助けの陽
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しばらくすると林英が再び目を覚ました。
もう一度自分の左腕を見るとやはりそこにあるはずの腕はなくなっていた。
絶望と憤怒がこみ上げ尽きてまた倒れそうになったとき教本のことを思い出して懐を探ってみた。
そこにはあるはずの教本はなかった。
その教本は林英の師匠楊半が書いた全二冊の秘伝の武術書だったのである。
師匠が書いた大事な武術書をなくしてしまい自害すら考えたが子供のことを考えると少しながら息を吹き返した。
そして目をつぶり呼吸を整え気を体内にめぐらしていった。
しばらくして目を開けると目の前に一人の少年がいた。
少年は八歳ぐらいでボロボロの格好をしている。
ナゼこんな荒山に子供がいるのか疑問に思ったがその少年は自分の子供と変わらないぐらいの歳だと言うのに一人でこんなところにいるのが哀れに思い声をかけてみた。
「こんなところでどうしたの?」
「おばさんこそどうしたの?」
質問を質問で返されたが林英は気にもせず
「悪いやつにやられてしまったの
どこか休める場所知ってる?」
「それだったら僕が住んでるとこに来るといいよ。」
林英は少年の言葉を半信半疑で聞いていたが少年の進めも断れず、警戒心を強めて少年の住処へ向かった。
向かっている途中林英は少年のことをあれこれ聞いた。
少年の名前は張法、母親は物心ついたころにはすでにいなかった、父親と共にこの荒山にきたがその父親も突然いなくなってしまったという。
林英はこの孤児の張法が哀れに思えて仕方がない、強めていた警戒心も少しづつ解けていった。
林英は張法の後について行き洞窟に着いた
「ここが僕の住処だよ
ここで休むといいよ。」
林英は弱まっていった警戒心を再び強め張法とともに中に入っていった。
謎の男にやられて、以前より警戒心が強くなっているのだ。
しかしその警戒心も徒労に終わった、中は布団代わりに使っているのか草が一角に集められているほか、カバンしかない。
林英はそのカバンに注目した。
それはなんと自分のものにそっくりではないか。
「このカバンはどうしたの?」
「さっき散歩中に見つけたんだ。」
男とやり合ううちに邪魔になり捨ててきたものがはからずも自分の前にある、思わず林英はカバンを手に取った。
「それは僕が見つけたものだぞ。」
「これは私がさっき落としたものかもしれないの中身を確認させて。」
「それなら仕方がないよ
でもおばさんのじゃなっかたら僕がもらうよ。」
林英は張法に微笑みながらうなずき中身を確認した。
やはりそれは林英のものだった。
「やっぱりこれは私のみたい、拾ってくれてありがとう何かお礼をさせて?」
「いらないよそれはおばさんのなんだから。」
(なかなかできた少年だ)
と思いながらカバンの中にあった花火を打ち上げた。
あの男がまだ近くにいたら危険ではあるが、早く仲間と合流したかったのだ。
張法は花火を見てキャッキャ騒いでるが林英が「すこし座らせて」と言うと張法は黙って外に出て行った。
(不思議な少年だが気骨がある。)
そんなことを考えながら腰を下ろしあの男のことを考え始めた。
(あいつは海明派を名乗っていたがあの悪辣さは十中八九、海明派ではない。)
いくら考えても正体がわからず仕方なく洞窟の外に出て散歩し始めた。
(あの少年はどこに行ったのだろう)
考えてると遠くの方から一人の男が二人の子供を抱えながら近寄ってきた。