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 必ず合流すると言ってしまったが、今からでは間に合わない気がする。それに魔法陣を破壊し終わっても俺たちが来なかった場合、きっと二人は研究所に戻ってくるだろう。すれ違いになってしまう可能性を考慮して、研究所で待機していた方が良い気がする。


 戦闘をして疲れたからということではなく、単純に無駄を省きたいが故の判断だ。


「敵を倒し終わりましたが、合流しに行かないんですか?」


 だから、ミリカからそんな不思議そうに問いかけられたとしても自信を持って言い返せる。


「そうかもしれませんが、あと二本ありますよ。ここから近い場所であれば、間に合うんじゃないですか? 何もせずにいるだけなのは、二人に対して申し訳なく思うのですが……」


「俺だって今も王都中を駆け回ってくれている二人に対して、悪いとは思ってるよ。けど、誰もいない間にこいつらが目を覚ました場合、また悪さをするかもしれない。そのためには監視が必要だ。だから、俺たちは何もしていないわけじゃないんだ。これも大切な仕事なんだよ」


 適材適所というものだ。魔法陣はアルマにしか破壊することはできないし、魔力の流れを読むのだってアルミラにしかできない。俺は力仕事、ミリカは魔法による攻撃。役割分担した結果だから、何も気に病む必要はないということだ。


「なら、仕方ありませんね。しっかりと仕事をすることにしましょう」


「そうだな。大事な仕事だからな」


 納得してくれたみたいで、何よりだ。


 …………会話が途切れてしまった。


 二人して、夜空を見上げる。恋人同士ならロマンチックなシチュエーションだろうが、ミリカとはそんな関係じゃないし、ロマンの欠片もない魔法陣が夜空に描かれている。


 他の人達はどうしたのかと、後ろを見てみると集まって倉庫の方で何やら話をしているみたいだ。


 この場には、地面にうつ伏せで倒れているバーテルと俺たちしかいない。


 あ、一本光の柱が減った。向こうもあと少しで終わりそうだな。


「……聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」


 ボケーっとそんな光景を眺めていたら、ミリカから話しかけられた。


「おう、何でも聞いてくれ。答えられる範囲でなら、何でも答えるぞ」


 沈黙を破ってくれたため、ここぞとばかりに食いつく。ここから俺の話術で盛り上げて暇つぶし……もとい、この空気を変えて――。


「親って、どんな存在なんですか?」


 答えづらく、盛り上げにくい質問が飛んできた。


 王都の夜空を見上げながら、ミリカが発する言葉にどう返答したものかと悩んでいると。


「私の記憶は、ある部屋から始まってるんです。その前の記憶は一切なく、いきなり始まったんです。ですが、当時の私は疑問など思わず、それが当たり前だと思ってました」


「何か、きっかけがあったんだな?」


「そうです。私のお世話をしてくれた女性の研究者がいたんですけど、その人が読んでくれた絵本に家族の絵が描かれてたんです」


 なるほど、それがあったから家族の……自分の両親のことを意識し始めたのか。


「私は質問したんです。私のお母さんとお父さんはどこにいるのか、と。あの時の困ったような笑顔は、きっと全部知っていたんでしょう。良い子にしていれば会えるとしか言われませんでしたが、会えるわけがなかったんですよね。元々いなかったんですから」


「ミリカ……」


「自分の両親について考えるようになったのは、それからです。自分でもなぜこんなに執着しているのかはわかりませんでしたが……」 


「もしかして、魔王を倒して名声を手に入れようとしていたのって」


「はい、その通りです。魔王を倒すことができれば、私の名前を世界に知らしめることができる。そうすれば、私の元に来てくれる。そう信じていたんです」


 淡々と話してはいるが、きっと心の中では悲しい想いをしているはずだ。普段と変わらない様子なのも、俺たちに心配をかけまいと、我慢しているのだろう。


「ソウイチ、親ってどういう存在なんですか?


 再度問われた内容は簡単に答えられるものではない気がしたので、考えるため時間がかかったが。


「一般的には、自分という個体を産みだした存在になるんじゃないか?」


「……なら、私の親はそこで寝っ転がってる男ということになるんですね」


 自分のことを失敗作と呼んだ男を親とは認めたくないのか、少し落ち込んだ様子を見せる。


「ただ、俺が思う親というのは、子供を守り育てる存在だ。間違っても、子供のことを否定するようなやつは親とは呼びたくない。ミリカを今まで育ててくれたのは、誰だ?」


「師匠たちです」


「なら、シンシアさんたちが親になるんじゃないのか?」


「でも、師匠とは血がつながってませんし、子供だっているんですよ」


「血のつながりだけがすべてじゃないと思う。子供だって、姉妹で通用するさ」


「年齢が離れすぎな気が……」


 そんな些細なことは気にするな。


「自分という個体が産まれるというのは、誰かに自分という存在を認められた時。俺はそう思う。現に王都へ来る前、シンシアさんはミリカのことを心配していただろ。親ってのは、そういう存在だ」


 なんてクサイ台詞なんだろう。すごい自己嫌悪が襲ってきた。


「……ソウイチが格好つけていると、おかしいですね。父親宣言をしていた時の方が合ってますよ」


 さらに追撃として笑われると、心へのダメージが深刻なんだが……。


 あれは忘れて欲しい。


「ソウイチは私を認めてくれますか? 私を産んでくれますか?」


「ああ、俺で良ければ認めるよ。この世界に好きなだけ、産まれてこい」


 ニヤニヤとからかうように言ってくるミリカに、ヤケクソ気味に応じていると。


「向こうも終わったみたいだな」


 王都を照らしていた最後の光の柱が消失し、夜空の魔法陣が消えた。残ったのは、星と月の明るさだけだ。


「人工物が消えて、自然のものになりましたね」


 その光景を見て、どこか嬉しそうにミリカが呟いた。

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