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ここにいたのか

最後の一人?です

「ってことで、水族館の券をもらったんだが、行くか?」


 ウサギがそんなことを言い始めたのは、敵を倒し一服しているときのことだった。


「何が『ってことで』かは知りませんが、他に誘う人居ないんですか?」

「俺の友達は広い海の中だ」

「は?」


 訳が分からず、ネコとイヌは首を傾げた。

 要はネットの世界、と言うことだろう。


「ルシファとか、同僚とかは」

「ルシファは日曜日はパンのお守らしくてな。同僚は彼女とデートだ」

「ウサギさんは独り身か―」


 からかうようにイヌが言った。そういう彼も彼女はいない。


「ほっとけ」

「まぁ、暇ですし」

「良いっすよ」


レッツゴー、水族館



「へぇ、広いっすね」

「ネコ、魚に飛び付くなよ」

「変身してないから大丈夫よ。――わぁっ」


 巨大なアクアリウムに、ネコが感嘆の声を上げた。

 名も知らない魚が、頭上を泳いでいる。

 光を受け泳ぐさまは、いっそ神秘的ともいえるだろう。


「あ、これなら知ってる!ナポレオンフィッシュ!」

「変な顔っすね」

「あ、サメ!」

「腹に魚くっつけてるっすね」

「エイだー」

「変な顔ーって、顔どこ!?」


 子どものように興奮するネコに、一々言葉を返すイヌ。

 二人の様子を見て、イヌが呟いた。


「……彼氏彼女のデートってより、姉弟って感じだな」


 それなら自分は何だ。

 長男か……父親か…?

 嫌な結論に達してしまいそうになった時だ。


 「あれは…?」


 不意に、ネコのトーンが下がった。


「どうしたんスか…あー」


 同じものを見たのだろう、イヌは苦笑を洩らす。


「どうした?」


 ウサギが二人に尋ねると、イヌが無言で水槽の中を指す。

 

「おかーさん、あの魚、足が生えてるよー」

「そんなわけないでしょう。見間違いよ」

「えー、ホントに生えてたって」


 遠くで親子の会話が聞こえた。

 巨大な水槽の中、優雅に泳ぐ一尾。

 遠目だが、その魚に、あってはならない二本の人の足が生えているのが見えた。


「見間違い、じゃないわよね」

「…たぶん」

「13……」



ここにいたのか。



「13だけ誰の前にも現れなかったものね」

「だからって、ここかよ」

「まぁ、予想の範囲内なんじゃないか…」

「……サメに食べられないのかしら」

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