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能力の有効活用

「あれ」


 ネコは台所で夕食を作っていた。

 食材を切り、あとは炒めるだけの段になって、コンロに火がつかないことに気づいた。


「……」


 一瞬考えるそぶりを見せると、コンロに手をかざす。

 ふっ、と火がともる。


「便利よねー」


 独り言を言って、料理を再開した。





 イヌは風呂に入ろうとしていた。


「あっつ!」


 設定温度を間違えたのか、風呂の温度が少々暑すぎる。

 うーん、と一つ唸る。

 熱いお湯に手をかざす。


「……冷めろー」


 小さく呟いて、適温になった風呂に心置きなく浸かったのだった。





「なんか最近、変身しなくてもちょっとだけ力使えるんですよね」

「あ、俺もっす」


 化け物を倒してから、三人はそんな話で盛り上がっていた。


「へぇ。それは知らなかったな」


 やってみたことのないウサギは聞き役だ。


「おかげで料理できたし」

「風呂に入れたし」

「あ、お風呂沸かすのいいかも!光熱費うくなぁ」

「アイス溶けないのも地味にポイント高いんすよ」


 本当に、地味だ。

 地味なことにしかその能力を活かしていない。

 話を聞いていたウサギは一つ苦笑した。


「クラウドが嘆きそうだな」


 天界ではクラウドがさぞ悲しんでいるだろう。ヒーローの力で行うことが、まさか家事であるとは思いたくないはずだ。

 そこでふと、自分の能力に思い至った。


「……」


 地を操る能力。重力を操る能力。それがウサギに授けられた力。だが。


「家事に応用できない気がする……!」


 そう考えると、なんだか一人だけ損した気分になった。


「そんなことないと思いますよー」

「日常生活に使うチャンスがありますよ」

「たとえば?」

「……高く飛ぶ?」

「ダメだろ」


 年長者は一人、溜息をついたのだった。




おまけ。


「あー、それ俺が持っていくよ」


 いかにも重そうな段ボールを持とうとしている同僚に声をかける。女性には幾分か重たすぎるものだろう。


「え、でも……」

「大丈夫大丈夫」


 そう言ってひょい、と段ボールを持ち上げた。

 能力を使って、この段ボールの重さを軽くしてある。段ボールにかかる重力を調整したのだ。


「えー、力持ちだったんですね!」

「いや、そんなことはないけどねー」


……確かに、これは便利だゾ。




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