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半天使

 ……俺の感動を返してくれ。


「バリデ氏は、いつも日記を大事そうに持ち運んでいるそうだよ。実験場で倒れた拍子に落としたのかもしれないね」


 サインじゃなくて、名前を書いてくれればいいのに。あれ、落書きなのかと思った。


「これは本人に返しておくよ。それじゃ本題に入ってもいいかい?」


 手に持っていた日記をテーブルの端に置き、真剣な表情で問いかけてくるイヴァンさん。


「王都の住人から魔力を無理矢理吸い取り、神を人工的に造ろうとしたクレアシオンという組織。こんな組織は今までに報告されたことがなかったから、情報が欲しいんだ。危険な思想を持っているし、残党がいるのなら逃さず捕縛したい」


 民間人に危害を及ぼす組織を野放しにできない気持ちはわかる。しかし、俺たちだってあの事件の時に初めって知った組織だし、多くの情報は持っていない。


 ……ミリカはどうなのだろうか? バーテルには、一応面識はあったはずだが。


 アルミラの横に座っているミリカを見るが、自分から言い出そうとする気配はない。


 ミリカのことだから、何か情報を持っていたら嬉々として話すだろう。なら、そんなに情報は持っていないのかもしれない。


「それなら、本人たちに直接聞けば良いんじゃないですか? 嘘を見抜く魔法を使えば、黙秘されない限りは聞き出せると思うんですけど。俺たちは、そんな多く情報を持ってるわけじゃないですし」


「それができれば良かったんだけどね。今、彼らは昏睡状態なんだよ。事情を聞こうにも聞けない。幹部たちと研究所内で気絶していた構成員がそんな状態なんだ。倉庫にいた三人は元気なんだけど、下っ端の下っ端だったらしくて、大した情報を持ってなかったんだ」


 昏睡状態? バーテルだけなら、なんとなくあの状態の副作用とかで説明はつくけれど、他の幹部たちもなのか?

 

 ……下っ端の下っ端に関しては、触れないでおこう。


「バーテルとかいう男ならソウイチが倒したからわかるけど、他の人たちも?」


 疑問を抱いているのは、俺だけではなかったようだ。アルミラ達も首を傾げている。


 ……あれ、今の言葉におかしいところがあった気がする。俺が倒したから、何だって?


「神を造ろうとした代償とかでしょうか? 関係者全員というのも奇妙な感じですが……。そもそも、過去に神を造ったなんて聞いたことがありませんから、何が原因なのか推測の域を出ないですね」


 本人は否定しているけど、きっと長生きしていると思うアルマがそう言うってことは、昏睡の原因はわからずじまいだろうな。


 ……待てよ? 確か、バーテルは、条件さえ整えば簡単に神は造れると言ってたよな。


「……それが、過去にあったみたいなんだよ」


「え?」


「バーテルの日記に書かれていたんだ。四百年前に人々の祈りで神が造り出された記録を発見したって」


「四百年前……」


 過去に造り出された実績があったのか。そして、その記録を運良く発見したバーテルは、神を造り出せる確信を持ったと。


 左手の人差し指を頬に軽く当て、考えている素振りを見せるアルマ。


 いつも何かを考えてるときには、同じ動作をしているな。癖なのか、それとも何か意味があるのか。今度、考えるときに真似してみよう。


「……その記録をどこで発見したのか、書いてありましたか?」


 ミリカがイヴァンさんに尋ねるが。


「残念ながら、場所の明記はされていなかったよ。ただ、この王国内ではないね。日記に書いてあることが合ってるなら、帝国のどこかということになる」


 正確な場所までは、さすがに書かれていなかったようだ。


「帝国ですか?」


「元々は帝国の裏で、目立たないように活動してたみたいなんだ。でも、構成員の中に帝国の密偵が潜んでいたらしくてね。場所を移した結果、王都に来たという経緯が日記に書かれていた」


 帝国はこの組織を知っていたのか。国家間の難しいことはわからないが、こんな組織がいるよ的なことは共有し合った方が良い気がする。こんな危ない組織だし。


 というか、日記に大事なことを書きすぎじゃないか? 落とした場合とか、考えなかったのだろうか。世の中には人の日記だろうと、躊躇なく読む人間だっているというのに。


「さて、そろそろ君たちの持っている情報を教えてもらえるかな?」




 あの時の会話を思い出しながら、俺たちの知っている情報を伝えたが、日記にも書かれていた内容らしく、真新しい発見は無かったようだ。


「ありがとう。あとは、本人たちが起きたら、直接問いただしてみるよ。あ、それともう一点。僕には見えなかったけど、バーテルに翼が生えていると言ってたよね。推測でも構わない、あれのことについて意見が聞きたい。翼を生やす魔法なんて聞いた事がないし、僕には見えなかったというのも気がかりなんだ」


「私とアルマも翼は見えなかったのよね」


「ええ、そうですね。実物を見ていたのはソウイチとミリカだけです」


 意見が聞きたいと言われても……。


 俺とミリカに注目が集まる。


 アルマが考えるときの仕草を真似しつつ、頭を働かせる。翼が生えていて、神に関連している存在と言ったら。


「……天使」


「天使? あの童話のかい?」


 そういえば、図書館で読んだ童話にも天使は登場していたな。


「神に関連していて、翼が生えてる人間なら天使かなと思っただけです」


「……あの童話の天使には、翼が生えている描写はなかったような気がしますよ。小さい頃に読んだきりですけど、そこだけは覚えてます」


 ミリカの記憶力はすごいな。つい最近読んだけど、そんな細かい描写までは覚えてないぞ。


「でも、天使という名称は使えるかもしれない。神を造ろうとした組織だし、その神の使いという意味なら、人が天使という存在になる可能性もありそうだ。あの時は完全に神は造られてなかったから、半分天使の状態ということかな」


 半天使。すっごい厨二感がする。

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