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不意打ち

 リカさんに案内され、研究所内を進む俺たちの前に様々な色のローブを纏った集団が立ちふさがった。随所に三人ずつ配置されていたが、アルマが召喚したゴーレムにより一蹴されていた。


「……アルマのゴーレム強いな」


「殺してはいないので大丈夫ですよ」


 いや、そこは心配してないんだが……順調に進めているし、問題ないか。


 侵入者を迎え撃つため、組織の連中が配置していたであろうローブ集団は遭遇するなり、口上を述べてから戦闘に入ろうとしていたようだが、それを無視してゴーレムが薙ぎ払っていく光景は可哀想だった。


「ねえ、アルマ。もしかして、魔法を使う時って腕輪を外さないとうまく発動しない?」


「その腕輪は魔力を抑える役割をしているので、慣れていないと発動するのに時間がかかると思いますよ。魔法制御を鍛えるために開発したものですので、意識をしないと威力も弱まってしまいますから注意してください」


「……わかったわ」


 アーティファクトの指輪だけでも魔力の制御が難しいという話だったし、その上腕輪までとなると発動は困難なのだろう。顔は見ていないが、声が沈んでいたためそう判断した。


「みなさん、この扉の先が実験場になります」


「よし、なら飛び込んで迅速に処理してしまおう!」


「あ、少し待っ……」


 俺は実験場へと続く扉にあった取っ手を掴み、無造作に開け放とうとして。


「あれ?」


 力が入りすぎていたのか、扉を破壊してしまった。破壊する前に聞こえた声の主であるアルマの方を向くと、俺を制止しようとしたのか、手を突き出した状態で固まっていた。


 両開きの扉だと思っていたが、スライド式だったらしい。だが、今は緊急事態だ。


「お、おのれ、まさか、向こう側から攻撃を受けるとは……。俺たちの動向を把握していたようだな」


 さも敵から攻撃を受けたとばかりに吐き捨て、実験場へ突撃する。


「「「えー」」」


 後ろから引いてるような声が聞こえるが、一刻を争う。


 後で謝りますし、弁償もするんで勘弁してください。


 実験場に入った俺の目に映ったのは魔法陣だった。床全体に映し出されたそれは、青白い光を放っている。室内だと思っていたが、どうやら天井が開閉する構造になっているようで空が見える。こんな状況でなければ、ずっと見ていたいと思わせる神秘さがそこにはあった。


 部屋の中央には縄で縛られ座らされているカンナさんとオークの姿、そして今回の騒動の原因だと思われる組織の幹部六人を発見する。カンナさんたちに外傷は無さそうだが、操られてしまっているのか、こちらに顔を向けはするものの何も反応していないようだった。


 カンナさんが俺たちを見たら、助けが来たと喜んでも良いはず。それなのにあの様子は……。くっ、遅かったか。すぐに助け出します。


 俺は心の中でそう意気込み、光っている本を持つ人物目掛けて突進する。その男の前で急停止した時に風が当たったのか、近くにいた不自然な髪型をしていた人の髪が吹き飛んだ。


 丸い頭が青白い光を反射している光景が不意打ちすぎて、気を取られてしまった。


 さすがは神を造ると豪語する組織。ユーモアに溢れてやがるぜ。


 俺はすぐさま呆然と立ちっぱなしの男に手を伸ばし、一瞬のうちに本を奪う。


「は?」

「あ!」


 カンナさんを抱き寄せ部屋の入り口にいるみんなの元まで後退し、様子を窺っているとやっと状況を理解したのか、幹部連中が騒ぎだした。


 光っていた本は俺が奪ったからか、輝きを失っている。


「な、何者だ!!」


 本を持っていた男が俺たちに向かって、叫んでいるが。


「アルマ、怪しそうな本を奪ったけど、魔法陣が消えない。触媒はどれかわかるか?」


「え……えーと」


 無視をして、まずは魔法陣を消すのを優先する。


 他に怪しそうなのは、床に置かれている大小さまざまな石のようなものだろうか。配置がバラバラではあるが、何か意味を持っている気がする。


 すると、幹部連中であろううちの二人が、こちらに向かって駆けだしてきた。


 そう簡単に邪魔はさせないということだろう。小柄な体型の男がメイスを持ち、逆に大柄な女性が双剣を持ってくる姿にちぐはぐな印象を感じつつ、迎撃のため身構える。


 アルマのゴーレムが女性に走っていくのを確認し、俺は本を地面に投げ捨てて男に向かって駆けだす。


「誰だか知らないが、俺たちの邪魔はああああああ!!」


 男が何かを言い終わる前にメイスを掴み、男ごと振り回してハンマー投のように放り投げた。綺麗な弧を描きながら飛んでいき、地面に激突した彼はそのまま動かなくなってしまった。


 ちょうどメイスの落下地点に石があったらしく、粉砕することに成功したおかげか魔法陣の光が弱まったように感じる。


 もう一方の様子を確認するとゴーレムにヘッドロックをされ、宙に浮いている女の姿が……。


 よ、容赦無いな。


 その様子を見ていたのだろう、さっき本を奪った男がパチパチと拍手をしていた。


「いや、まさか近接戦闘特化の二人をこうも容易く無力化するとは恐れ入る。どこのどなたかは存じませんが、私たちの研究を邪魔しないでいただきたいのだが?」


 その男は黒く大きい眼帯をしており、リカさんの言っていたリーダーらしき人物だろう。

 

 さっきのカツラで注意を引かれてしまったため、今気づいた。そのカツラを被っていた人物は、いつの間に回収したのかはわからないが、また不自然な髪型になっている。


 見る感じ若いのに、あんな反射ができるくらいになっていたことを考えると、きっと想像を超える苦労があったんだろう。


 少し同情してしまった。


「ソウイチ、部屋中に散らばってる石から魔力の流れを感じるわ。きっと、触媒はあれよ。さっきので一個壊れてから、流れが不安定になってる」


 アルミラの言葉を聞き、真面目に考える。


 これ、無理矢理壊したら爆発、または魔力が一気に放出されて危険なことになったりしないだろうな。

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