ねこじゃらし
道端に揺れる、ソレ。
ウサギはは足を止め、じっと考え込んだ。
「あ、ウサギさん。早いですね」
「イヌか」
イヌが現場に駆け付けると、既にウサギが立っていた。
敵は彼一人で倒してしまったらしい。彼もまた、ウサギとしての能力と、与えられた地の力や武器を使いこなせるようになっていた。
「なんすか、ソレ」
ウサギの手に持った物を見て、イヌが尋ねた。
「ネコジャラシだ」
揺らして見せるそれは、確かにねこじゃらしだ。そんなもの、イヌも知っている。イヌはそんなことを聞きたいわけではなかった。
「……ネコさんにですか」
「あぁ」
「怒るんじゃないすか」
毛を逆立てて姿が容易に想像できる。
年上には割と礼儀正しいネコだ。イヌならばともかく、ウサギに鉄拳制裁はしないだろうが……。
「でも見てみたくないか」
「………」
それぞれの動物の力と同時に、特性をも受け継いでいることは、イヌたち自身、身をもって知っている。
ならば、猫じゃらしに対して、ネコはどう反応するのだろうか。
想像は、できる。
「遅くなりましたっ」
ネコが駆けてくる。
ウサギとイヌは頷き合う。
「ほら」
ウサギが手に持っていたネコジャラシをネコの前に差し出す。
「…まさか、私が喜ぶとでも?」
地を這う声。
イヌは顔を青くした。条件反射だ。
ウサギは気にせず、ネコジャラシを左右に振る。
「ほら」
「……」
「ほーら」
「……」
ピクリ、とネコの指が動く。
「ほらほらー」
「にゃんっ」
目の前で揺られるネコジャラシに、とうとうネコは飛び付いた。
「ほらほら」
「にゃっ」
左に揺らせばネコも左へ。
「ほーらほら」
「ぬにゃんっ」
上下に揺らせばネコも上下に。
フードについたネコの耳が、気のせいか嬉しそうに動いているように見える。
「ほーら」
「にゃー…って、」
は、と我に帰るネコ。
目の前の二人を見て、手元の猫じゃらしを見て、それからしゃがみこむ。
「……だれか、埋めて………」
穴があったら入りたい、とそのまま動かなくなったネコを、どうにか宥めたのは、それから三十分後のことだった。
ていうか、戦いなよ、君たち。とそろそろ思えてきました。




