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ヒーロー候補?

「俺、ヒーローになりたいんです!」


 三人の前に現れた男は、突然そう叫んで頭を下げた。


「……はぁ」


 突然のことに、それしか言葉が出てこない。


「魔法使ったりして化け物ブッ飛ばして、超カッコいいし!」

「はぁ」

「世界を守るヒーローって、すっげーいいと思うんです」

「はぁ」


 とりあえずこの男の語彙が残念な域にあることは理解できた三人だった。


「お勧めはしないけど。…クラウドに聞いてみないとね」


 自分たちには、誰かをヒーローにする力はない。


「喜びますかね、クラウド。やる気のあるヒーロー候補」

「どうだろうな」


 ウサギは冷めた目で、目の前の男を見つめていた。




「んー…やめたほうがいいと思うよ」

「あら、意外ね。喜ぶかと思ったんだけど」


 意外というネコも、クラウドの言葉に驚いた様子はない。


「私を見境のない者と勘違いしていないか?」

「違うの?」

「私とていろいろと考えている。君たちをリストアップしたのも、考えあってのことだ」

「……どうだか」


 イヌの呟きに、ほかの二人もうなずく。

 考えてリストアップされたというなら、なぜこの三人になったのか。

 あいうえお順の名簿から連続した三人を選んだからこそ、同姓同名なんてふざけたことになったのではなかったのか。


「とにかく、君をヒーローにはできないよ」

「何でですか!?そりゃ、運動は少し苦手かもしれないけど」

「そういう問題ではない」


 そもそも変身した時点で超常的な身体能力が付加されるようになっている。


「ではなぜ!?」

「気質、というのかな。向いてないんだよ、君には」


 クラウドの言葉に、納得できない、と男が食い下がること十五分。

 一度戦闘を見学するということで話がまとまった。

続きます。

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