お巡りさん、変態です
……ごめんなさい。恋愛…ですかね?
それは、突然の事だった。
「ふははははっ!その首、もらいに来た!」
「出たな、似非悪魔!」
「本物だ!」
既に週一回以上のペースで顔を合わせている、お馴染みの光景がそこにあった。
七人の敵と毎度のように対峙する三人。
最近は口による言い合いが増えてきた。
周囲に被害が無いのは良いことだが、面倒くさい限りだというのがヒーロー側の三人の意見である。
「――ちょっと良いかな」
主にサタンと、弁の立つネコとの言い合いに、いつも隣で静観しているだけのエンヴィが珍しく口を開いた。
もたれていた木から離れ、三人の――ネコの前に立つ。
一歩、後ずさるネコ。
サタンとは違い、エンヴィとはほとんど言葉も交わさず、何もかもが未知数だ。サタンのような、ただのバ…穏健派とも限らない。警戒に警戒を重ねたところで、過ぎることは無い。
離れた距離を素早く詰めて、エンヴィはネコの右手を両手で包んだ。
蛇の鱗に覆われた掌は冷たい。
「――、子猫さん」
冷たい掌とは逆に、熱のこもった甘やかな声音。
常に表情のなかった顔は、柔らかな笑みが浮かんでいる。
そして投下される、爆弾。
「愛してる」
それは、ストレートな愛の告白。
「……は?」
声を出したのはイヌだった。
他の誰もが茫然とし、開いた口を塞げずにいる。全員の視線が二人に注がれる。
言われたネコも、目を見開き動けずにいた。
「陶磁器のような白く滑らかな肌、華奢な体つき、その剣呑な光を帯びる目も、辛辣な言葉を吐く唇も、不機嫌そうな眉間の皺も、すべてが愛しい」
「……褒めてる?」
途中から悪口のようにも聞こえる言葉の数々に、眉間の皺を深くして、ネコが尋ねる。
しかしその言葉は、エンヴィの耳には届かない。
「あぁ、君を監き(自粛)して、手じょ(自粛)でその顔が歪む(以下自粛)」
「……」
「君を(以下放送禁止用語乱舞)」
「……っ」
エンヴィが言葉を紡ぐたびにおぞましさに鳥肌が立つ。
「だから(以下略)」
「……っ、それ以上しゃべるなこの変態!」
これ以上は聞いていられない、と抜けない手をそのままに、叫ぶ。
「清姫っ!」
感情のままに吐かれた炎は、寸分違わずエンヴィの顔を直撃する。
「あっつ!子猫さん、愛が熱いよっ」
「うるさいっ!」
それでもへらへらと笑って、なんのダメージも受けないエンヴィに、別の意味でも鳥肌が立つ。
握りしめられた手は、依然抜けないままだった。
「かわいそうに…」
敵であるはずのパンが小さく呟いた。
「……どっちが?」
「顔はいいのに、いろいろ残念だな」
イヌとウサギは、いまいち状況についていけずに、呆然と見ていることしかできなかった。
「ちょと、誰か!」
珍しく、助けを求めるネコの声が空に響いた。