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「破壊完了です」


 アルマの報告と同時に部屋の青白さが無くなった。これですべての魔法陣が破壊されたことになり、王都を襲った異変も解決だろう。


 ちなみに、ポツンと一人寂しく部屋の中央で佇んでいた幹部の男は、うつ伏せで気絶している。来たことがばれた段階で隠れていても意味は無い。そう判断したアルマがゴーレムを突撃させた結果だ。


 ここが魔道具開発室であること、あのローブの男はその部長であるヘリオであることが事前にカンナさんから説明されている。厄介な魔道具を多数所持しており、対人戦闘の経験も有しているらしいが、使われる前に倒してしまえば問題ない。


「優しい人だったんですけどね。まさか、研究所に前々からこんな細工を施しているなんて……」


 倒れてローブが捲れ、素顔が露わになっているヘリオという研究職員を見ながら、リカさんが悲し気に呟く。


 長い間一緒に働いていた人物だ。カンナさんと同じ立場ということもあり、きっと尊敬の感情もあったんだろう。


「もしかしたら、不満があって組織に入ったのかもしれないな。理想郷。そこに求める物があったんだろう。同じ立場として、もう少し相談に乗ってやれれば良かったと思う。悔しいよ」


 カンナさんも悲し気に呟いていた。どちらの悲しみが大きいなんて比べるものではないだろうが、同じ立場の人だからこそわかる気持ちもあるのだろう。

 

「カンナさん、リカさん……。過去は変えられません。これからをどうするかですよ。きっと、この方も更生してくれます。魔道具を開発する人は純粋であり、素直であるからこそ大成するんです。ここまで上り詰めるには、並み大抵の努力では無かったでしょう。忍耐強い人のはずですから、待っていればまた肩を並べられる時が来ますよ」


 魔道具を開発しているアルマだからこそ言える言葉だ。カンナさんは一つ頷くと、悲しげだった表情は綺麗さっぱり無くなっていた。


 良い話だな。


「過去は変えられないとしても、謝っておきたいことがあります。もしかしたら、私のせいかもしれませんから。気絶しているので聞こえないかもしれませんけど、言わせてください」


 リカさんもアルマの言葉が心に響いたようで、気絶しているヘリオに謝罪を述べる。


 組織に入ったのには理由があるのだろうが、リカさんのせいということは無いと思う。少しの付き合いだが、嫌われるような人物ではないと俺は感じている。人それぞれの感じ方があるから、絶対とも言い切れないが。


 それにしても謝りたいことって、何だろうか?


「躓いてこけた時、三日三晩かけてやっと完成したと言っていた魔道具を誤って壊してしまってすいません。魔力回路を誤ってショートさせて、今までの研究成果をまとめた書類を燃やしてしまってすいません」


 う、うーん……。言っちゃ悪いが、ドジすぎる。苦労して、やっと得た成果が悉く破壊されているこの男が哀れだ。


「檻を解放した瞬間、魔物に襲い掛かられそうになっている私を大慌てで助けてくださったこともありましたよね。手に持っていた魔道具を投げ出してまで、助けていただいたこともあり、言い出せなかったのですが……。あれは、スキンシップをしていただけなんです。別に襲われていたとかでは無かったんです。すいません」


 ……擁護できない。全てではないと思うが、あの組織に入った理由の一端にはなってそうだ。


 リカさんの謝罪という名の追い打ちを極力聞かないようにしつつ、王都を襲った突発的な異変を解決できたことに対する満足感を得ていると、廊下から驚いた声が聞こえてきた。


 その声の主は、アルミラとアルマ。何かあったのかと視線を向けると。


「まだ、安心するには早そうよ。研究所内の魔法陣は破壊できたから良いけれど、街中の光の柱は消えてないわ。それどころか大きくなった感じがする」


「上空の魔法陣も健在です。推測ですが、あの光の柱がある場所にも魔法陣が設置されているかもしれません」


 全部終わったと思ったのに、まだ残っていたのかよ。もしかしたら、ミリカが街中で見かけた人物はバーテルという男で、あながち間違いでも無かったのかもしれないな。


「ただ、魔力の流れらしきものはかなり微弱になってる。一番の元は、ここで間違い無かったみたいね」


 人々から吸い上げる魔力が少なくなったということだろうが、依然として問題は解決していない。光の柱は七本。分担できれば楽だろうが、魔法陣の破壊はアルマしかできない。


「なら、片っ端から……」


 地道に処理していくことを提案しようとした瞬間、爆発音が聞こえた。


 突然の出来事が多すぎる。もっと、優しく順序立ててイベントが起きて欲しいものだ。


「この音は研究所の門の方からかな? 窓からうっすらと煙が見えるよ」


 カンナさんの言葉を聞き、研究所の門へ急ぐ。あそこには……気絶していた研究所の職員がいる。無害な一般人を守る義務が冒険者にはあるのだ。




 研究所本館と門の間には先ほどの爆発があったせいだろうか、小さなクレーターができていた。だが、それよりも驚いたのが。


「ギルドマスター!?」


 グランデシャトーのギルドマスター、イヴァンさんが戦闘中だったことだ。


 その相手はさっき実験場で右手と肩を粉砕し、吹き飛ばしたはずのバーテル。大けがを負わせたと思ったが、そんな雰囲気は微塵も感じさせない堂々とした立ち姿だ。神の瞳も解放状態で万全の体勢である。


 そして、決定的に違う部位があった。


「翼?」


 半透明の翼が見えるのだ。正面から見ているので、背中から直に生えているのかは確認できないが、実体は持っていないように感じる。


 最初は中ボス程度にしか感じなかったが、今はもう立派なボス的な立ち位置だと断言できる。


 訳が分からないうちに事態が次々に進展していくので、もう疲れてしまった。夜も遅いし、宿に帰ってさっさと寝たいよ。

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