捕まりました。
倉庫を爆発させて、数日後のことだった。
任意同行、という名目で、彼らはあっさり警察に連れてこられていた。
「で、だ」
三人は固いノリウムの床に、仲良く正座していた。
「お前たちがジャージの三人組で間違いないな」
いかめしい顔をした中年の男が、三人をねめつける。
間違いないも何も、三人はこの男の前で、通常ではありえない身体能力を発揮し、化け物を倒し、ついでに建物も壊した。
現在着用中の耳フード付きのジャージ姿で、だ。
化け物を倒し終わった彼らを、そのまま警察署に連れてきていたのだった。
「……」
「まぁ、とりあえず今回ぶっ壊した分については現行犯だからな。とりあえず一人ずつ取り調べして、留置所だな」
黙ったままの三人を前に、男が軽く脅しをかける。
「……あ、オレ、未成年っす」
「あ、ずるい」
男の言葉に、イヌが手を挙げた。
横目でじとりと視線を送るのはネコだ。
「とりあえず、そのジャージ脱げ」
なんだか見ている男のほうも、気が抜けてしまいそうなダサいジャージだ。とっとと普通の格好になってほしかった。
「え!?」
男の発した言葉に、三人が勢いよく顔を上げる。
「変身なら解け」
更に続けられた男の言葉に、三人は同時に口を開いた。
「変態!」
「セクハラ!」
「スケベ!」
急に元気になった三人に、男は戸惑う。
「な、なんでだよ」
男の疑問に答えたのは、ネコだ。
「あんた、私たちに裸になれっていうの!?」
ネコが自身を抱きしめて叫ぶ。その目は変質者を見る目と大差ない。
「は?いや、変身解けって言っただけだろ」
焦る男に、ウサギとイヌが説明する。
「あー、刑事さんな。この変身といたら、俺たち素っ裸」
「は?」
これには傍で聞いていた同僚も首を右に傾げる。
「俺たち、全部脱がないと変身出来ねーんだよ」
「え?」
今度は左に。誰の頭にも、クエスチョンマークが浮かんでいた。
「いや、出来るんだけど…」
「変身する時に着てた服破れちまうんだよ」
「だから、変身する時はトイレとか更衣室で一旦全部脱いでから変身するんだ」
だから、変身を解けば…
なるほど、と納得する。
けれど一連の行動を想像してみれば、なんとシュールな話だろう。
化け物の被害を最小にするために必要なのは、武器でも訓練された人でもない。彼らが着替えできるトイレや個室の存在なのだ。
「普通、そこら辺はもっと上手くいくんじゃねーの?●●戦隊とか、魔法少女とか…」
あまりのお粗末さに、男が戸惑う。
「そうならないのが、クラウドクオリティ…」
呟いたのはイヌだ。
ネコもウサギも苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「っていうか」
男が三人を憐れみのこもった目で見る。
「不便だな」
「まーね」
変身、というロマンはいずこに…。
「じゃあ、まぁジャージは良いとして、お前らの組織?の名前は?」
男の言葉に、三人は顔を見合わせた。
「知ってる?」
「知らないっす」
「何にも言ってなかったぞ」
と言うより、三人はクラウドの話しをろくに聞いたためしが無い。
「なんだろ…ジャージィ戦隊?」
ネコが言う。
「なんだそのミルクっぽい名前は」
ウサギが突っ込む。
「寄せ集め隊」
「まんまね」
「クラウドの夢を叶え隊」
「むしろ潰しているがな」
そんな三人の様子を見ていた男は、呆れたように溜息をついた。
「お前ら、駄目駄目だな。ダメンズヒーローだな」
正確には、メンズだけではない。
「なんか、似たようなドラマのタイトルが…」
ぼそりとイヌが呟いた。
「……じゃあ」
男があごに手をやり、考える素振りを見せる。
「ダメンジャーだな」
とりあえず、調書にそう記載しておくから。
こうしてジャージー戦隊ダメンジャーというチーム名が生まれました。




