大丈夫か、日本!
そしてネコに疑惑が…
三人はいまだに正座のまま、男からの質問に答えていた。
どうやら別件で大量にやくざが検挙されたらしく、取調室が開かないらしい。
「ちょっと」
狭い室内に、部下らしき若い女が入ってきた。
そのまま男を連れて部屋を出る。
なんだ。と三人は顔を見合わせる。
しばらくすると、男がしかめ面で戻ってきた。
「お前ら、帰って良いぞ」
「え?」
男の言葉を、聞き返す。
「上からのお達しでな。身柄を即刻解放しろって」
言いながら、男の眉間に深い皺が刻まれていく。
「うわぁ、汚い大人の世界」
小馬鹿にした調子でそうのたまうのはネコ。
男の眉間にまた一つ、皺がよる。
「るっせ。おまえら、これからあんま物壊すなよ」
「気をつけまーす」
「まーす」
軽い調子の返事に、男のこめかみがひくりと動いた。
三人が出口へと向かう準備をしている横で、部下が男に話しかける。
「でも、良かったんですか?」
「あ?」
「あの三人、確実に…」
器物損壊等々の犯人だ。
そんなことは、男も重々承知だった。
「あぁ…長官殿のご命令だからな」
「はっ?」
思わぬ大物の肩書に、部下が目を丸くする。
なぜそこで長官が出てくるというのか。三人の中に強力なコネクションを者でもいたというのか。
「……『リアル戦隊物バンザーイ!ネコちゃんってかわいいよねぇ』だと」
「………はぁ」
だから、解放したというのか。
あまりにもくだらない理由に、げんなりする。
警察の権力者は、どうやらサブカルチャーにどっぷり浸かっているらしかった。
日本の行く末を憂いたのは、何もこの二人だけではないだろう。
おまけ。
やたらと騒がしい廊下に、ネコたち三人は目を向けた。
「そういえばヤクザがどうって言ってましたね」
一見してその筋とわかる者も何人かいた。
イヌの声に反応したのか、数人が振り返る。
そのうちの誰かが口を開いた。
何か文句でも言われるのだろうか、とイヌが構える。
しかし。
「お嬢!」
男の口から出たのは誰かを呼ぶ声。そしてその先には…。
「あ、斉藤さん」
ヤッホーと親しげに手を振る、ネコの姿があった。
「……ネコさん?」
「まさか」
そっちの人と繋がりのあるお方で!?




