魔王の初恋
何百年前の事だろうか。
私は人間に恋をした。
赤い空、黒い大地、焦げた匂いと鉄の匂いが絡み合う世界。
燃え盛る炎を眺めながら、一人の少女が立っていた。
後ろに束ねた長い髪、大きな瞳、小さな鼻。
何が気に入ったのだろうか。
特別に可愛くも美人でもないのに。
私は彼女の手を引いて魔王城に連れ帰った。
私は、彼女の為に色々な物を用意した。
可愛い服、おいしい食事、綺麗な庭園。
服を着て彼女が笑わなければ、裁縫師を灰にした。
食事して彼女が笑わなければ、料理人を灰にした。
庭園を見て彼女が笑わなければ、庭師を灰にした。
その度に、町や村を襲い続けた。
暫くすると彼女が笑うようになった。
私は嬉しくて、沢山の町や村を襲い、多くの物を彼女に与えた。
彼女が話しかけてくれるようになった。
私は、彼女との話に夢中になった。
町や村を襲う頻度が日に日に少なくなっていった。
ある日、彼女が私の誕生日を祝ってくれると言ってくれた。
私は嬉しかった。誰にもお祝いをされた事がなかったのだから。
彼女は料理を作ってくれた。とても美味しかった。
彼女はプレゼントをくれた。中には短剣が入っていた。
彼女は言った、
「私の父は貴方に刺され、私の母は貴方に燃やされました。」
「私から貴方へのプレゼントは愛する者を失う悲しみです。」
彼女は、短剣で自らの命を絶った。
私は、愛する者を失う悲しさを知った。
ごめんね。君につらい思いをさせていたんだね。
もう同じ過ちはしないよ。
全ての人間を殺しつくして、愛する者を失う悲しみを無くしてあげるからね。
数日後、地上から人間が居なくなった。