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マタタビ事件・後日談

「この前は、よくもやってくれたわね!」


 時計台の上に立つサタンを睨みつけるネコ。


「ふ、弱点を突くのは悪の常套手段だろう!」


 見下ろすサタンが笑う。


「……」


 ふいに、三人の前にルシファが降り立つ。


「ルシファ?」


 いぶかしんだサタンが名を呼ぶも、ルシファは黙って三人を、否、ネコを見つめていた。

 一歩、ネコに近づく。

 距離が縮まった分、ネコは後ずさる。

 彼は、警戒すべき敵だ。無口な分、何を考えているのかわからないというのもある。

 さらに、一歩。


「……」


 ネコが距離を開けようと後ろに足を引いたところで、ルシファが手を差し出した。

 一瞬身構えたが、攻撃ではないらしい。


「あの…?」

「……」


 無言のまま、ルシファは手を開いた。


「………」


 新手の嫌がらせだろうか。

 開かれた手には、丸まると太ったネズミの死体。


「……」


 ずい、と手を突き出される。


「プレゼント」


 ルシファは確かに、そう言った。

 顔に表情はなく、声も抑揚のないものではあったが、そこに悪意や害意は感じられない。

 おそらく彼は純粋に、喜ばれるものだと思っているのだろう。


「……あー…」


 ネコが言葉を探すように視線をさまよわせる。

 悪意も害意も、下心もないルシファには、普段サタンやエンヴィに言うようなきつい言葉はかけづらい。


「ありがたいんだけど…私基本的に人間だし、ネズミは…ちょっと……」


 出来る限りオブラートに包んで断りを入れる。


「……ネズミは、嫌?」

「うん、まぁ…」


ルシファは苦笑するネコを見つめて、ひとつ頷いた。


「…じゃあ」

「!!」


 ルシファは、いつの間にか手元に連れて来ていた13を差し出した。

 途端、目を輝かせるネコ。


「にゃんっ!」


 思わず飛びついたその光景に、蚊帳の外に置かれていた他の面々が騒ぎ出す。


「13!!」


 純粋に仲間を案じるサタンの叫び声。


「なんだ、あれ」

「この前お世話になりましたってことじゃないっすか」

「律儀なんだな」


 横で行われる阿鼻叫喚の光景に顔を引きつらせるウサギとイヌ。


「やっぱり、殺しておくべきか」

「どっちを?」


 仲良さげな二人に、エンヴィが一歩前に出る。楽しそうに、パンが笑った。


「……こういうのを、きっと」


 空気に等しい貧乏神がつぶやいた。


「カオスというんじゃろうなぁ」


その言葉に、やはり空気のような存在のベルゼバブが深くうなずいた。

敵って誰がいたっけ、と思う今日この頃。

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