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思惑

 ギルドを後にした俺たちは、昨日も訪れた喫茶店で話し合いをしようとしたのだが。


「なぜか、すごい視線を感じます」


「奇遇ね、私も感じるわ。これじゃ、ゆっくりと話すこともできそうにないわね」


 という結論に達し、落ち着いて話すことができて誰にも聞かれないような場所を探した結果。


「なんで俺の部屋」


 俺が宿泊している場所、この街に来てからずっと居ついているくつろぎの宿が選ばれた。


 この宿は一人が泊まるくらいならまったく不自由しないくらいの広さなのだが、三人もとなるとさすがに狭く感じる。人を招くのには適していないのだ。


 そういった説明もしたのだが、二人は意見を変えてくれなかった。


 俺の部屋を見ても大したものは置いてないし、つまらないと思う。にもかかわらず、半ば強引に提案してきたのはどういうわけなのか。


「へー、男の部屋なのに、意外と片付いているのね」


「ですね。もっとぐちゃーっと衣服や物が散乱していると思ってました。それといかがわしい感じの本とかも」


 好き勝手に言ってくれる。男だからといって、部屋の整理整頓をしていないイメージは偏見だ。これでも綺麗好きなのである。


 ……ただ単純に物が無いだけとも言えるが。


 ふむふむと頷いている二人に座るよう促した。部屋の中で立ったままでは話を始められないからだ。あとは若干の気恥ずかしさもあったためというのもある。あまりまじまじと観察されると居心地が悪い。


 元々この部屋に備え付けられていた、小さな木製の丸テーブルを挟む形で絨毯の上に腰を下ろした。ちなみに二人はベッドの上だ。俺は紳士なので、女性を床に座らせたりはしないのだ。


「なんか、ソウイチの視線がいやらしいんだけど。私の自意識過剰なのかしら?」


「襲われないか心配してしまう目つきですね」


「失敬な。こんな紳士然とした男の視線がいやらしいとか、冗談もほどほどにしてくれよ。大切な仲間をそんな目で見るわけないだろう」


 自分的に綺麗な目を心がけて、言葉を投げかけてみた。


「全然信じられないわね。ソウイチと二人っきりになったら、危ない気がしてきたわ」


 されど、俺の言葉は二人に届かず、ジト目が返ってくる有り様。


 そりゃ、俺も男なわけですし、女を見る目に下心が全く無いか、と問われたら答えは否であり、ほんの少しだけ、この下から女体を見上げる状態に心が癒された、というのが紛れもない真実ではある。


 しかし、俺は無理矢理なんていう真似はしないのだ。よって、無害である。


 こほんと咳払いをし、先ほどのことを話そうとして、はたと気づいた。


 一応二人はお客様だ。突然のことではあったが、飲み物を出していないのは失礼だったな。


「何か飲むか? 水くらいなら出せるが……」


「……今は遠慮しておくわ」


「水って……。女性を招くんですから、上等な飲み物を用意しておいてくださいよ。いくらパーティーメンバーとはいえ、もう少し気を遣って欲しいんですけど。ケチ臭いと嫌われますよ?」


「ついさっき決まったのに、そんな準備できるわけないだろう。あと、ケチとはなんだ。倹約家と言ってくれ」


「お金を持ってるのに使わないなんて、世の中が回らなくなります。貯めるだけじゃいけません。もっとパーッと使っちゃいましょう! 私のように大きな買い物をするべきです!」


 なぜこの少女はそんなに俺の金を使わせようとするんだ。


「お金の使い道については後で考えとくよ。今はそれよりも王都に行くかどうかの話だ。疑問に思ってたんだけど、アルミラはなんでさっきあんなに警戒してたんだ?」


 このままではミリカに延々とお金の使い道について語られそうだったので、無理矢理にでも話を進めるべく、アルミラに問いかけた。


「逆に私から聞きたいんだけど、ダレンの話に疑問を持たなかった?」


「疑問? いや、このまま王都に行けば人生勝ち組くらいにしか思わなかったけど……」


「私もです。王都で冒険者のランクを上げ、ゆくゆくは魔王の討伐に繰り出して、歴史に名を刻むくらいしか考えつきませんでした」


 色々あって後回しになっていたが、魔王を倒すことも考えないといけないんだよな。さもないとこの世界は滅びを迎えることになる。……あれ、今自分の心の中で反芻した際、「この世界の滅び」という単語に妙な焦りを感じた。


 この世界で生活をしているから、当たり前の感情ではあると思うのだが、なにか違う感じもする。


「ちなみにミリカは冒険者になってから、拠点を替えたことってある?」


 アルミラの問いかけに首を横に振るミリカ。


 思考は後回しにして、今は話に集中しよう。


「普通なら、拠点を替えるには色々と手続きや準備が必要なのよ。ギルド側としては、できれば移動させたくないから。どこの地方もそうだけど、冒険者という存在は貴重なの。魔物の知識や倒すことのできる人材の流出は避けたいはずよ。それなのに、簡単な手続きだけで移動できるという点に不信感を覚えたの」 


「でも、Sランク冒険者が直々にお願いすれば、了承しないわけにはいかないんじゃないか? それに俺たちは魔王の幹部を倒したわけだし、将来有望な若者を国の中心に招くのは普通なんじゃ?」


「そうね、普通ならそうなんでしょうけど……。ここ最近、この街で起こった出来事を思い出すとそう感じられないのよ」


「どういうことですか?」


「Aランクの魔物に魔王の幹部までもが出現した。今は倒されていないけど、他にもそういった異常が起こらないと、確実には言えない。そんな中、それを倒せる人物をここから遠い王都に行かせると思う? 私がギルドマスターなら、そんな貴重な戦力を手放したりしないわ。何かと理由をつけて、この街に留まらせたいと考える。少なくとももっと期間を設けて、周辺の異常がないことを確認するまではね」


 この街を守るギルドマスターならどう考えるか、か。


「他の戦力が派遣されてくるなら話は別だけど、そんなに急ぐようなことだとは思えないし。あとは、勘かしらね」


「勘って……」


「まあ、王都に行ったからって何かあるとは限らないけどね。変なことはされないでしょうけど、考えておいた方がいいでしょ?」


 言われてみればそんな気はする。


 少し考えてみよう。俺たちのことを国が欲しがる理由って何がある? 冒険者として大成させるため? 国を守るため? それとも……。


 あー、こういった駆け引きは苦手だ。頭が破裂しそう。

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