瑠璃色の少女 2
零は瑠璃色の髪の少女と共に石畳の街道を歩いていた。
零が綺麗な土下座を決めた後、瑠璃色の少女は迷うことなく零の頼みを承諾したのだった。
「でも、いきなり土下座されてびっくりしました」
「いや、まあ、切羽詰まっていたというかなんというか……」
微笑みかけてくる少女に、首に手を添えながらモゴモゴと口ごもるように答える零。
「でも、助かったぜ。サーシャに断られてたら次に人に会えたのはいつになるか分からなかったからな」
零は感謝を述べると共に瑠璃色の少女――サーシャ・ルリウスに視線を向ける。
「そんな、お礼なんて結構ですよ。困っている人がいたら助けるべきですし」
サーシャは言葉と同時に首を横に振ると、零の視線に気づいたのか、零よりも頭一つ分ほど低い位置から見上げるようにして零の目を見据え、ニッコリと微笑む。
「そう、だな」
零は向けられた笑顔から目を逸らす。気恥ずかしいわけでも後ろめたい何かがあるわけでもなかったが、彼はサーシャの顔を真っ直ぐ見ることができなかった。
「ところで、これから行く街はどんな所なんだ?」
先ほどよりもトーンの落ちた声で零がサーシャに尋ねる。
「今から行くのはニベルサスという街です。コバルティオ国内で王都アズーリアに次ぐ規模の街なんですよ」
零の声音の変化に気づかなかったのか、あるいはそのふりなのか、サーシャは特に変わることなく零に答える。明るい声音はどこか自慢気だ。
「気づいたらあの草原にいたなら、レイさんは異世界人――エトランゼなのでしょう」
異世界人――つまり、自分は元いた世界とは違う世界に今いることを示す言葉を聞いても、零の心に浮かび上がる感情はこれといってなかった。今まさに零自身を照らす落ちかけの太陽が、いずれそう遠くない内に沈みきるかのような、そんな起こるべくして起こることのように零は感じたのだ。
「色々と手続きもありますし、ニベルサスに着いたらまずは役所に行きましょう。私が案内しますね」
「何から何までありがとうな」
サーシャに感謝の言葉を返しながら、零は暗くなる空の下でこれからの生活に思いを馳せ、僅かに口角を上げるのだった。