足元の。
「なんか最近、手慣れてきたって感じするっすね」
「何が?」
イヌの言葉に、ネコは首を傾げた。
「化け物退治っすよ」
「あぁ」
「まぁ、能力にも大分慣れたし、ジャージも地味に改良されてるしね」
そう。
ダサい見た目が難点の三人のジャージは、地味に、ごく地味に改良がなされていた。
それは衝撃緩和の程度であったり、能力の出力調整を容易にするための工夫であったり、より動きやすいような足元の窄まり具合であったりした。
地味だ。
非常に。
けれど事実、それで化け物が倒しやすくなっている。クラウドにも褒めるべきところがあったようだ。
「これだけ改良されてるのに、なんで変身は服が破れて」
「怪我は治るのに汚れは落ちなくて」
「見た目がこんなにダサいんでしょう」
全てが全て、痒いところに手がとどくわけではないようだが。
「じゃ、靴も新調されたみたいだし、お仕事しましょうかね」
今回変身をしてみると、靴が変わったていた。
今までのものとは違い、バスケシューズのような、靴紐を結ぶタイプのものだ。
どれだけ性能が上がっているのか、三人は内心期待を高める。
「しっかし、あれはなんの化け物だ」
「…一反木綿。なんて古風な…」
ネコが苦笑する。
「昔アニメ見たなぁ」
「俺知らないっす」
某アニメを思い出し、一瞬の懐かしさに浸ったウサギは、イヌの言葉に自らの歳を考えさせられる。
「行くか」
「はい」
「はいっす」
さぁ、気を取り直して、戦闘開始。
「火車!」
ネコの先制攻撃は、ひらひらと舞う一反木綿に交わされる。
「重力も…あいつ浮力でもあんのか」
「あぁ、空気抵抗強そうな身体してますねぇ」
ウサギの能力で抑えつけようにも、こうかは今ひとつといったところだ。
「俺いきます」
「頼んだ!」
「任せた」
年上2人に任せられたイヌは、気合も十分に大地を踏みしめた。
途端。
「あべし!」
「え」
盛大に、地面に倒れ伏した。
否。
転んだ。
「ちょっと、大丈夫!?」
予想だにしなかった事態に、ネコが駆け寄る。
「だ、大丈夫っす」
「何が…」
あったのか、と続くはずだった言葉は、足元へやった視線によって止められた。
「クラウド……」
「あー」
遠くで見ていたウサギも、原因を見て空を仰ぐ。
「く、」
イヌが赤面しながら言葉を吐いた。
「靴紐がほどけた……だけっす…」
イヌの足元。ほどけた靴紐。
こんなにお粗末なヒーローがあっていいものだろうか。否。
「……クラウド!リコール!」
一反木綿が舞う青い空、繊細な少年の心を代弁して、ネコが叫んだ。




