なけなしの良心が痛みます
「最近どうしたんだ」
ホワイトボードを前に、上司が尋ねた。ここ最近ガクリと落ちた営業成績のことだ。
一介のサラリーマンであるウサギは、営業回りをしている。仕事中にも行うヒーロー稼業に、営業成績は正直に現実を突き付けてきた。
昼夜、白いジャージにウサ耳フードで平和を守っているとは言えないウサギ――宰は、苦笑を返すしかない。
「あ、お前の担当地区って化け物がよく出るとこじゃないか?」
「……あぁ」
横から口を出したのは同僚。
「そう言えば良く通行止めになったとか、営業先が半壊したとか言ってたな」
「………あぁ」
この前の通行止めはネコが道路を壊したからだ。営業先はイヌが壊した。彼らは化け物退治に慣れたようだが、周囲への被害には割と無頓着な気がある。
「迷惑だよな。そういやこの前俺のお得意さんも、倉庫が壊れたとかって…」
「…………あぁ」
…それは俺かもしれない。
心の中でそっと、思い返してみる。倉庫で化け物と戦ったのは確かだ。確か重力の操作を間違えて建物を壊してしまった…気がする。それを消し炭にして身を守ったのがネコで、燃えカスをイヌが消火していた。危うく死にかけた、とネコに睨まれたことをよく覚えている。
あれ、なんだか化け物より俺たちの方が壊してないか?いやいや、でもあいつらだっていやいやいや…
気づいてはいけない事実に気づきそうになって、考えることを放棄する。
「ま、負けずに頑張ろうぜ」
「……あぁ」
とりあえずなんて言うか、
「悪いな」
お得意様の倉庫壊して。
「そこはありがとーだろ」
同僚の笑顔が、まぶしい。
このシリーズは、需要があるのでしょうか。……でも書きますけど!