武器を作ろう!2
「ってことで、武器を作るぞ」
クラウドは椅子にふんぞり返って高らかに宣言した。
「……良く言えるよね、そんな恰好で」
「大変に不本意である」
サリエリの呆れた声に、クラウドが顔をしかめて答えた。
クラウドは椅子に縛りつけられていた。
リアル・ボンレスハム状態だ。
つい先ほど懲罰会議にかけられたクラウドに下された判決が、コレだった。
一週間の室内拘束。および、力の使用禁止。
逃亡を防ぐため、椅子に縛り付けてあるのだ。力を封じる意味合いもある。
「…ただの嫌がらせだろうけどね」
「何か言ったか?」
サリエリの呟きは、幸いクラウドには届かなかったようだ。
クラウドに対する神世界の風当たりは、本人が思っている以上に冷たいものだ。力は申し分ないものの、初代創世神は健在で、クラウドなどその存在は霞のようなものだ。本人の容姿や、下界のサブカルチャーにどっぷり傾倒していることも少なからず影響し、疎んじる者も多い。
「で、武器を作るにしても、君がそんなんでどうするの?」
ウサギの月刃は、クラウドが創造の能力で作り上げたものだ。
だがしかし、今はその能力を封じられている。
「私に抜かりはない」
「いや、今までありまくり…」
抜かりがあったからこそのダメンジャーである。
「強力な助っ人を用意している!」
サリエリの言葉は聞かぬふりで、クラウドが叫ぶ。
「天目一箇神の善之助だ!」
「……よろしく頼む」
音も無く傍に立った善之助戸やらにサリエリは内心驚く。
それなりの神格がある神なのだろう。
だが。
「あまのまひとつのかみ?」
聞きなれない名前に、サリエリが名前を反芻する。
男が一つ頷いた。
顔立ちが、下界のジャージ共に似ている。
「日本の鍛冶の神だ。つまり、武器作りのスペシャリスト!」
「鍛冶神って何人かいるよね。僕が知らないってことは、今代の鍛冶神の覇権争いにやぶれた感じ?」
「………」
神にも派閥や覇権の争いはある。火の神、財の神、商業の神、狩猟の神。そうした神々は数も多く、何百年かに一度、代表の神を決める決まりになっているのだ。
「サリエリィイィィィ!鬼畜にもほどがあるだろう!何なの、天然でドSなの!?善之助が落ち込んでいるではないか!」
二人に背を向けて、天目一箇神の善之助は床にのの字を書き始めた。
「うわ、ベタ!」
「いや、謝ってあげて。すごく可哀想だから」
珍しくクラウドがまともな事を言う。
「ま、君の友達だもんね。有名所なんて、僕以外夢のまた夢…」
「サリエリィイィィ!」
クラウドの叫び声が響く中、武器づくりは始まったのだった。




