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やっちまったぜ☆

「せいっ!」


イヌの拳が敵の頬にめり込んだ。

暗い倉庫の中、置かれていた荷を巻きこんで、敵が吹っ飛ぶ。


「げほっ…埃っぽ…」

「粉物でもひっくりかえしちゃったんですかね」


荷の中に粉末状のものでもあったのだろう。


「まぁ、食品工場の倉庫みたいだから、体に悪いってことはないでしょうよ」

「倉庫の管理者はご愁傷様だがな」


 身にかかった粉を払いながら、ネコとウサギが言う。

 今日は三人そろっての出動となった。


「今ので倒したっぽいっす」


 敵が塵となって消えたことを確認したイヌが、ネコとウサギのもとへ帰ってきた。


「地味な倒し方だな」

「必殺技なんて、俺たちありませんよ」

「あー、確かに」


 それぞれ炎や氷、地の力を操ることができるが、特別と言える技は特に持っていなかった。

 それぞれ能力をイメージするための言葉くらいしか、「それっぽい」物はない。天界ではクラウドが嘆いているだろう。


「じゃあ、帰りましょうか」


 ネコの言葉に二人も頷き、倉庫の外へ出た。


「あ、扉」


 そう言ってイヌが振り返る。

 豪快に開かれた扉は、少々不用心に過ぎるだろう。


「ん、あれ?」


 ガタガタと動かすも、なかなか閉まらない。

 先の戦闘で、敵が蹴破るように開けた扉だ。一見するとわからないが、歪んでしまっているのかもしれない。


「よ…っと」

 

 ガコン、と音がして扉が閉まる。

 と同時に、暗闇の中、扉近くに、赤く爆ぜるものが見えた。


 瞬間、響き渡る轟音。

 街灯の明かりさえ遠い、暗い夜空に、橙の火柱が上がった。


「……ど、どういうことっすか!?」


 突然の出来事に、事態を飲み込めず動揺するイヌ。


「…埃っぽかったし、最後扉がこすれたときに、火花っぽいもの見たもんねぇ…」

「粉塵爆発……って、やつか」


 しまったなぁ、と首を振って、ネコもウサギも目の前の橙を眺める。

 三人のジャージは、耐火仕様。

 だがしかし、無傷とはいえ、頬を撫でる熱風を感じないわけではない。

 三人は無言で顔を見合わせる。


「……………」


 少々のボヤであれば、イヌが消火できただろう。けれど、この炎は少々大きすぎた。そのことは三人ともがわかっている。

遠くで、消防車のサイレンが聞こえてきた。


「逃げましょっか」

「……」

「……」


 誰かの呟きを号令に、三人は暗闇に姿を消した。




「諸君!一連の建物および、道路の損壊について、今月に入り、既に十七件の被害が確認されている!」


 男がホワイトボードを背にして叫ぶ。

 男の目の前には、20人程が座って、真剣に話を聞いている。


「その元凶として、突如現れた未確認生命体があげられている!しかし、この未確認生命体については…あー、マスコミでも報道されているように、ジャージを着た3人組が出現のたびに撃破している!なお、ジャージ組の正体は不明!」


 ホワイトボードには、ピントのずれた三枚の写真。

かろうじてわかるのは、それぞれあずき、茶、白のジャージを着ていることくらいだ。非常に色目が悪い。


「建物、道路の損壊につき、未確認生命体が元凶であることは間違いない。しかし!」


男は机をたたく。


「今月の損壊のみに言及しても、未確認生命体が直接、間接的に破壊した件は六件。残りは十一件はこの三人組によるものである!」


 室内に広がるざわめき。


「状況が特殊な例ではあるが、我々はこの三人を一連の損壊事件の重要参考人として捜査を行うことを決定した!」


 男がひときわ大きく息を吸った。


「三人組の正体を突き止め、ここに連れてこい!」


 男の頭上には、桜の花の紋章。


「警察官の名誉にかけて!」


正義のヒーローも、結構街を破壊しますよね…

続き……ます。たぶん。

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