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ウェイトレス

「あの時のバーテルの様子は半天使ということで説明するとして、この件はとりあえずいいかな」


「説明って、誰かにするんですか?」


「うん? ああ、言ってなかったね。この街のギルドマスターが集まって行う会議が、この後にあるんだよ。そこで今回の件について説明するんだ。……事件のあった当日に、じゃんけんで負けてなければ僕がすることはなかったんだけどね」


 会議の前に話をすることができたのは、タイミングが良かったな。あまり新しい情報は無かったようだけど、もし会議が終わった後に俺たちから新しい情報が出てきたら、二度手間になるだろうし。


 あれ、最後に何て言った?


「……じゃんけん?」


「あ、今のは聞かなかったことにして」


 あの大変な時に、この人たちは何をしていたのだろう。


 ジト目でイヴァンさんを見ていると、扉をノックする音が聞こえてきた。

 

 扉を開けて現れたその女性から、秘書のようなできるキャリアウーマンといった印象を受けた。切れ長の目で若干怖く感じるが、視線を下にスライドさせると包容力がありそうな優しい感じに変わった。黒いスーツのような服を押し上げて主張する、二つの丘がそう思わせるのだ。


 この世界は、大きい人が多いな。


「失礼します。ギルドマスター、お時間です」


「あれ、もうそんな時間? 会議が始まるのは、もう少し後じゃなかったっけ?」


「……各ギルドマスターが集まる前に、色々準備しておきたいから早めに向かおうとおっしゃっていたではありませんか。ぼけてないで、さっさと仕度してください」


 不機嫌そうな声でイヴァンさんに伝える姿は、時間になっても仕度をしていないギルドマスターに苛立っているように感じられる。


「あー、忘れてたよ。ありがとう」


「忘れないでください」


「そんなに怒ると、ただでさえ怖い顔がさらに怖くなっちゃうよ?」


「怖い顔で悪かったですね」


「むすっとしてないで、笑顔にならないと彼氏の一人もできないよ?」


「むすっとしておりません。至って普通の顔です。あと、余計なお世話です」


 からかうイヴァンさんの言葉に対して、秘書のような女性が冷静に返しているやりとりは漫才のようだ。彼氏云々の話の時には、本当にむすっとした感じがしたが。


「時間を勘違いしてた。呼んでおいて申し訳ないけど、これで僕は失礼するよ。他に何か聞きたいことはあるかい?」


 最後にイヴァンさんは俺たちに対して、そう聞いてくるが特に聞きたいこともなかったため、ギルドマスター室を後にすることにした。




「あ、そういえばあの三人組はどうしたんだろうな?」


「あの三人組って、エリーサと男二人の事? 今更過ぎない? 私はこれにしよっと」


 エリーサ達三人は元気だとイヴァンさんは言っていたが、あの後どうなったのかふと疑問に思った。敵同士であったとはいえ、行動を共にしていたからか気になるのだ。


 クレアシオンの関係者ということで、牢屋にでも入れられてるのかな?


「ギルドマスターに聞いておけばよかったじゃないですか。私も選び終わりましたよ」


「いや、さっきは思いつかなかったんだよ。さして重要なことでもないし。……うーん、悩む」


 ミリカがそんなことを言ってくるが、絶対に知りたいというわけでもない。


「思い出しました。私の魔道具、エリーサさんに貸しっぱなしです。私も注文決まりました」


 ギルドの1階には食堂がある。そこでお茶をしようということになり、注文を決めているのだが、メニューが多く中々絞れない。


 おすすめ、とかあればそれを選ぶのに。


「あとは、ソウイチだけよ。早く注文決めてね」


「……よし、これに決めた。すいませーん!」


 悩みに悩んだ末に、値段が一番安い飲み物を注文することにした。


 お財布がピンチなんだよな。


 近くでテーブルを拭いていた後ろ姿の獣人のウェイトレスさんに声をかけると、すぐにこちらに向かってくる。


「ご注文はお決まりですか? お客様?」


 ぎこちない声で接客をしてくれる。新人さんだろうか。

 

 注文を伝えようとしてメニューから顔を上げ、そちらを見ると同時に驚愕した。


「……転職したのか?」


「うるさいわね。早く注文言いなさいよ」


 エリーサがフリフリのエプロンにカチューシャをつけながら、ウェイトレスの真似事をしていた。


 獣耳に獣尻尾にエプロン。見た目はマッチしているが……。


「お客様に対して、そんな言葉で良いのか? もっと柔らかい言葉を意識したほうが良いんじゃないかな?」


「うぐっ……。あのむすっとした顔の女と同じことを」


 言葉遣いがいただけない。一部の人には人気だろうが、あいにく俺は一部に入らない。


 エリーサがここで働いているということは、男たちもいるのだろうか。周りを見渡してみるが、ウェイトレスをしているのは女性だけだ。


 別のところで働いているのかと、視線をあちこちに向けるとカウンターの奥で洗い物をしている男二人の後ろ姿が見えた。


 なるほど、手元において監視しようというわけだな。


「さっさと、注文を言ってくださいませ。お客様?」


 引き攣った笑顔で言い直すが、全く愛想を感じない。


「ソウイチ、早く注文を言ってください。喉が渇きました。からかうのはその後で良いじゃないですか」


 からかうこと自体は止めないのか。


「よく似合ってますよ、エリーサさん」


「いいから、早く注文言いなさいよ!」

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