朝に出かけているのならそろそろ戻ってきてもいい頃合いだろう。どこに行ったかは知らないが。


 相談所から出て教会の中を歩いていると目の前からゴンドさんが歩いてきた。なぜか、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべて。


「お、告白は終わったのか。どうなったんだ?」


「どうって、普通に了承してもらえましたよ。ただ、そこに行くまでに紆余曲折ありまして。そもそもアルミラとミリカの二人にはどう伝えたんですか? 何かを期待しているかのような感じでしたけど」


「ああ、それはな……ほぐぁっ!!」


 突然、ゴンドさんが真横に吹っ飛んでいった。


 いきなりの光景に呆気に取られていると、何かが壁に激突した鈍い音が響いた。真横を見ると数メートル先にはヒビの入った壁とその下で気絶しているのか、ピクリとも動かないゴンドさんが横たわっている。


「お、おい……」


 誰がやったのかを問うまでもなく、二人の仕業であることは一目瞭然だった。


 室内で魔法を使うなと言ったそばからこれかよ。意図がよくわからなかったが、こんなところで使う魔法じゃないだろうと注意をしようとしたのだが。


「大丈夫よ。あの人は頑丈だから、あれくらいなら致命傷にはならないわ」


「こういう広い場所なら、問題はなさそうですね」


 二人の顔が若干赤く染まっている。


「いや、そういうことを気にしているわけじゃなくてだな。確かにゴンドさんのことも心配だが、室内で魔法は使わないって言っていたのに即使うっていうのをだな」


「仕方ないでしょ。今回のは見逃してよ」


「アルミラの言う通りです。これは当然の報いなんですから。清き乙女の純情を弄んだ者の末路です」


 あまり触れてほしくなさそうだし、これ以上追求することはしないでおこう。俺の勘がそう告げていた。

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