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図書館

 俺は冒険者ギルドにクエスト達成の報告をしに戻ってきていた。


 パーティーの件は、アルミラのことも踏まえて明日の午前中にまた冒険者ギルドに集まるということになった。


 アルミラもミリカもとても美人で、むしろこちらからお願いしたいくらいだ。……お願いしたいが、2人とも最初の印象があまりよろしくないんだよな。アルミラはきつそうだし、ミリカは俺を馬鹿にしてきそうだし。


 ……明日決めよう! 明日の俺が何とかしてくれるだろ、うん。


「さて、報告して次の依頼を受けるか」


 気持ちの切り替えが大事だ。


 冒険者ギルドの扉を開け、受付に向かった。




「えっ! もうクエスト終わらせてきたんですか?」


 こんなに早くクエストを終わらせるとは思っていなかったのか、ほんわかさんはとても驚いていた。


「……確かに、終了してますね。期間は1週間程度の予定と書かれていましたが」


 そんなに長い期間だったのかよ! 聞いてなかった俺も悪いが、一言あっても良かったのでは?!


「こほん、では手続きをします。早期達成をされましたので、元々の金額に上乗せした金額となります。……合計で7万ルドとなります」


 1日で7万も稼げちゃったよ。予定期間が1週間だから、1日当たり1万計算か。あ、でも早期達成分の上乗せもあるんだったか。


「どうぞ、お納めください」


「ありがとうございます」


 細かく考えず、貰えるものは貰っておこう。


 とりあえず、これで宿をとれるな。昼飯が500ルドだったことから、相場は日本と変わらないのは確認済みだし、今日は安心して休める。


 まだお昼過ぎだし、もうひとつクエストやっとくか。


 ……字が読めないんだった。


「……すいません。もう1つクエストを受けたいので、何かありますか?」


 ほんわかさんに申し訳なく思いながら、聞いた。


「え? また受けるんですか?」


「ええ、まだ時間はあるので」


「……さすが、体力に自信があると言っていた方ですね」


 なんだ? シンシアさんに引き続き、ほんわかさんにも引かれてるような。


「では、こちらをどうぞ。”図書館の蔵書整理”です」




「大きいな。この街の図書館……」


 俺の目の前には2階建ての大きな図書館が佇んでいた。


「おお、本がたくさん! ……当たり前か、図書館だしな」


 図書館内に入る前から多そうだなと予想していたが、実際に見てみるとその多さは圧巻だ。


「えーっと、依頼主は……? 司書さんにでも聞くか」


 出入り口近くのカウンターに向かう。


「すいません。蔵書整理のクエストを受けた冒険者ですが、依頼主さんはどこにいますか?」


 図書館ということもあり、声は抑えめに聞いてみた。


「うん? あー、まさかこんなクエストを受けていただけるとは、とても助かるのう」


 カウンターにいたおじいさんはどうやら、依頼主のようだった。


「何、蔵書整理とは言っても簡単じゃ。倉庫にある本を棚に綺麗に並べてくれたらええ。わしについてきとくれ」


 そういうと、おじいさんはカウンター席から立ちあがり、しっかりとした足取りで歩いていった。


「それにしてもクエストを出しといてなんじゃが、受ける冒険者がいるとは思わなんだ。ありがとうのう。もう、わしらみたいな年寄りにはきつくてのう」


 歩きながら言うおじいさんはとても嬉しそうだった。


「若い人はいないんですか?」


「今は、王都の方に行ってるのう。この図書館には置いてない魔導書を探しに行くと言っておった。……一応、1人は残っているんじゃがドジでのう。整理しているはずが、どんどん散らかっていくのじゃ」


 ……あー、それでクエストを出したのか。そのドジな人は仕事が務まるのだろうか?


「ただ、一生懸命にやってるからみんな暖かい目で見守ってる状態じゃな。それに知識だけはすごいものがある、今後に期待したいところじゃ」


 好きこそ物の上手なれってことか。


「おっと、長話になってしまったのう。ここが倉庫じゃ、中にいるものに聞いてくれればどのようにすれば良いかわかる。頑張ってくだされ」


 いつの間にか、倉庫の前に着いていたようだ。おじいさんはそういうと、またカウンターの方に歩いて行ってしまった。


「じゃ、早いとこ仕事に取り掛かるとしますか」


 俺は倉庫の中に入っていった。


「倉庫って暗いイメージあったけど、案外明るいもんなんだな。そして、広い」


 倉庫の中は意外と明るかった。本棚もあるが、収納されずに平積みになっている本も多い。


『おう、兄ちゃん。あんたが蔵書整理に来た冒険者か?』


 倉庫内から男の声が聞こえた。


「はい、そうですけど……どちらにいらっしゃるんですか?」


 辺りを見回すが人はいない。


 どこにいるんだ?


『兄ちゃんの目の前にいるぜ?』


 目の前? 高く詰みあがった本しかないが……まさか。


「また、本が喋ってるのか?」


『お、正解だ。兄ちゃん、”また”ってことは、喋る本に以前会ったことがあったのかい?』


 さすが、異世界。喋る本も当たり前なのか。

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